「7~9月期の景気指標が落ち込めば消費増税がやれなくなるため、公共事業などを早期に集中執行することで、見せかけの経済成長を作ろうとしている。昨年も4~6月期に予算を集中執行させて、そのまやかしの景気回復が8%増税の根拠とされた。同じことを繰り返そうとしているのです」
国は年金などの社会保障に回すための財源がないから消費増税をすると説明してきたが、実はそのカネが公共事業などに回り、再び「増税」の材料に使われようとしているのだ。東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏も言う。
「消費増税は社会保障に使うというロジックは'99年の予算総則に初めて打ち出され、'07年11月の財政審で方針としてまとめられた。しかし、カネに色はないわけだから、当時からこれは増税のためのロジックだとわかっていた。案の定、消費増税はいま公共事業にばらまかれることになったわけです」
しかし、財務省のやりたい放題はこれだけにとどまらない。景気浮揚のために株価を上げる策まで講じているという。
「財務官の古澤満宏氏('79年)が3月6日にニューヨークで開かれた日本証券サミットに参加し、アベノミクスの第三の矢である成長戦略をアピールしていた。実は日銀総裁の黒田東彦氏('67年)も増税賛成派で、公共事業で景気浮揚ができないとわかれば、再び黒田サプライズ緩和に打って出るとの観測がある。さらに、財務省が厚生労働省と結託して、年金資産120兆円を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を動かして、日本株買いに走らせるというシナリオも語られている」(前出・経済部記者)
とはいえ、成長戦略はすでに腰砕けだし、追加緩和もGPIF発動もカネを金融市場にばらまくだけで、「まやかしの一手」であることに違いはない。
ちなみに、財務省は田中一穂氏が安倍首相から切られるような事態に備えてもいる。キーマンは首相秘書官の中江元哉氏('84年)。安倍官房長官時代の秘書官を務めた人物で、第二次安倍政権誕生時に首相から再抜擢された。持論を声高に政治家に主張するだけではない冷静沈着なタイプで、安倍首相からはその「財務官僚っぽくなさ」が買われていると評判である。
「財務省としては、田中がこけても中江がいるというわけです」(前出・財務省OB)
「日本の中枢」の視界にあるのは増税の二文字ばかり。庶民の生活には目もくれていないところに、この国の悲劇がある。
「週刊現代」2014年4月26号より
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