なんか一部の人に一緒くたにされる事がある萌えミリタリのヒット作である「スト魔女(ストパン)」「ガルパン」「艦これ」
公式でもこの三作品のコラボで「空・陸・海」とかやってるので、類似性はあるのでしょう。
<戦記もの>「ガルパン」「艦これ」ヒットで注目 人気の理由 (まんたんウェブ) - Yahoo!ニュース
戦記ものが作られ続ける理由は分かりやすい。歴史上の事件や人物は、版権や使用料に気兼ねせずに使える「貴重なフリー素材」というのがまず一つ。すでに数十年から数百年も人々に親しまれた「原作」でもあり、新作の懸念材料である知名度をクリアする上でも申し分ない。
こういう評価も艦これなどには間違いなくあてはまる。
戦国武将モノの延長線で括ってもいいだろう。
しかし「ストパン」「ガルパン」「艦これ」ともに、第二次世界大戦の頃の兵器に焦点を当ててるにも関わらず、あくまで世界観の描かれ方を突き詰めていくとそこで書かれる「日本」という国の扱われ方が変わって行っている。
ぶっちゃけていけば後発になればなるほど「日本」がかなり大きくなっていっていると言い切って良い(同時に後発になるほど、なんでウケイガー言われるようになってるのかという理由とも恐らく無関係ではないのだろう)
あくまで主観とwikipediaなどから調べたざっくりとした比較だが、三作品の世界観の違いについて挙げてみたい。
ストライクウィッチーズ - Wikipediaによると、スト魔女に関しては概ねこういう書い説である。
『ストライクウィッチーズ』(STRIKE WITCHES) は、島田フミカネ及びProjekt Kagonish原作・角川書店企画のメディアミックス作品。
島田がコンプエース創刊号から連載していた、大戦中の空軍・陸軍兵器を擬人化したメカ少女のイラストコラム系企画であり、当初からメディアミックス企画として展開される事を念頭に置いて立ち上げられたものである
ストライクウィッチーズは「空軍・陸軍兵器の擬人化」というコンセプト。
例えばアニメ版の主人公、宮藤芳佳のイメージモデルは大日本帝国海軍航空隊の通称「空の宮本武蔵」武藤金義氏であるらしい。
他の501のウィッチも、ドイツ・イギリス・フランス・イタリア・ソ連・アメリカ・フィンランドなど諸外国のエースパイロットを元ネタにした美少女化と、戦闘機の武装化が特徴として挙げられる。
あくまで「実在の歴史上のエースパイロットを美少女化した」という側面が強い。
芳佳や坂本さんなど日本出身ウィッチは、当初「A6M3a零式艦上戦闘脚二二型甲」という「ゼロ戦」を意識した装備を使っていたがあくまで「パイロットの美少女化」の要素の方が大きいと感じる。
ただここらへんのノリは織田信長やら孔明やらアーサー王やらを美少女化するノリとの親和性が近いのではないかと推測している。
また時代背景は、芳佳が魔女入りした主な時期は1945年前後に焦点が当たっている。
人類の敵・ネウロイが現れた事で第二次世界大戦へ突入しなかった時代とされており、ネウロイが居る事で各国の魔女が共闘しているという設定である。
そのネウロイの在り方を書ききれず(アニメ版の監督が2期の冒頭で丸投げした事も含めて)色々と面倒な事になっている気もするが、それは置いておく。
時代背景的には世界中で戦争は起こらなかったが、あくまで第二次世界大戦の時代であり「パラレルワールドの過去」である。
今回引き合いに出している三作品で「現代」要素が最も薄い(というか実質的に皆無)な一作といえよう。
スト魔女シリーズの特徴としては、「日本(本作では「扶桑」と呼ばれる)」の存在感が薄い所にも言える。
ストライカーユニットを作ったのが日本人の宮藤パパである事が明言されているが、あくまでアニメ版の舞台はブリタニア(=イギリス)などの「ヨーロッパ」で芳佳がそこに配属されて仲間達と共にネウロイの怪獣退治を行っているというのがストーリーだった。
少なくともアニメ版では「扶桑(日本)を守る」という要素はないと言ってもいいだろう。あくまで序盤での芳佳の日常で日本編を少しやる程度だ。
ネウロイに扶桑を襲われれば別だが、あの時点ではそういう事態に陥っていないとも言える。
別部隊ノベルの「いらん子中隊」のスオムスはフィンランド。
