そこで、業界内部の作家・編集者・書店員が最近のライトノベルの現状について語っている記事・ツイートをまとめました。ここから仮説を導きたい。
ちなみに2012年末の状況。
ちなみに。「学園ラブコメハーレムばかりが求められる」状況は終わりつつあるというのが私の実感。去年一年で、幾つかの編集部と新規の作品の話をした時に一番求められたのは「ファンタジー」でした。まあ、チャイカとアウトブレイクが比較的うちの作品では売れてるからってのもあるだろうけど。
— 榊一郎 (@ichiro_sakaki) 2012, 12月 22
詳しくは以下のまとめを御覧ください。プロの作家たちが感じている最近のラノベ読者の特徴
ライトノベル市場全体のトレンド
なんか営業サイドから回覧記事がきました。「書籍の出版傾向――文庫」取次さんが発行の業界冊子でライトノベルの件も触れてたみたいな。
— サト(GA文庫編集部) (@GA_SATO) 2014, 5月 1
ライトノベルは昨年より落ち、2004年以降では、初のマイナス成長だとか。前年に爆発的な売れ行きの「SAO」クラスがなかったからとの分析。ですねー、むしろ2013年も「SAO」さんがずっと伸びてた観測。
— サト(GA文庫編集部) (@GA_SATO) 2014, 5月 1
ヒット作の続刊は安定して売れてるけど「新たに売上を伸ばす作品がなかなか出てこない」とのこと。ぐぬぬ。刊行点数はGAは82から64に大幅減、ダメじゃんウチ。もっと新作増やさないと。でもなープロット会議のハードルがにゃー、というポイント。
— サト(GA文庫編集部) (@GA_SATO) 2014, 5月 1
「新作のヒット率が落ちていることは気掛かりな点だ」ですか、やっぱかー、そんな気がしてたんだー、というか数字的に「ですよねー」感。「KADOKAWAシェア8割」ですよねー。
— サト(GA文庫編集部) (@GA_SATO) 2014, 5月 1
@kiri99 新作の売れ行きは、「重版まではいかずとも、そこそこクラス」が激減。上下に差が開いた感じですね。過去作と比較すると吐血する人多数です。ヤバいです。
— サト(GA文庫編集部) (@GA_SATO) 2014, 5月 1
参考:出版月報 2014年3月号「特集 2013年文庫本マーケットレポート」ライトノベル関連
ライトノベルは一巻の初動偏重で二巻以降メディアミックス以外売り上げ伸ばす手段がほぼないのが問題。過去作品の掘り起こしもないしね。低予算でそういうことができるメディアなり手法が出てきてもよさそうなんだが。 NG ワード:定期刊行物
— 三上康明 (@MikamiYasuaki) 2014, 5月 6
@ichiro_sakaki ためになるお話、ありがとうございます。ひとつ質問があるのですが、先ほど作品を4本(少なくとも長編は1本以上、短編2本以上)を書くとありましたが、これは期間的に制限はあるのでしょうか?例えば一年でそれだけの量をこなさないといけない、とか。
— 茶菓山(1日8000歩おじさん) (@sakayama_shinta) 2014, 4月 25
@sakayama_shinta なんで茶菓山さんがw ラノベに関して言うならば、長編二本は一年以内、位に考えておいた方が良いと思います。以前は「三本から四本文庫出せば喰っていける」ラノベ業界でしたが、最近は書き手やレーベル、刊行点数の増加で、一冊あたりの初版部数が
— 榊一郎 (@ichiro_sakaki) 2014, 4月 25
@sakayama_shinta 下落する傾向にあり、やはり「年間4~5本書ける速度」がないときついだろうという事、更に、シリーズ前提のものが多いラノベは、そうした状況で、半年以上間があくと、読者の人達がついてきてくれない(主要ターゲット層である十代の時間感覚で半年は長い)可能性
— 榊一郎 (@ichiro_sakaki) 2014, 4月 25
