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円安株高 最終益2.1倍 26年3月期決算ピーク

産経新聞 5月10日(土)7時55分配信

 東京証券取引所に上場する企業の平成26年3月期決算発表が9日、ピークを迎えた。東証1部上場企業(金融を除く)の業績は安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による円安株高などを追い風に、最終利益は前期の2・1倍に膨らんだ。ただ、27年3月期は前期比5・1%増と伸びが大幅に鈍化する見通し。今後大幅な円安が見込みづらいほか、4月からの消費税増税の影響も見極めにくく、各社とも先行きに慎重な姿勢をみせている。

 SMBC日興証券が8日までに業績を開示した458社(全体の37%)を集計した。

 26年3月期は売上高が12・6%増、経常利益は51・2%増だった。当初、企業の多くが1ドル=85円前後の為替レートを想定したが、実際は1ドル=100円前後まで円安が進み、輸出企業を中心に業績改善が相次いだ。消費税増税前の駆け込み需要も寄与した。

 ただ、27年3月期の業績は一転して急ブレーキがかかる見通しだ。売上高は0・7%減とマイナスに転じるほか、経常利益は4・5%増、最終利益が5・1%増にとどまる。

 業種別では前期に業績を牽引(けんいん)した自動車を含む輸送用機器が経常利益ベースで1・4%の減益、不動産業も20・5%の減益を見込んでいる。

 ■今期 追い風やみ実力勝負

 平成27年3月期の連結業績予想で、増益率が大幅に鈍化する背景には、急激な円安株高の進行など、26年3月期のような“追い風”が期待しにくいことがある。想定為替レートの平均は1ドル=98円台と足元の水準との差が縮小しており、輸出採算改善による業績上振れ余地は限定的だ。企業が保有する上場株式の含み益を膨らませた株価の上昇も止まっている。今期は、戦略の巧拙など各社の実力が厳しく問われそうだ。

 9日、最終利益などが最高になった26年3月期業績を発表したスズキ。26年3月期初めに想定為替レートを1ドル=90円に設定していたが、四半期決算ごとに円安方向に修正し、期末時点では1ドル=100円。インド・ルピーやユーロを含めた為替の影響で、営業利益は543億円押し上げられ、1877億円となった。

 同じく最高益をたたき出した三菱重工業の宮永俊一社長は9日の決算発表会見で「円高の緩和が効いた。ありがたかった」と振り返った。同社だけでなく、円安株高など経営環境の急激な改善が、多くの企業に好決算をもたらした格好だ。

 だが、スズキの場合、今期は期初から1ドル=100円などに設定した結果、為替影響は営業利益ベースでマイナス90億円になる見通し。鈴木修会長兼社長は円安効果について「今期は期待できません」と嘆いた。

 SMBC日興証券が、東証1部上場で想定レートを出している273社の平均を調べると、8日時点で1ドル=98円47銭。足元の水準との差は小さく、一段と円安が進まない限り、差益はあまり享受できない。

 株価の低迷も気がかりだ。26年3月期は、保有する上場株式の株価上昇が多くの企業の利益を押し上げた。だが、勢いを失った現在の株価が続けば、今期はこうした効果は望み薄だ。

 27年3月期について出光興産や武田薬品工業、オリエンタルランドなどは最終利益で減益を見込む。

 追い風がやむだけでなく、“逆風”の懸念も広がる。大和証券の守田誠ストラテジストは「中国や東南アジアの経済状況をみて、新興国の需要予測を引き下げた」と話す。一方、国内では消費税増税の影響への不安が払拭されていない。

 SMBC日興証券の太田佳代子クオンツアナリストは、「26年3月期は企業全体の業績がよかったが、今期は優劣が出てくる。手元資金を有効に使い、売上高を伸ばす企業が勝ち残る」と指摘する。(高橋寛次)

最終更新:5月10日(土)10時32分

産経新聞

 

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