中国

策略を巡らす中国:安定を目指し領有権も主張

2014.05.09(金)  パシフィックフォーラム CSIS

 中国はこの緊張を巧みに操作するために様々な方策を用いている。例えば、主として軍事力ではなく準軍事的な力を使用したり「サラミ戦術」(訳者注:敵を一気にではなく少しずつ追い込み滅ぼしていく戦術)を採用することにより、軍事衝突の限界点を探りながら、係争地の実効支配の強化を段階的に進めていくのである。

 一方で、対立する領有権主張国を威圧するため、増大する軍事力の優位性を示すことにますます積極的になり、また、中国が支配権を主張することに異議を唱える国に制裁を加えるために、中国の経済的影響力を利用しようとしている。

 中国政府は、領有権を主張する国と主張しない国とを慎重に見極めている(ベトナムやフィリピンのような南シナ海の領有権を積極的に主張している国と、マレーシアやブルネイのようなそうでない国とを区別している)。これは、中国と対立しそうな国々を分断することによって、中国の行動に対する集団的な抵抗を防ぐためである(こうしたやり方は、東南アジア諸国との対立と北東アジア諸国との対立とが同時に発生することを避けるために、中国政府が南シナ海に防空識別圏を設定する時機を窺っていることを示唆している)。

「スカボロー礁モデル」を尖閣諸島に適用

 中国は、自国の行動は「疑う余地のない」主権に異議を唱える他国に対する防御的反応であると考え、そのように説明している。問題をそのように捉えることによって、国内で厳しい対応を求める動きが盛り上がる。そしてさらに中国政府は、中国の行動は中国の主権に対する侵害への反作用であり防衛であると主張するのだ。

 2012年以来、中国はそのような国内的盛り上がりを利用し、実効支配を強化するために他国の異議申し立てを阻止しようとしている。

 例えば、2012年4月、フィリピン海軍がスカボロー…
Premium Information
楽天SocialNewsに投稿!
このエントリーをはてなブックマークに追加

バックナンバー

Comment

アクセスランキング
プライバシーマーク

当社は、2010年1月に日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より、個人情報について適切な取り扱いがおこなわれている企業に与えられる「プライバシーマーク」を取得いたしました。

Back To Top