2014-05-09
大不況と911の共通点
経済 |
引き続きガートラーインタビューから、これまで引用していない部分の概要をまとめてみる。
- 大不況は、911と同様、何か悪いことが起きる予兆はあったものの、その発生は予見できなかった。後から考えれば概ね既存の理論で説明できる話だったが、その時はシャドウバンキングの脆弱性とそれがいかに経済を脆くしているかが分からなかった。バフェットのいわゆる「プールの栓を抜くまで誰が裸か分からない」状況だった。
- 最大の誤りはサブプライム貸出市場における規制緩和。皆に持家を持たせるという発想により、融資基準が下がり、住宅ローンのリスクが高まった。また、商業銀行の外部に規制されない仲介部門が成長するのを許したのも間違いだった。
- そうした政策が追求された背景には、以下の要因がある:
- 現在の低金利には、金融政策の帰結と、弱い経済状況の帰結という両面がある。現在の自然利子率はおそらく間違いなくマイナスで、そのためFRBは短期金利を限界まで引き下げた。長期金利には、3〜4年後には経済が回復し短期金利が上昇するだろうという予想に基づく上昇圧力と、大規模な量的緩和による低下圧力の両方が働いている。
- FRBは政治からの独立性を可能な限り維持するため、保有する不動産担保証券などの民間証券を財務省に引き渡すべき。危機時には素早く対応できる機関として最後の貸し手たるFRBがそれらの証券の購入に動く必要があったが、今となっては政治的存在である財務省がそれらを保有する役割を引き継ぐべき。
- FRBは今やかつてのシャドウバンキングの役割を引き継いでいる。即ち、不動産担保証券を保有して、預金を発行している。民間との違いは、事実上無リスクの債務を発行できること。ただ、危機時に民間より借り入れが容易という点を除けば、それがフリーランチになっているとは思わない。
- FRBは1970年代に非常に緩和的でボルカーとグリーンスパンがインフレに焦点を当てることによりそれを変えた、という考えは前からあった。Jordi GaliとRichard Claridaとの共著論文*1では、テイラールールとラース・ハンセンの手法を用いて金融政策の推移を描写し、議論に一石を投じることができた。
- 次の危機の芽を摘むため、ドッド=フランク法のような措置は絶対必要。
- アラン・ブラインダーはかつて、研究には、興味深いが重要でないものと、非常に退屈だが重要なものの2種類がある、と言った。最適資本比率の研究は後者に属する。我々はその研究に関して未だ決定的な実証研究も理論研究も手にしていない。
なお、これ以外には、バーナンキと知り合ったきっかけや、NYUの経済学部をそこそこの水準からトップレベルに引き上げた経緯や、ブログの評価(面白いが、科学的議論には適さない)などが語られている。
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