宣伝部の変革と復権-次世代マーケティング部への機能再編-

「AIDMA」、「AISAS」…Aから始まるモデルは代理店の罠?

2014年05月09日 掲載横山 隆治

【前回の記事「代理店に任せること、自社内でやるべきこと」はこちら】

「買う」ことから始まるコミュニケーション

私はマーケティング施策の本質とは、購買ファネルのどこにどれだけ投資するかを決めて実行することに尽きるのではないかと考えている。
新商品を市場に問うのであれば、まずは「認知(Awareness)」に投資するのが当然だろうが、ある程度の市場浸透を経た後は、リピート、リテンションに投資する、あるいは流通対策に投資するなど、自社商品が置かれている状況を鑑みて、様々なプロセスの中でも、どこに重点投資するかを明確にしなければいけない。どのプロセスからどのプロセスへの歩留まりが悪いかは、ブランドによって異なる。認知率が高ければ、そのまま購買が多いとは限らず、またその認知も特に日用消費財の場合は、店頭での購買経験によって得られる場合も多く、認知は必ず広告で得られるものとは限らない。

逆に「広告」は認知獲得のためだけでなく、リピート促進や流通で棚を獲得するためなど様々に機能しているケースが多い。しかしながら、多くの企業で広告による認知から始まる購買ファネルを基点にマーケティング施策が考えられているのではないだろうか。
 
消費者は、常に購買ファネルどおりに、顧客となりリピート購入してくれるわけではないので、商材によっては「認知」からスタートするモデルだけでなく、「購買」から始まるストーリーを描いてマーケティング施策を企画実施することも大事だ。

【現在のファネルモデル】ソーシャルメディアのパワー拡大により、ブログやSNSなどから情報をキャッチし、そこで認知するインターネットユーザーが増加傾向にあるため、従来型メディアを利用したAwarenessの拡大だけではなく、購買後の領域も施策構築の上で決め手となっていくと考えられる。

とかく「認知」獲得を提案する代理店

とかく、広告代理店は「『認知』を獲得しましょう。」と提案をするだろう。代理店は「広告」「メディア」を買ってもらいたいのだから、当然と言えば当然だ。しかし広告主は、そもそも今、獲得しなければいけないのは「認知」なのか、またそうだとしても認知は「広告」だけでしか獲得できないのか、また「広告」は認知にしか寄与しないのかを、しっかり理解して、マーケティング施策の本質である「購買ファネルのどこにどれだけ投資するか」を決めなければならない。

現在、日本で使われている態度変容モデルは「AIDMA」にしろ「AISAS」にしろ、いずれも「Awareness(認知)」から始まるモデルになっている。もちろんAISASというモデルには最後のSつまりシェアされて初めて知る(認知する)人もあって、新たな購買を生むという考え方ではあるものの、ちょっと意地悪な言い方をすれば、「Awareness(認知)」から始まるモデルを喜ぶのは、広告会社だけ?という見方もできる。
 

ネットマーケティングの世界では、リタゲを必死でやっている。一回でも関心が顕在化したユーザーをターゲットにリマインドを促している。しかしこの考え方はリアルな販売チャネルを前提としたマスマーケティング型広告展開でも、応用が効く。
「デジタル施策を使って初めて把握できることを活用して、マス/リアルの施策を最適化する試み」、これをデジタルマーケティングと筆者は呼んでいる。

≫次ページ 「マスマーケティングとCRMは接近する」に続く

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