ワタミがもくろむ「和民」依存からの脱却
東洋経済オンライン 5月10日(土)6時0分配信
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上場以来初となる最終赤字の主因は、主力業態「和民」の不振だ |
「私どもにとって非常に厳しい決算になった。役員一同、心から申し訳ないという気持ちです」――。決算発表会の場で、居酒屋チェーン大手・ワタミ <7522> の桑原豊社長は開口一番こう述べて、頭を下げた。 同社は5月8日、2013年度の決算を発表した。売上高は1631億円で前期比3.4%増だったが、本業の儲けを示す営業利益は29億円と、同68.1%減という大幅減益に陥った。さらに衝撃的だったのは49億円という当期純損失だ。1996年の上場以来、初の赤字に転落した。
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最大の苦戦要因は、国内外食事業の9割を占める総合居酒屋「和民」業態の不振。同事業の既存店売上高は前期比で93.1%となり、当初計画していた100%に届かなかった。さらに、2014年度に和民業態の1割にあたる60店を閉鎖することに伴う減損処理や繰延税金資産の取り崩しなどで、最終赤字が膨らんだ。
「ワタミの外食事業において売り上げが伸びているのは、高単価で専門性の高い一部の業態に限られる。消費者が目的を持って居酒屋に来店するように変わった。総合居酒屋にとっては厳しいマーケットになった」と、桑原社長は振り返る。
■ 外食業界でも業況に濃淡
では、14年度以降はどのように巻き返しを図るのか。最大のポイントは国内外食事業の立て直し、具体的には「和民」業態依存からの脱却だ。かつては安さを売りに拡大を続けてきた総合居酒屋。ここに来て苦戦している原因は、消費者ニーズとのミスマッチにほかならない。
たとえば、同じ外食業界でも、ファミレス業態は景況感の改善が追い風となり、高付加価値のメニューを武器に業績を伸ばしている。ワタミの外食事業でも、串焼きに特化した「炭旬」、イタリアンやスペイン料理を中心とした「GOHAN」のような専門性の高い業態は、既存店が前期比100%以上の売り上げを維持している。
そこでワタミは、外食事業の全店舗に占める和民業態の割合を、現在の9割超から2017年度末をメドに6割まで引き下げることを目標に掲げた。一方、外食事業全体の店舗数は2014年度末の606店(計画)から3年後に680店まで増やす。つまり、和民の閉店や業態転換を進めるとともに、他業態の出店を加速させる戦略だ。
すでに新たな動きも出始めている。ワタミとしては初の中華業態を今年2月に神奈川県でオープン。3月には、本格的な炉端料理を提供する高客単価の店舗を銀座に開業した。
■ 店舗当たりの正社員数を引き上げ
これと並行して、和民業態のテコ入れも進める。2014年度に閉鎖する店舗のうち、10店ほどが不採算店の整理で、残りの約50店は労働環境改善に向けて1店当たりの正社員数を増やすために実施する。この60店の閉鎖により、1店舗当たりの社員数は、現状の1.86人から2.09人まで引き上げられる。随時、中途採用なども実施し、2014年度末には1店当たり2.2人を目指す。
「これからは付加価値を提供する新業態を出していく。和民業態についてはこれまでの拡大路線ではなく、既存店1店ごとの売り上げや利益を重視したマネジメントを取っていく。和民既存店の業態転換も考えていく」(桑原社長)
消費者のニーズは瞬く間に移り変わっていく。どこまでスピード感を持って、脱「和民」を進められるか。ワタミの変革力が試されている。
又吉 龍吾
最終更新:5月10日(土)12時0分
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