@sakayama_shinta ――があるので、そういう意味でも、定期的に刊行出来るのは生き残る上で必要な技能かと。ただ、多分漫画でも同じだと思いますが、必要に迫られて仕事として書き始めると、大体速度は上がるので、「年に二本」ととりあえずしてみましたですよ。
— 榊一郎 (@ichiro_sakaki) 2014, 4月 25
——特定の作品じゃなくて、最近のライトノベル全般について、感じていること、考えていることでもかまいませんが。
難しいこと、訊きますね。そうだな。ライトノベルも少し歴史が積み重なってきて、「ライトノベルを買って読んでくれる人たち」が以前に比べると可視化されるようになってきたような気がするんですよね。そうすると、その人たちに向かってどんどん特化していくことにどうしてもなりますから、僕みたいな「おまえの小説はライトノベルっぽくない」と言われがちな物書きは、うまく適応していくか、隅っこのほうに敷いた独自路線の上をなんとか走っていくか、とにかく上手に立ち回らないと、なかなか厳しいのかなあと。
十文字青ロングインタビュー
ジャンルについて
@y_arim 読者さんは求めているだろう!と自分は思っているのですが、実際のところ個々の編集部や編集者がどう考えているかはそれぞれ次第でしょうね……。あと読者さんでも、10代/20代/30代……といった年代や、あとハガキなのかネットなのかといった媒体によっても違ってきそうです。
— 庄司智 (@ss_editor) December 14, 2013
ライトノベルに精通する担当の田村恵子さんは「12年に放送された『ソードアート・オンライン』の人気を受けて、さまざまなファンタジーものが売れるようになりました。ファンタジーは90年代に人気だったので原点回帰といえるでしょう。逆にラブコメ要素が強いものは苦戦傾向です」と話す。
内容については「多くの異性が1人の平凡な主人公に好意を寄せるハーレム系より、(極端に)能力の高い『チート系』の主人公の作品が増えていると思います。読者の好みに変化が出ているのかも」と話している。
またトップ10位のうち、半数以上がファンタジーもの。純粋なファンタジーだけでなく、魔法などの要素を取り込んだ変形型もあるのが特徴。田村さんは「ライトノベルは男性中心だが、『ソードアート・オンライン』は女性ファンにも受け入れられ、ファン層が拡大したのが大きい」と指摘。同店年間ランキング2位の「はたらく魔王さま!」も、女性ファンの支持で躍進したという。
またウェブ小説からのデビューが目立つのも特徴だ。川原さんの「ソードアート・オンライン」、3位の佐島勤さんの「魔法科高校の劣等生」、6位の赤雪 トナさんの「竜殺しの過ごす日々」は、いずれもウェブから生まれた。ウェブでの人気作を出版する流れは現在、標準的になっており、この流れは今年も続くと見られる。
課題は、ライトノベルの刊行点数が多すぎることで、田村さんは「数もそうだが、ファンタジー一辺倒の気配があり、全体の伸びが止まりつつあるのが気になる。『ソードアート』に続く新たなヒット作が必要」と話している。
ライトノベル展望 : 人気作「ソードアート・オンライン」効果でファンタジー復権 書泉ブックタワー
――この話を書いたきっかけをお聞きしてもいいですか?
ひねりも何もないのですが、担当編集様から「戦記ファンタジーを書いてみない?」と話を振っていただいたのがきっかけになります。 これまで学園モノや軽いタッチのラブコメの流れが強くて、そういうのじゃないと企画が通らないのかなーとぼんやり考えていたのですが、世間の流行の変化なのか、重ためのファンタジーものを書くチャンスが巡ってきまして。で、元々ライトノベルのファンタジーが好きだったこともあり、「是非やらせてください!」と。
『偽神戦記』三国陣先生インタビュー
――最後に読者のみなさんへメッセージをお願いいたします!
