くらし☆解説「カツオはどこへ消えた?」 2014.05.09

生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
きょうはこちらのテーマです。
5月になると食べたくなるのが初ガツオですけれどもそのカツオ、ことしはあまり見かけません。
担当は合瀬宏毅解説委員です。
確かにことしはカツオスーパーでも見かけませんね。
カツオはこの時期、安くておいしい魚として初夏には欠かせない食材ですよね。
ところがことしのカツオ漁は全国的に不漁が続いているんです。
こちらを見ていただきたいんですが、全国各地のカツオの水揚げを見てみますとカツオで有名な高知県の土佐清水港では1月から先月までの漁獲量が5トンと前の年の6%しかとれていませんし和歌山県の串本でも28%千葉の勝浦港は若干とれているんですがそれでも去年の68%にすぎません。
去年に比べてこれだけ減っているんですね。
カツオの水揚げは5月以降がピークになると言われていますので、これから徐々に増えてくるとは思いますがいずれも記録的な少なさです。
その結果、築地市場での卸売価格は4月は去年の20%高くなっているんです。
上がったんですね。
そこで産地がいったいどういう状況なのか、カツオの主要な水揚げ港の1つの東京都の八丈島に行ってきました。
八丈島は黒潮の流域に当たり、その年のカツオ漁を占う地域とされています。
例年は2月ぐらいからカツオがとれ始めるんですが、こちらでも不漁が続いているんです。
この日は20隻ほど船が出ていたんですが、カツオが釣れたのは4隻ほどです。
漁獲量も例年の30%ほどだったんです。
八丈島のカツオは青いたるに詰めて、築地市場などに出荷されることからたるカツオとして有名なんですがこの日のカツオの水揚げはすべて合わせても1トンほどだったんです。
このため漁師の中にはカツオを諦めて、キンメダイなどほかの魚に切り替える人たちも増えています。
地元の方も大変ですね。
この地域では1年の年収の半分をカツオで稼ぐと言われていますから、漁師の人たちもとれないと大変ですよね。
東京都八丈島事業所の堀井善弘さんによりますと1月から先月までの漁獲量は4か月で33トンと例年の10%ぐらいしかとれていないんです。
少ないですね。
最近は漁船の燃料代も上がっていますから、カツオをねらうにもリスクが伴うんです。
自然相手とはいえ、あまりの不漁に頭を抱えている状態なんです。
それにしても、どうしてこんなにカツオがとれていないんでしょうか。
いくつか要因が言われています。
1つは水温なんです。
カツオは水温20度以上の海を好むと言われているんですが水温の上がりが遅れ、ことしは例年より低めだったことが報告されています。
水温というのは魚にとって重要で水温が低ければそれだけ動きが鈍くなります。
それがカツオの北上を妨げていると言われているんです。
これから暖かくなればとれ始めるということですか。
そう願いたいんですがそれだけでは説明がつかないという専門家もいるんです。
これは4月の21日前後の水温20度以上を示したものです。
カツオが好む温度ですね。
確かにこの時期、大きな漁場となる伊豆半島から遠く離れているんですがカツオ漁の盛んな高知や紀伊半島からはそんなに遠く離れていないんです。
とれてもいいはずですね。
また水温が低い年はことしだけではないのでこれではことしの記録的不漁の説明がつかないというんです。
だとすると、ほかにも理由があるんでしょうか。
この問題を巡っては先週の金曜日全国のカツオ漁の関係者が集まって会議を開いたんです。
その中で言われたのがカツオ全体の資源量が減っているのではないかということなんです。
カツオの資源というのはこれまで豊富にあると言われていたんです。
ところが大型船の一本釣り漁、日本近海の釣り船の一本釣り漁を見てみますと年々下がっているんです。
水揚げ量ですね。
1993年には8万トン近くあった水揚げが最近では2万トン近くまで減っているんです。
要するに、日本近海のカツオが減っているわけですね。
とれなかったのはことしだけではないわけですね。
そうなんです。
カツオがいったいどういう行動をとるのか見てみますとそもそもカツオというのは熱帯から温帯水域に広く分布する魚で主に春と秋に産卵するんです。
1匹のメスが生む卵の量は10万から200万個と大量でしかも成長のスピードも早いため繁殖力の強い魚だとされてきたんです。
カツオはこうした熱帯域を中心に生息し一部が餌を求めて北上して日本近海までやって来るとされているんです。
すべてのカツオが北上するわけではないんですね。
しかも一本道で北上するわけではないんです。
黒潮沿いだけではなく和歌山県の南からだとか小笠原、伊豆諸島沿いなど4つのルートで日本にやって来ると考えられています。
いつもの年だと、このルート上に漁場がいくつも形成されるんですがことしはこの4つのルートでいずれも漁場が形成されていないカツオがとれていないんです。
産卵地で数が少なくなっているのではないかと専門家は疑っているんです。
どうして産卵地で少なくなっているんでしょうか。
とりすぎではないかと言われています。
中西部太平洋でのカツオの漁獲量を見てみますと、1970年には20万トンにしかすぎなかった漁獲量が年々増えて2012年には160万トンと40年で8倍にも増えているんです。
ほかの国もたくさんとっているということですか?インドネシアや韓国、パプアニューギニアなどが漁獲量を大きく伸ばしていると言われています。
今やこの地域でとるカツオの漁は太平洋でとるカツオの量の全体の86%に及ぶと言われています。
この地域でそれだけとってるんですね。
かつてはこの地域でカツオをとっていたのは日本だけで、しかもかつお節用にとっていたんです。
ところが世界で水産物の需要が増えてくるにつれて例えば缶詰やペットフードなどに加工する国が増えてきているんです。
水産物というのは豚肉などと違って宗教的にも問題ありませんしヘルシーだということで需要も伸びているんです。
とる量の規制はしないんですか?それが今後の課題なんです。
この地域のカツオ、マグロを管理している国際機関がこれを規制しているんですが3年前に行った資源調査では資源量は豊富で乱獲状態にはないと結論づけているんです。
まだ、たくさんあるということですね。
ただ日本に北上してくるカツオは確実に減っているわけです。
国際機関ではことし8月に各国の専門家が集まって資源状態を評価し直すことになっています。
日本としてはこうした厳しい状況を反映した評価を求めて、さらに対応を迫ることになると思います。
カツオがとれなくなると本当に困ってしまいますよね。
日本人にとって、カツオは今の時期の初ガツオとして、鮮魚としてだけではなく、かつお節など日本のだし文化と密接に関わっているわけですよね。
とはいってもそのカツオ世界で需要が増えているわけでして、日本だけが独占するわけにもいかない。
日本はカツオを多く消費する国としてカツオの資源評価をきちんと積極的に行って、もし資源が減少しているようなら国際的な管理のあり方を呼びかけていくことも必要だと思います。
合瀬宏毅解説委員でした。
次回のテーマです。
憲法記念日後の12日にまとまるNHK世論調査をもとに安倍総理が熱心な集団的自衛権の行使容認など憲法を巡る問題について国民がどう受け止めているか担当は島田敏男委員です。
ぜひ、ご覧ください。
(栗原)今日はですね今日のお料理に合わせて2014/05/09(金) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「カツオはどこへ消えた?」[字]

NHK解説…合瀬宏毅,【司会】岩渕梢

詳細情報
出演者
【出演】NHK解説…合瀬宏毅,【司会】岩渕梢

ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:33241(0x81D9)