シッター事件:預けた母 ネット託児、信じていた

毎日新聞 2014年05月09日 15時05分(最終更新 05月09日 19時12分)

2歳男児の遺体が発見されたマンションを調べる捜査員ら=埼玉県富士見市で2014年3月17日、本社ヘリから矢頭智剛撮影
2歳男児の遺体が発見されたマンションを調べる捜査員ら=埼玉県富士見市で2014年3月17日、本社ヘリから矢頭智剛撮影

 埼玉県富士見市のマンションで横浜市磯子区の山田龍琥(りく)君(当時2歳)が遺体で見つかり、ベビーシッターの物袋(もって)勇治容疑者(26)が保護責任者遺棄致傷罪などで逮捕、起訴された事件で、龍琥君の母親の女性(22)が毎日新聞のインタビューに応じた。

 女性は多数の写真を手に「こうして並べてみるまで気付かなかった。毎日、あの子を撮っていたんですね」と振り返った。

 4月からは昼間の仕事を探すつもりだったといい「夜にベビーシッターに預けるのはあれが最後のはずだった。龍琥が3歳になったら何かを習わせようとか、いろんなことを決めていたんです」と涙を何度も拭った。

 女性によると、ベビーシッターを選ぶ基準は原則として「子供のいる女性」だった。今回もネットでそう希望した。

 ◇「親切な人多かった」

 さらに、メールのやりとりでは「子供が入院していて」などと書かれ、絵文字も使われていた。そのため偽名を使った物袋容疑者を「子供のいる女性」だと信じていたという。女性は「前にあの人に預けた時は、ぶっきらぼうで雑なメールしか送ってこなかったから、まさか同一人物とは思わなかった」と話す。

 病気で働けない自身の父親と子供2人との4人暮らし。生活保護を受けていても家計は苦しく、週2回、飲食店で夜に働いていた。

 ネット検索で見つけたベビーシッターは親切な人が多かった。ある女性は「シングルマザーは大変でしょう」と1泊4000〜5000円にしてくれた。「だから、まさか子供に危ないことをする人がいるなんて考えもしなかった」

 ◇無資格とは知らず

 横浜市には市営の24時間保育園がある。女性は調べたことがあったが、事件当時は忘れていた。

 以前に預けたことのある無認可の夜間保育園は、子供の扱いに不信感を抱いたこともあり、利用する気になれなかった。

 区の保健師も自宅を訪れたが、相談することは頭に浮かばなかった。「本当に何も分からなくて。事件後に『私は預ける時に保育士の証明書を見せてもらっている』とかネットに書き込まれているのを見て、ベビーシッターが無資格でできることを初めて知りました」と声を落とした。

 「龍琥は生まれてから病気一つしたことのない、元気で活発な子だった。毎日どこに行くにも、そばにいて私を支えてくれた。龍琥がいない現実がいまだに信じられません」【田村彰子】

 ◇ことば:ベビーシッター事件

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