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ちしきの金曜日

アドリブ力をつける

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日々めまぐるしい変化を遂げる現代社会。僕たちは常に臨機応変な対応を求められている。上司から不意に振られる理不尽なオーダーに対しても、ウイットに富んだ返しが必要だ。

そのために必要なものは何か?

アドリブ力なのではないだろうか。

ビジネスの荒波を乗り切るため、アドリブについて考えてみた。
住正徳 住正徳(すみまさのり)
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。
> 個人サイト すみましん


ジャズのアドリブ

アドリブ、と聞いてまず頭に浮かんだのがジャズだ。ジャズについて全く詳しくはないのだが、アドリブ演奏というものがあることくらいは知っている。それは完全にアドリブなのか、それともある程度の決まりがある中でのアドリブなのか。そこが分からない。

分からない時はウィキペディアで調べれば大抵の答えが出るので検索してみた。

「ジャズの即興演奏はスタイルによって多少の違いがあるが、まったく無規則に演奏されるのではなく、原曲のコード進行、またはそこから音楽理論的に展開可能なコードに基づいて行われる。」

分かったような分からないような、でもやっぱり良く分からない。

そういう時は詳しい人に教えてもらうしかない。そこで知り合いの音楽関係者からプロのピアニストを紹介していただいた。連休の間、座間でライブをやっているのでその空き時間で良ければ教えてくれるという。

僕は早速座間に飛んだ。
座間に飛んだ
座間に飛んだ
座間に飛んだ。と書いてこの写真を載せると、さも飛行機で向かったようになるが、普通に小田急線の本厚木行きに乗って相武台前で下車した。

駅を降りて歩き始めるとすぐ、飛行機の轟音が聞こえたのでカメラを向けた。そうか、この辺りは米軍基地が近いのだ。グォオオオというエンジン音はかなりのボリュームで鳴り響いている。僕はその音を聞きながら「ジャジーだ…」と感じている。飛行機のエンジン音がジャズなのか。正解は分からないが、この日はそういうモードに突入していたのだ。小田急線の中で野球帽を被って専門誌を読むおじさんがいて、その人にもジャズを感じていた。

駅前の大通り沿いを少し歩いて右に折れると住宅街に入った。ライブが行われるイタリアンレストランがこの辺りにあるはずだ。
ライブ会場のイタリアンレストラン
ライブ会場のイタリアンレストラン
本日のライブ
本日のライブ
ライブ会場のイタリアンレストラン「ラ・リチェッタ」はすぐに見つかった。ここでプロピアニストからジャズのアドリブについて教えてもらう。

教えてくれるのは、森丘ヒロキさん。事前にチェックした森丘さんのホームページには、以下のようなプロフィールが掲載されていた。

「高校卒業後、国立音楽院に入学。ジャズピアノを今田勝、トム・ピアソン各氏に師事。
2000年浅草ジャズコンテストで金賞受賞。在学中からプロ活動を開始し、たくさんのミュージシャンとセッションを重ねる。」

本物だ。

野球帽のおじさんにジャズを感じた、などと言ったら怒られてしまうかもしれない。
ピアニストの森丘ヒロキさん
ピアニストの森丘ヒロキさん
しかし、そんな心配は無用だった。森丘さんは昔からの知り合いのように僕を受け入れてくれた。

この雰囲気だったらいける。僕は単刀直入に聞いた。

「ジャズのアドリブって何ですか?」

「キラキラ星のアドリブ」

素人の不躾な質問に対して嫌な顔一つせず、森丘さんがジャズのアドリブについて説明を始めてくれた。

「たとえばキラキラ星という歌がありますよね。あの8小節を繰り返し演奏するうちに、アドリブで色々なアレンジを加えていくんです」

キラキラ星。その歌だったら良く知っているし馴染みが深い。なぜ馴染みが深いかと言うと、我が家の炊飯器のご飯が炊けた時に鳴るメロディだからだ。電子音で素っ気ないキラキラ星だが、それは僕にとって幸せのメロディでもある。

そのキラキラ星を例にとって、実際にアドリブを弾いて聴かせてくれるという。
キラキラ星のアドリブはどうなるのか
キラキラ星のアドリブはどうなるのか
まずはノーマルなキラキラ星から。
ノーマルなキラキラ星
これが譜面通りのキラキラ星である。これに森丘さんのアドリブが加わるとどうなるのか?

弾いていただいた。
キラキラ星 アドリブバージョン
最初に弾いていただいたキラキラ星から一気に世界観が変わった。

森丘さんの炊飯器が炊いたご飯は炊き込みご飯だろうか。キノコや鶏肉がいっぱい詰まったおいしい炊き込みご飯。曲の後半ではその炊き込みご飯を囲む家族の様子まで見えてくる。

「しめじを入れて正解ね」
「舞茸もいい味だしてるよ、お母さん」
「今度は人参なしでお願い」
「あらやだ、人参もちゃんと食べなさい」

そんな会話が弾む楽しげな食卓。


森丘さんが優しいので、続いて「哀しい感じのキラキラ星」をお願いしてみた。
キラキラ星 哀しいバージョン
ちゃんと炊けなかったのだろう。

水の量を間違えてしまったのか。もしかしたら、そもそもスイッチを押し忘れていたのかもしれない。炊けたかな、と思って炊飯器の蓋を開けたらお米が水に浸った状態のまま。ここから炊飯を始めたら急速モードでも40分はかかる。お腹を空かせた子供たちは意気消沈だ。

こないだ冷凍しておいたご飯をチンするしかないわね…。冷凍庫から凍ったご飯を取り出すお母さん、それを見つめる子供たち、炊飯器の中には水に浸ったお米。

哀しい光景だ。


森丘さんは言う。

「アドリブにはその人の考え方や生き様が表れます」

アドリブによって浮き彫りにされる演奏者の人生。それは同時に、聴く側にとっても自分の人生が浮き上がってくる瞬間なのかもしれない。今回、僕の人生に関わる炊飯器が様々な光景を見せてくれたように。


森丘さんのお陰でジャズにおけるアドリブが少しだけ分かった。

次に、今テレビで流れているCMで、すべてがアドリブという作品があるという情報を知った。アドリブのCM? そんなものは今までに見たことがない。

本当なのだろうか?
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