NHK:籾井会長就任3カ月 「本業」見えぬ成果

毎日新聞 2014年05月05日 09時45分

参院予算委で答弁のため挙手する籾井勝人NHK会長=国会内で2014年3月12日、藤井太郎撮影
参院予算委で答弁のため挙手する籾井勝人NHK会長=国会内で2014年3月12日、藤井太郎撮影

 籾井会長の任命にあたっては、企業経営の経験を生かしたNHKの経営課題への取り組みが期待されていた。国際放送の強化、番組を放送と同時にネットで見られるようにする「放送と通信の融合」の推進、東京都渋谷区にある放送センターの建て替えなどだ。秋には来年度から3カ年の次期経営計画策定も控えている。

 「放送と通信の融合」は、国会で審議中の放送法改正案が成立すれば、試行が可能になる。本格実施に向けては受信料体系の見直しが必至。籾井会長も積極的に取り組む姿勢を見せているが、混乱が尾をひいたままでこの問題の検討を開始することに疑問の声も上がる。

 視聴者の籾井会長への批判的な意見は4月21日時点で約2万6500件。市民団体が受信料支払い凍結に向けた活動を始めるなど、広がりをみせる公共放送トップへの不信は、「放送の中立性が守られるのか」といった懸念に加え、NHKの今後の運営にも影を落としそうだ。

 ◇「一刻も早く辞職させるべきだ」「それで済む問題か」 職員も悩み

 「現場の職員がどう考えているか外から見えてこない。分かるようにした方がよい」。NHK出身のジャーナリスト、池上彰さんは4月中旬、職員でつくる労働組合の求めに応じ講演し、こう呼びかけたという。参加した職員たちは「悩んでいた」。講演後約1時間、質問が途切れなかった。「会長は一刻も早くやめるべきだ」「やめれば済む問題ではない」とさまざまな意見が出たという。

 籾井氏について池上さんは「理事全員に辞表を提出させたり、理事の人事案を事前に経営委員会に示さなかったりしたのはよくなかった」と話す。かつての川口幹夫会長について「現場に任せ、責任は取った。これが経営者のあるべき姿」、実業界出身の福地茂雄、松本正之会長についても「すぐれた経営者はどこのジャンルから来ても仕事ができる。放送メディア、視聴者の信頼の大切さをよく分かっていた」と語ったという。【望月麻紀、岩崎信道、青島顕】

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