この小説を書いている時、ファンタジー作品は古いとか、獣人が主人公なんて今どき受けないとか、ヒロインの一人称が“我輩”じゃダメだとか、周囲からいろいろ言われた私ですが、電撃小説大賞《大賞》をいただくことができました。「100パーセント自分の趣味で書いたら売り物にならない」という言葉をよく聞きますが、たぶんそうでもないのだと思います。
好きなものをとことん突き詰めたら電撃小説大賞《大賞》に! 『ゼロから始める魔法の書』の虎走かける先生インタビュー
応募作についてですが、今回の傾向としては全体的に異世界ファンタジー with 異能バトル、な作品が多かったでしょうか。
ライトノベルは10代向けのエンタテインメント小説である、という以外に確たる縛りの存在しないカテゴリーなので、募集された時点で読者となる皆さまにとって一番興味のあるジャンルが応募作にもそのまま傾向として現れるのかもしれません。最近の売れ線的傾向なのか、たまたまそうなったのかわかりませんが、興味深い結果でありました。 逆に現代ものについては、ストーリーや構成自体にひねりというか仕掛けのある作品が強く、普通のラブコメ的な作品は少なかった印象です。
第6回GA文庫大賞選評
――作品を書くうえで悩んだところは? 既存作品との差別化ですね。いわゆる“主人公最強モノの学園バトル作品”というのは、ここ1年以内で爆発的に数が増えていまして……バトルの工夫や世界観、主人公やヒロインの在り方などで作品独自のモノを出していきたいなと。
主人公最強モノの学園バトル作品を描く上で注意した点とは? 『祓魔学園の背教者』三河ごーすと先生を直撃【Spot the 電撃文庫】
吸血鬼というのは根強い人気のあるテーマで、過去に名作もたくさんあるんですが、その多くで吸血鬼という存在がネガティブなものとして描かれているんですね。自分が吸血鬼であることの苦悩や葛藤を抱えているキャラクターがとても多い。 でもそれは本当に読者が吸血鬼に求めているものなのかなと。今の読者が共感できるポイントは実はそこではないんじゃないか、というのが、この作品の出発点です。不老不死で特殊能力を持ってるって、普通にカッコイイじゃないですか。
(中略)
もうひとつ『ストライク・ザ・ブラッド』の目標として、読者に無用なストレスを与えないということは、すごく意識して執筆しています。たとえば過去のトラウマをいつまでも引きずらせたり、くだらない誤解で人間関係を悪化させたり、ストーリーを盛り上げるためだけに意味もなく登場人物を苦しめるようなことはやめようと。仮に物語のラストでそのトラウマやわだかまりが解けたとしても、読者にそれまでの間ずっと我慢を強いるのは、今どきの娯楽としてちょっとどうなの、という思いがありまして。 心に傷を負っているキャラクターがいたとしても、すでにそれを乗り越えた段階で登場させて、その上で新たな人間関係を構築していく、そういう作劇にしています。これは先ほどの「吸血鬼の苦悩」とも関連した話ですね。
「ストライク・ザ・ブラッド」原作者・三雲岳斗インタビュー “原点回帰、正統派で描く学園伝奇アクション”
まあ、うちの今やってるチャイカだって「最初から最強」どころか、むしろトールとか弱いしな(あの世界の最強クラスにはそのままでは手も足も出ない)。全てがそうだとは言わないけど、新作やろうとすると「異世界でチートでハーレムな作品を寄越せ」という編集者がそれなりに増えたとは思う<私の実感
— 榊一郎 (@ichiro_sakaki) 2014, 5月 7
要は、編集者がルーティンな作業の中で、「少しでも失敗の可能性を減らしたい」と考えて、中堅やベテランに「声の大きな人達の嗜好」や「目立って売れているものの傾向」の後追いを求めると。商売の方法としては間違ってない。なので癖の強いベテラン編集者はあんまりその手の求めてこないんだよな。
— 榊一郎 (@ichiro_sakaki) 2014, 5月 7
ウェブ小説、ボカロ小説関連
HJ文庫でも以前から『小説家になろう』には注目していて、実際かなりの数(少なくとも100作以上は)読ませてもらいましたし、作品の傾向やパターンを詳細に分析しました。 #hj文庫インタビュー
— あしがら(HJ文庫編集) (@HJ_Ashigara) 2014, 2月 21
それこそ、世界設定、主人公の年齢、性格。ヒロインの人数、性格、ストーリー展開その他色々全てデータベース化し、研究を重ねました。 #hj文庫インタビュー
— あしがら(HJ文庫編集) (@HJ_Ashigara) 2014, 2月 21
さらに作品傾向だけでなく、アクセス数の時間帯からユーザーの1日の生活様式をプロファイリングし、その年齢層や職業等のイメージもしました。最終的には『小説家になろう』を運営されている『ヒナプロジェクト』さんにお伺いして直接お話を聞かせてもらったりもしました。 #hj文庫インタビュー
— あしがら(HJ文庫編集) (@HJ_Ashigara) 2014, 2月 21
とまあ、ここまでしておいて(データベース化は半ば趣味みたいなもんですが)あれなのですが、基本的なHJ文庫の方針として、「仕事としてやる以上、長く作家として続けていける力のある人と仕事がしたい」というのがあります。 #hj文庫インタビュー
— あしがら(HJ文庫編集) (@HJ_Ashigara) 2014, 2月 21
- その後は順調に書籍化まで?
