第2回 救出2014年4月17日
※今回は、特別ゲストの松本基弘ゼネラルプロデューサーと山田兼司プロデューサーも交えてお届けします!
――石川にライバル心をむき出しにしている立花。第1話では、自ら「オレとどっちが優秀ですか?」と上司に問う一幕も。結局のところ、立花は刑事としてデキるヤツ? それとも口だけ…!? 金城 立花は、警察官一家の家系に生まれ育ち、警察官になることが運命づけられているような男。そのプレッシャーの中で生きてきたこともあって、彼の中では自分が優秀な警察官でないことなんてありえないという感覚なんです。しかし、ライバル視している石川といると冷静さを失い、嫉妬で彼の持ち味がかき消されてしまう。でも本来は、監察眼の鋭い優れた刑事なんです。 ――そんな立花を石川はどう見てる?金城 青木さんは見たまま、物事に頓着しない、本当に立花のような人物なんです。
山田 ただ、青木さんの方が立花よりもう少しおおらかでのんびりしていて、かつ繊細。逆に小栗さんの方が鷹揚ですね。お互いにまったくタイプが違うから、補完し合っている感じでしょうか。小栗さん自身、青木さんと一緒にいると安心するようで、すごくくつろいでいるのを感じます。
金城 小栗さんの方が青木さんにちょっと甘えている部分があるのかもしれないですね。この人になら、どんなにちょっかい出しても大丈夫だって(笑)。役的にも、共演者としても、本当にいいバディになったと思います。 ――第2話で初登場したハッカーコンビ、サイモンとガーファンクル。そもそも、そういうキャラクターにしようというアイデアはどこから?
山田 ただ、それが結構、難航したんですよね。パターンにはめたくない、この作品独自のものにしたいという意図がある中、イメージに合う役者さんが見つからなくて。特にサイ君の方が、なかなか決まりませんでした。
金城 そんなある日、山田Pが在日ファンクのハマケン(浜野謙太)さんはどうかって提案してこられて。おうっ!それはいい!と。
山田 普通の役者さんじゃない人がいいのかなと思って、異業種の人で、独特の雰囲気を持つ方を探していたんです。僕は元々在日ファンクが好きでしたし、ハマケンさんは役者もやっていらっしゃる。他に似ている人がいないオリジナルな存在感をもっている方だなと常々思っていて、それで金城さんにどうですかと聞いたら、金城さんの中で落ちて。シーンが浮かんだんですよね。
金城 僕の中であまりにしっくりきたので、「ハマケンさんを引っ張ってこられなかったら、分かってますよね?」と山田Pにプレッシャーをかけました(笑)。
山田 僕らの中で完全にイメージが出来上がってしまいましたからね。何としてもと思ってオファーしました。そうしたら、快く引き受けてくださって。
金城 本当に幸せな縁でしたね。
――劇中では、「悪くない」と石川を瞬時に受け入れた2人。その理由は? 金城 彼らには辛い過去があって、それなりに辛酸をなめてきましたし、裏の世界で生きてきたので、人を見る目が肥えていて勘も鋭い。それと同時に、2人は才能のある者と感応し合う特性もある。石川の場合、警察官なので一歩間違えば自分たちを捕まえる可能性もあったわけですが、実際に石川と会って、自分たち側に近い人間であると見抜いたんです。 ――赤井いわく「この仕事を始める前からの知り合い」とのことですが、実際にはどんな繋がりがあったんでしょう? 松本 赤井は以前、外資系の金融機関でトレーダーをしていたんですが、その頃から彼らを使って儲けていた。だから、「この仕事を始める前から」なんです。
