カジノ法案:衆院で審議入りへ 治安悪化や依存症を懸念

毎日新聞 2014年05月07日 19時50分

 カジノを中心にした統合型リゾート施設(IR)の整備を後押しする法案が、5月中にも衆院で審議入りする。カジノ合法化の動きは頓挫を重ねてきたが、「観光立国」の機運に乗って自民党、日本維新の会、生活の党が法案を共同提出。今国会成立の可能性が高まっている。地域活性化の「切り札に」との期待があるためだが、治安悪化やギャンブル依存症の増加などの懸念は与野党とも根強い。

 IR整備推進法案は超党派の議員でつくる「国際観光産業振興議員連盟」(会長・細田博之自民党幹事長代行)がまとめた。法案は推進本部を内閣に設け、法案成立から1年以内に関連法や政令の制定を義務づける内容。カジノは刑法(賭博罪)が禁じているため、指定した地域に限って認めるための法整備などを想定している。

 IRを巡っては、2020年東京五輪に向けて海外から観光客を呼び込もうと東京、北海道、大阪、沖縄などの自治体が誘致に名乗りを上げている。昨年末の議連総会では、推進派が「法案は観光の起爆剤だ」と気勢を上げ、安倍晋三首相も3月の衆院予算委員会で、カジノ合法化について「(政府の成長戦略上も)メリットが十分ある」と歓迎した。

 だが、海外で盛んなカジノには借金を重ねたり、犯罪資金の流入で治安悪化を招いたりするイメージがあり、共産、社民両党や弁護士団体などが反対している。

 対応が割れているのが公明党だ。誘致に積極的な自治体が選挙区にある議員を中心に9人が議連に参加し「公序良俗を乱さない形で治安などを規制すればいい」(遠山清彦衆院議員)と賛成する考えだが、支持母体の創価学会には懸念の声が強く、党執行部は慎重だ。このため法案の採決では党議拘束を掛けず、個々の判断に賛否を委ねる案も浮上している。【高本耕太】

 【ことば】IR(Integrated Resort)

 カジノを中心にホテルやレクリエーション施設などを併設する統合型リゾート。米国ラスベガスが発祥とされる。2000年代にマカオやシンガポールで開発され、注目を集めた。自治体など行政の財政負担でなく、民間資本による地域振興策として期待する声がある。

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