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【健康】

脳卒中対策で成果 長野県 秘訣は減塩+野菜

 脳卒中による死者が多かった長野県が、県民の食生活の改善で大きな成果を上げている。脳卒中の原因となる高血圧の予防には、減塩が大切。生野菜も高血圧対策には効果的とされ、サラダ好きの県民性も後押ししているようだ。ただ、まだ食塩摂取量は多めで、改善には余地がある。

長野県は一九六〇〜七〇年代、脳卒中の死亡者が人口十万人当たり二百八十人前後で推移していた。全国平均と比べて、百人以上も上回る数値だった。

 問題の一つが食塩の取り過ぎ。内陸県で、保存が利く塩漬けの魚を良く食べるほか、塩分の多い野沢菜の漬物を多食する影響があったとされる。食塩摂取量が多いと、血液中のナトリウム濃度が高くなる。人体は、それを察知して濃度を下げようと血液中の水分を増やし、それで血圧が上がる。これが心臓肥大や、動脈硬化による脳血管疾患などの原因となる。

 県が八〇年度に女性を対象に調査したところ、一日平均の食塩摂取量は一五・九グラム。男性はさらに多いことが推定された。厚労省が現在、目標値とする食塩の一日の平均摂取量は男性九グラム未満、女性七・五グラム未満となっている。

 医師や保健師が住民と協力し、野沢菜の漬物やみそ汁など、塩分の多い食事の改善を進めた。食生活改善推進員が開く料理教室では、塩ではなく酢やゴマを使っての味付けを紹介。特に脳卒中の死者が多かった佐久地区では、医師が中心となって、みそ汁を一日一杯に抑える運動を進めた。

 その結果、二〇〇六〜一〇年の厚生労働省の国民健康・栄養調査では、同県の成人の一日の平均摂取量は男性が一二・五グラム、女性が一〇・七グラムまで減った。

 また、長野県は野菜の摂取量が男女ともに全国一位。その食習慣は脳卒中の防止に一役買った。生野菜に多く含まれるカリウムはナトリウムを尿から体外に排出する働きがある。県の一〇年度の調査では一日のカリウム摂取量が男性二千五百九十二ミリグラム、女性二千三百九十二ミリグラムで、全国水準を大きく上回っている。

 同県の一〇年の脳卒中の死亡者は、人口十万人当たり男性が五十三・九人、女性が三十二・三人にまで低下した。

 食塩と血圧の関係に詳しい東京大大学院医学系研究科の安東克之准教授は「アジアの食文化はもともと、欧米に比べて食塩摂取量が多い。世界保健機関(WHO)の減塩目標は一日五グラム未満。日本高血圧学会は、高血圧患者に六グラム未満を呼び掛けている」と話す。(伊東治子)

◆運動が再発を予防

 脳卒中の一つである脳梗塞。減塩が注目される中、適度な運動との組み合わせで、軽度の脳梗塞などの再発防止に効果があることを、名古屋大大学院医学系研究科の山田純生教授(保健学)らのグループが立証した。研究成果は、近く米国の医学誌に掲載される。

 グループでは二〇〇九年から一二年十月までに、動脈硬化が原因で、まひが残らない軽度の脳梗塞になった七十人(平均年齢六三・、五歳)を無作為に運動と減塩をするグループ(三十五人)と、何もしないグループ(同)に分けて数年間追跡した。

 運動はマシンを使った全身の筋力トレーニングと、三十分の自転車こぎを合わせ、一〜一・五時間の運動を週二回実施。日ごろも散歩などを増やすよう指示した。減塩は個人ごとに具体的な一日の摂取目標を決め、しょうゆを減らしたり、麺類の汁は飲まなかったりすることなどを促した。

 その結果、何もしないグループは五人が脳卒中、六人が心筋梗塞、一人が狭心症と、計十二人が動脈硬化性の疾患を再発。運動・減塩のグループは一人が軽い狭心症になっただけだった。

 山田教授は「生活習慣を改善すれば多くの再発は予防が可能。軽く済んでよかったと安心しないで」と話している。(山本真嗣)

 

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