同人作品などで展開される「アフリカの魔女」はまんまアフリカだろう。
扶桑(日本)を中心にしたのは、日本ウィッチの坂本と仲間達に焦点を当てた過去編「扶桑海事変」くらいか。
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あとアニメ版の話を突き詰めると、アニメ版のラスボスはネウロイ化した航空母艦「赤城(1期)」や戦艦「大和(2期)」である。
「強大な艦」として赤城や大和を引き合いにしただけかもしれないが、あくまで日本艦が「(敵に乗っ取られた)ラスボス」として書かれていた事は留意しておきたい。
ここまでまとめ。
スト魔女の世界観において「日本(扶桑)」の存在感は薄味である。
「日本出身のウィッチ」自体は各媒体で目立った人物が居る傾向があるが、「日本」自体はあくまで1945年には比較的平和で戦場にならない。故に「守らなくてもいい国」として半ば扱われている。
ただその代わりヨーロッパの国々なんかはネウロイに襲われてたり、消滅させられてる国があったりと、逆に戦火が日本以外の国に広がってると言えなくもないのが面倒くさい見方を出来てしまう部分だろう。
あと根本的に「パンツじゃないから恥ずかしくないもん」とかわけのわからない事を言いだすことで男性向けのエロに特化している。
これによって世界観の頭のおかしさを出すことで、フィクション性を生み出しているという副作用もある……のかもしれない。
逆に後発の「ガルパン」「艦これ」は頭のおかしさを出そうとはしてる世界観なのだが、どことなくフィクション性が薄まっていく傾向になる。
今回取り扱った三作品では「擬人化」の要素がない。むしろ「戦争」の要素が最も薄められてる一作。
あくまで戦車バトルをスポーツとするという世界観で、とりあえず砲撃されても人は死なないらしい。
西住みほを初めとした「戦車道」を嗜む少女たちが出るモノの、あくまでこの作品の「兵器」はあくまで「おもちゃ」として扱われている。
ウィッチや艦娘は少なからず「軍人」の要素が入るのだが、本作の登場人物は「軍人コスプレ」はしていても明確に「軍属」ではない。
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この辺、どうしても怪獣相手の代理戦争のような印象がある「スト魔女」と「艦これ」とは違う。
例えば「機動戦士ガンダム ビルドファイターズ」のガンプラで戦うようなノリの方が「ガルパン」に近い気がする。
そういえばガンダムBFのセイ君もみほと同じで「スペックは高いけど最初は自信が無い」ところから始まって「友達やライバルとの交流を通じて吹っ切れる」という所は似ているのかもしれない。
ただしガルパンで戦車プラモが結構売れたという話もあり、実際にコラボも結構行っていた。
関連プラモが売れる現象はスト魔女ではあまり聞いたことない流れで、艦これでもよく聞く事になる。一種のターニングポイントといえるだろう。
「スト魔女」「艦これ」と違って、登場するキャラは完全にオリジナルキャラであるのだがその代わりキャラ人気はニッチ的な部分に収まってしまった気もする。
僕はさおりん好きなんですけどね。
この作品で使われる戦車は、あくまで「第二次世界大戦で主に使われていた戦車」が主らしい。
だが「スト魔女」がほんとに「第二次世界大戦(1945年前後)のパラレル」だったのに対し、「ガルパン」は過去の話としては書かれてないように感じられる。
「学園艦」という非現実的なものを出してフィクション性を出そうという試みはある。
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どうでもいいけど大洗の学園艦は翔鶴型をモチーフにしているらしい事を今回調べてて初めて知った。
「戦車道」「学園艦」のようにはっちゃけた設定を入れているのだが、この作品には明確な「現代性」を感じさせる展開があるのだ。
そう、大洗の聖地ネタである。
4話で寂れた商店街を舞台にした練習試合において、「被害が出ても保証が出る」という設定を持ってして暴れまわっている。
この4話があったからガルパンは「聖地モノ」として大きな地位を得て、利益的な好循環を生み出した。
