IBM:全面勝訴 1197億円課税取り消し 東京地裁

毎日新聞 2014年05月09日 21時58分(最終更新 05月10日 11時17分)

 グループ内の株取引を巡り、約4000億円の申告漏れを指摘された大手コンピューターメーカー「日本IBM」(東京都中央区)グループが、国を相手に1197億円の課税処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は9日、グループ側の主張を全面的に認め、処分を取り消した。八木一洋裁判長は「課税処分の要件を満たしておらず、違法で取り消しを免れない」と指摘した。

 判決が確定すれば、1197億円に還付加算金などを加えた額がIBM側に返還される。国税庁によると、裁判で取り消された課税処分としては、旧日本興業銀行に対する法人税など約1500億円や、消費者金融大手「武富士」創業者長男への贈与税など約1330億円に次いで過去3番目。納税負担を不当に減少させたとする国側主張を退け、企業活動をより重視した判決で、企業グループの「節税行為」に対する課税の難しさを示したといえそうだ。

 判決によると、グループの持ち株会社「アイ・ビー・エム・エイ・ピー・ホールディングス」(同区、APH)が2002年、日本IBMの全株式を取得。その後、取得株の一部を日本IBMに購入時より安価で売却し、差額約4000億円の損失を計上した。企業グループを一つの企業とみなし、グループ内の企業の利益と損失を合算して申告する「連結納税制度」を08年に導入してAPHの赤字と日本IBMの黒字を相殺させた結果、グループの法人税納税額が大幅に減少した。

 国側は「APHはペーパーカンパニーで、持ち株会社化に正当な理由や事業目的はなかった」と指摘。一連の経理処理の目的は節税の限度を超えており、制度の「乱用」に当たると主張した。

 これに対し、八木裁判長は、APHを「グループが資金を効率的に使用できる機能を果たしていた」と認定。「組織の在り方の選択は企業側に委ねられるべきだ」と述べた。

 国税局がIBMグループに課税した後、10年度の税制改正で、今回のように100%子会社に子会社株を売却して赤字を計上することが禁じられたため、現在はこうした手法で節税することはできなくなっている。【山本将克、太田誠一】

 東京国税局の話 国側の主張が認められなかったことは大変遺憾。

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