元気のひけつ

【岩崎賢一】 男性80.88歳、女性87.18歳。厚生労働省が今年2月に発表した2010年の都道府県別平均寿命で、長野県が男女ともに全国1位となりました。男女とも47位の青森県と比べると、約3歳の開きがあります。長野県の長寿の秘密はどこにあるのか、探ってみました。

 

図表拡大<グラフィック・くぬぎ太郎>

 医師で長野県健康長寿課長を務める小林良清さんは、長寿県となった理由を「がんや心疾患による死亡率が低いため」と説明する。10年の長野県のがん死亡率は、男性が全国47位で女性は46位。心疾患も男性46位、女性45位と確かに低い。

 この低さを支えているのが、生活に根付いた予防運動だ。今でこそ長寿県となったが、1958年には長野県の脳卒中死亡率は全国1位だった。高血圧を防ぐ「減塩運動」が始まり、長寿県作りのきっかけとなった。

 生活改善を支えているのが戦後普及した、保健師の活動を補助する保健補導員と食生活改善推進員(食改)だ。「『ほっぺたまわし』と言われ、自治会役員のように順番にやる。勉強会に参加し、近所の人に働きかけることで知識や経験が蓄積されていく」(小林課長)。

 保健補導員の経験者は延べ20万人。女性の5人に1人の割合だ。関心のある人だけが取り組むのではなく、地域の役割として交代に行うことがポイント。隣近所の関係を利用することで、引きこもりがちな人にも声を掛けやすい。おかげで肥満者や喫煙者の割合が低くなり、野菜摂取量は全国1位となった。

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岩﨑賢一 (いわさき・けんいち)

埼玉県出身。1990年に入社。静岡、千葉を経て東京勤務。BSEや9.11が起きたころの2001年、厚生労働省を担当。その後は、暮らしと政策をつなぐというコンセプトで設けられた「くらし編集部」での医療取材の経験をベースに現場を歩いています。3.11直後から福島県をベースに被災地の医療や介護の現場を歩いています。プロメテウスの罠「病院、奮戦す」(「Web新書」はこちら)を執筆。

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