例えば、2012年4月、フィリピン海軍がスカボロー礁で漁業規定を実施するために取った行動は、中国とフィリピンがその領海にさらに艦船を派遣するという危機を招くことになった。米国が仲裁し両国が撤退した後でさえ、中国はフィリピンの接近を阻止する準軍事的船舶を再配備して、結局は係争地域の実質的支配権を握ってしまったのだ。このような結末が、今後、中国に対する異議申し立てを思いとどまらせることになる。
その後2012年9月に日本政府が尖閣諸島の3島を個人地権者から購入した際にも、中国政府はこの「スカボロー礁モデル」を尖閣諸島に適用した。中国は尖閣諸島における日本の行政的管理(島への日米安保条約の適用の根拠)に対して異議申し立てを行い、日本政府にこの論争を認識させる目的で、尖閣諸島近くの水域に準軍事的船舶および軍艦を派遣した。
アメリカの支援によって、日本は中国の圧力にもかかわらず譲歩することを拒絶した。それに対する中国側の反応は、安倍晋三総理の靖国神社参拝を日本軍国主義の復活の証拠だとする反日キャンペーンの強化であった。
中国人アナリストは、2011年11月に発表されたアメリカの「アジアへのリバランス政策」を中国の主張に対する異議申し立てを促すものとしてしばしば非難する。だが、実際には中国の海洋論争に対するますます強引なやり方は「リバランス政策」が発表される数年前から行われている。アメリカが領有権争いのどちら側にもつかないので、中国政府は米国政府と直接対立することなく実効支配を今まで広げることができたのである。
中国政府の「能力」は信頼に値しない
中国の政策は「アメと鞭」である。
中国の指導者は協力の基盤として、鄧小平の考えである係争地域での共同資源開発を挙げている。しかし、この共同開発の試み(2005年から2007年にかけてのフィリピンとベトナムとの地震探鉱、2008年の日本との天然ガス協定)はどちらも失敗に終わっている。