消滅可能性:かつての人口増一転、奈良県は3分の2が危機

毎日新聞 2014年05月08日 22時38分

 原発を誘致した自治体の多くが「消滅可能性」の危機にある、と指摘された。日本創成会議・人口減少問題検討分科会が8日発表した「2040年人口推計結果」。原発が立地する17自治体(福島県内を除く)のうち、福井県高浜町など12自治体は、人口維持が困難になるという。一方、近畿地方では、歴史ファンに人気の奈良県明日香村や日本最大の日雇い労働者の街「あいりん地区」を抱える大阪市西成区などが対象となり、大都市やその近郊でも厳しい結果となった。【松野和生、釣田祐喜、上鶴弘志、重石岳史、村上尊一】

 人口維持が困難と指摘された福井県おおい町と高浜町、美浜町には、それぞれ関西電力の大飯、高浜、美浜の3原発がある。

 大飯原発は最も早く原子力規制委員会へ再稼働を申請した原発の一つだが、その見通しは不透明だ。地元のおおい町は若年層の人口を増やそうと、子育てしやすいまちづくりを重視し、一定の基準で保育所や医療の無償化などを進める。担当者は「試算とはいえ、今後も人口減少は続くと思われるのは事実」と危機感をにじませる。

 高浜原発の再稼働の見通しが立っていない高浜町も原子力だけに依存せず、施設園芸の導入など新たな産業の創出でバランスのとれた産業構造を模索している。また、美浜原発は3基が運転開始から37〜43年で、再稼働申請すらされていない。地元の美浜町は、今年度当初予算のうち、電源3法交付金など原子力関連の歳入が約37%を占めるなど原発に依存。古い原発のリプレース(建て替え)などを求めているが、実現の可能性は低い。

 近畿地方の自治体も深刻だ。奈良県内は39市町村のうち3分の2に当たる26市町村が「消滅可能性都市」に分類された。大阪や京都に近い北西部では高度成長期以降、人口増が続いていたが、既に大半の市町村が減少に転じている。人口流出は過疎化が深刻な南部・東部の山間地が顕著だが、大阪まで近鉄や高速道路で1時間圏内の中部・西部でも厳しいデータが示された。かつて飛鳥京が置かれた日本の中心地・明日香村も含まれた。

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