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<消滅可能性>原発誘致した17自治体 12が人口維持困難

毎日新聞 5月8日(木)22時7分配信

 原発を誘致した自治体の多くが「消滅可能性」の危機にある、と指摘された。日本創成会議・人口減少問題検討分科会が8日発表した「2040年人口推計結果」。原発が立地する17自治体(福島県内を除く)のうち約7割の12自治体は、人口維持が困難になるという。誘致に伴う電源3法交付金や雇用増などを通じ、バラ色の未来を夢見た自治体には今、閉塞(へいそく)感が漂う。

【表で見る】2040年原発立地自治体の20〜39歳女性推計減少率

 東京電力柏崎刈羽原発を誘致した新潟県柏崎市は、「消滅可能性」の定義にあてはまる。人口再生産の中核となる20〜30代の女性は約8900人から4400人弱に減ると推計された。

 地域振興を目指し、同市議会と、隣接する刈羽村の村議会が誘致を決議したのは1969年。78年に1号機が着工され、97年に最新の7号機が運転を始めた。再稼働の見通しは立っていないが、総出力は世界最大を誇る。

 しかし、人口増は一時的にすぎなかった。市によると、原発建設工事などで95年までは転入者が転出者を上回ったが、工事がほぼ終わった96年以降は転出者が上回っている。市議会の佐藤敏彦副議長(62)は「原発は人口減少の防止にほとんど機能していない」と分析する。原発関連の仕事をする人には就職先になっても、大学や専門学校で市外に出た若者の多くが戻ってこないためだ。「全国どこでも住めるのに、なぜ原発のある場所に、との思いもあると思う」

 今回の人口推計について、市企画政策課の担当者は「従来以上に厳しい内容だ。新卒者の市内就職支援や子育て支援などに力を入れ、若い女性の流出を抑えたい」と話した。

 東北電力女川原発が立地する宮城県女川(おながわ)町には、東日本大震災の影響も重くのしかかる。

 三陸沖の豊かな漁場を持つ水産業に加え、84年に営業運転を始めた原発は関連企業の雇用を生み、国などの交付金がまちづくりにも寄与してきた。それでも少子高齢化が進み、町の人口は95年から2010年までの15年間で約3000人減の約1万人に落ち込んだ。大震災が追い打ちをかけ、震災からの3年間で人口はさらに約2700人減った。

 平地のほとんどが浸水し、住宅再建のための宅地の確保すら難しいのが現状。町の担当者は「新たな転入者を受け入れるためにも、まずは防災集団移転地の造成を一日も早く完了し、町を復興させたい」と説明するのがやっとだ。

 一方、東北電力東通原発が立地する青森県東通村。営業運転の開始は05年だが、村は家族連れの定住を期待してこの10年前に村土地開発公社を設立し、団地造成に当たってきた。当時は数千人の人口増を見込んでいた。しかし、02年から村役場前の120区画の分譲を始めても景気低迷で売れず、今年3月には78区画が売れ残ったまま解散に追い込まれた。負債は約5億円。同村では東京電力も原発建設を進めていたが、震災後は中断したままだ。

 しかし、東通商工事業協同組合の澤田隆事務局長(63)は「長い目で見て、再稼働などが今後進めば、地元の子供たちが帰ってきて定着につながる」。人口増とはほど遠い現状だが、原発との共存に期待を込めた。【高木昭午、近藤綾加、伊藤奈々恵】

 ◇玄海原発立地の佐賀県玄海町 10年間で転入15世帯

 九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町も消滅可能性を指摘された。1975年に1号機が稼働、その後も4号機まで増設された。国や県から受けた原発関連交付金は昨年度までの38年間で総額331億円以上。固定資産税収入は98年度の40億円超から年々減少しているが、昨年度も二十数億円を維持し「原発マネー」は町内経済を潤してきた。

 しかし、人口減少は止まらない。歯止め策として2004年度に住宅新築などを助成する定住促進奨励金制度を制定。昨年度までの10年間に69世帯291人に対し、計7410万円を交付したが、町外からの転入者は15世帯(21%)にとどまる。12年度からは婚活応援事業も始め、出会いの会を6回開いたが、まだ1組もカップルは誕生していない。

 岸本英雄町長は「町としてさまざまなイベントを開催し、住みやすさをアピールしている。町営住宅の建設も考えており、推計のような人口減少にはならない」と話した。【原田哲郎】

最終更新:5月9日(金)0時47分

毎日新聞

 

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