金城 サイ君&ガー君なら、情報を収集するのはもちろん、逆に流して情報をコントロールすることも可能ですから、インサイダーもお手のもの(笑)。2人にしてみれば、普通のハッキングやっていてもつまらないから、赤井ともずっと繋がってきたし、石川の仕事も受けることにしたんだと思います。 ――お揃いの黒いタートルの服も印象的。 金城 2人はお互いを強く信頼し合っていて、家族以上の関係。コンビとして服はどうするって話になったとき、コンビ名がサイモン&ガーファンクルだけに、彼らのアルバムのジャケットを参考にすればいいんではないかと安易に考えまして(笑)。そして、『ブックエンド』というアルバムで彼らが着ている黒の上下にしました。ガー君は数着を洗って着回しているけど、サイ君は何十着も買い込んでいて汚れたらすぐに捨てて新品に着替えるという裏設定もあります(笑)。 ――いっぽう、第2話の物語では、犯人の村上が必要以上に石川の周囲に出現。そこまで粘着した理由は? 金城 悔しかったからでしょうね。追い詰められると思っていなかったのに追い詰められ、死を選ばなければならなかった。それが悔しくて、挑発してやろうと。最後のゲームを楽しむという意図もあったでしょう。結果的に自殺したのも、極度のナルシストであることの現れ。とにかくプライドの高い人間ですから、刑事に来られた時点で、完璧なはずの計画が傷つけられて、これで終わりだと思ってしまった。理由は極めて自分勝手なことですが、一言で言えば“無念の思いが強かったから”だと思います。 ――今回、死者として登場したのは村上のみ。被害者である女子高生が、石川の前に現れなかったのはなぜ? 金城 死者が現れるのは、別に無念の思いで化けて出て、それを石川に訴えているからというわけではないんです。無念を晴らすというのは、あくまで石川自身が胸中に抱いている思いに過ぎない。
山田 死者が見えるというのは石川の主観で、たまたまチューニングが合ったから、見えてしまったということ。死体があれば必ず出てくるというわけではないし、都合良く見られるわけじゃない。石川の能力は、万能ではないということです。
金城 条件もいくつかあって、一度遺体の近くに行かなければダメだとか、荼毘に付される前の肉体があるか否かとか。少なくとも死者の“脳”がある状態でなければならない。しかも、大前提として、その死者とチューニングが合わなければ見ることは出来ません。今回に関しては、石川は被害者の女子高生の遺体と接触する機会がなかった上、すでに荼毘に付されていたということです。
松本 連ドラとしてそれなりの数のお話があるんですけど、実はそれ以外にも、市倉班で解決している事件はたくさんある。たまたま石川とチューニングが合って、死者と遭遇した話だけを取り上げている…ということなんです。
金城 チューニングが合いにくい相手というのもいるだろうし、石川自身、能力をまったく制御できていないですから、ある意味、成り行きに任せている。裏を返せば、波長さえ合ってしまうと、どんな理由で死んだ人でも見えてしまうということ。今後、殺人事件の死者以外と遭遇したり、出たら最後ずっと出っぱなし…なんて死者も現れるかもしれないですよ(笑)。 ――細かいところでは、比嘉の「ナルシシスト」というせりふにも意味が? 金城 彼女はあえてそう言っています。一般的には「ナルシスト」と言いますが、正確には「ナルシシスト」。比嘉は知識としてそれを知っているので、正確な言葉を使っているということ。ちなみに、立花も「ナルシシスト」と言っていましたが、それは比嘉がそう言っているので、真似しただけです(笑)。 ――細かい部分については、ほかにも仕掛けが? 金城 皆さんは、村上の部屋に一匹だけ金魚が飼われている縦長の金魚鉢があったことにお気づきになったでしょうか。あれはメタファー(暗喩)になっていて、実は“冷蔵庫に監禁された女子高生”を示している。
山田 さらに細かいことを言うと、あの金魚鉢にはエアーポンプが入っていない。あのままにすれば、やがて金魚は死んでしまう。
金城 それが捕らえられた女子高生とシンクロしている。村上は、家にいる時、それを見て捕らえた女子高生を想像し、楽しんでいた…ということです。この作品には、そういう何気ないシーンにも、いろいろと情報を詰め込んでいるので、二度三度と見返してもらうと、最初は気づかなかった要素が発見できたりして、より楽しんでもらえるんじゃないかと思います。