池本:いえいえ。WEB小説を文庫化して出すという試みは一度もやったことがなかったので戸惑いが正直ありましたね。特に、当時はライトノベルレーベルの間で、今ほどWEB小説の書籍化が一般的では無かったので。『魔法科高校の劣等生』(電撃文庫)、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(GA文庫)のようなヒットタイトルはもちろん知っていましたが、それくらいで。積極的にWEB小説を書籍化していたヒーロー文庫さんもまだ、3、4タイトルくらいしか刊行されていなかった状況で、編集部全体でもWEB小説の書籍化に対してのアンテナは強くなかった感じですね。なので、どういうタイプの作品で、どういうターゲットの人に売りたいのかの説明がなかなか難しかった記憶があります。
(中略)
-それでは最後の質問です。おそらく多くの方が気にしてらっしゃると思う「小説家になろう」のランキングの関連性と、今後のレーベルとしての動きはどうなるんでしょうか。
池本:『Re:ゼロから始める異世界生活』に関していえば、ランキングとかは関係なく『中高生が面白い』と感じるライトノベルになるなという未来が見えたからですね。『ラブコメ』『萌え』などのイメージが強いかもしれませんが、MF文庫Jというレーベルとしての意識は”そこ”にありますので。
【コラム・ネタ・お知らせ】 WEB小説書籍化の闇に斬り込む? 「Re:ゼロから始める異世界生活」2巻発売記念 長月達平先生・大塚真一郎先生インタビュー!
「たとえば『異世界転生もの』が流行ったら、みんなで少しずつ差分を加えながら、有望な鉱脈を探るんですよ。『異世界転生で学園ものがおもしろそうだね』とかね。 そのくり返しの中でパターンが洗練されていく。だから仮に作家同士の交流が直接的になくても、ライバル心も、連帯感もあるんです」
【新文化】 - 衝撃ネット小説のいま - 連載 第11回 橙乃ままれ氏(下) 「現在」に対して誠実に
ボカロ曲は10代女性の4割が「好きな音楽ジャンル」として挙げるデータ(13年、東京工芸大調べ)があるほど人気ジャンルとなっている。ボカロ小説も同じ層に支持されており、出版元によると、読者層は8割程度が女子中高生で、中には小学生の読者もいるという。ボカロ小説はライトノベルの一種だが、ファン層はライトノベルのメインターゲットである10~20代男性とは異なる。「悪ノ娘」の編集を担当したPHP研究所の伊丹祐喜さんが「企画当初はネット発の少しニッチで、ターゲットは男性だと考え、ラノベと同じような作り方をした」と話すように、女子中高生の人気は出版社も想定外だったという。
ボカロ曲やボカロ小説が若い世代に支持を集めていることについて、伊丹さんは「思春期特有のもやもやした思いと、世界観がマッチしているからかもしれません。“闇の設定”や救われない内容も好まれる傾向があります」と分析する。
ボカロ小説 : 女子中高生に大人気 ヒットの理由は?
まとめ
記事の母数が少ないので全体的な傾向はなんとも言いにくいのですが、
・俺TUEEE系の作品が増えたのは 2013年後半。
・ファンタジーの復権は2013年から現在まで続いている。
・SAOに続く新たなヒット作がない。
・SAOやはたらく魔王さま、ボカロ小説のように女性ファンを獲得しないと大ヒットは生まれない。
という仮説は立てられそう。この辺りを検証できたら良いですね。
まずは明日発売の禁書を読んでからですが!
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2014-05-10)
売り上げランキング: 2
コメント
30巻も出てるとねぇ、、、
ウザい主人公見て女子が飛び付くとかw
女の子がわーキャーしてるだけだから男子だろ
口コミとか堂等と読んでるの基本中高生なんでしょ?
SAOは結構スイーツっぽい要素あるから
愛を感じるまとめが多くて、嫌な気分になることがないのも嬉しいです。
キリト×ユージオがあるから
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