と同時に明確過ぎるほど、これはどこかで変な常識が生まれただけの「現代」なのである事もこの商店街の街並みには見えている。
あくまで過去のパラレルであったスト魔女と違い、ガルパンは現在のパラレルなのだ。
そして大洗という聖地を作っている時点で、「日本」の存在意義はかなり大きい。
別にみほ達は「日本を守っている」という立場ではないのだが。
しかし必ずしも「日本」を舞台にしているわけではなかったスト魔女に比べると、ガルパンの舞台は間違いなく「日本」を中心にした日常系を下敷きとしている。
ただし使用兵器は各国雑多なので、そこらへんは戦時下の話ではない事を明確にはしている。
ガンダムでハイザックを個人的に買ってホビー化してるようなものだろう。
というか大洗の教官である蝶野亜美さんが「陸上自衛隊」の公務員のお姉さんなのである。
自衛隊も本作と艦これのコラボには精力的なマーケティングを行っている。「ニコニコ超会議」とかに力を入れているとも聞く。
さて本命。
「擬人化」の要素は「ガルパン」より「スト魔女」に近いといえよう。
ただスト魔女が「実在の有名武将の美少女化」に近い構成だった一方で、こちらは多聞丸(山口多聞)や田中頼三少将を「実在の指揮官」と認識しているようなセリフを吐く艦娘が居る。
また「ゼロ戦」も、ストパンではフライトユニット化していたが艦これでは「空母の装備」として型落ち気味だが存在している。
公式寄りの「いつか静かな海で」でもミニチュア仕様の艦載機を飛ばす展開があり、アニメ版でもこれに沿った描写をするらしい事をほのめかしている。
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時代背景はスト魔女・ガルパンに対して「解釈が分かれる」のだが、ゲーム中の台詞を見る限りでは「戦中パラレル」のスト魔女ではなく、「戦後パラレル」であるガルパンに近いのではないかという気がする。
艦娘の多くが「第二次世界大戦での戦いの記憶」を保持している節がある事(原爆実験などの記憶が吹っ飛んでる艦はいるが)
「スマフォ(伊168)」「深夜アニメ(夕張)」「ロクマル(日向)」など現代的な要素を嗜んでる事をカミングアウトする艦娘も居る事。
ロシアに賠償艦に引き渡されて1970年代まで生き延びていた響のような例もあるので、戦後寄りのイメージがある。
あと二次創作ではあまり見ないネタだが、田中Pはどうも「戦後の名を受け継ぐ護衛艦」を意識しているようなそうでないような描写がある。
彼が主に関わっている「いつか静かな海で」では、オチで「名を受け継ぐ現代の自衛隊艦」の解説が入って終わるという展開がある。
そもそも戦争をしているというより、シーレーンを守るという点で「自衛隊」に寄った印象もあるかもしれない。
ただ艦これのコンセプトとして、あくまで「大日本帝国の連合艦隊」の存在感がかなり大きいと思われる。
各国のパイロット美少女化のオールスターだった「スト魔女」や、各国の戦車が雑多に集まっている「ガルパン」に比べると、艦これにおける「日本」の扱いは三作品の中で最も大きい。
そもそもメディアミックスでよくある「シーレーンを守る海上護衛戦の重要性」みたいな要素も、日本が島国だからこその要素といえなくもない。現状でも我が国の食料供給にとっての「輸入」の重要性は言うまでもないだろう。
あくまで日本に特化した作りが受け入れられるゆえんでもあり、批判の槍玉にあげられる所以でもあるのかもしれない。
海外艦は出ているものの、ロシアのヴェールヌイはただの賠償艦であり日本出身の響である事がかなり押しだされている。
そういう意味ではZ1・Z3・ビスマルクといったドイツ艦しか出ていないのだが、あくまでこれは枢軸繋がりの側面もあるだろう。
枢軸艦を出すにしては敵味方のしがらみが薄いし、ビスマルクの商業的な展開に繋げたいという思惑もあるのだろうが、敵(深海棲艦)が連合国か否かという実に面倒くさい部分はまだ明言されていない。
一応、艦これ世界にナチスがあるかどうかは彼女達は一切語っていないのだが、ドイツ艦の最初の艦になるであろうZ1を普通に入手するには「遣独潜水艦作戦」を意識したとしか思えない遠征をリアルタイムで1週間以上も行う必要がある。
扱いとしてもビスマルクは入手難度が大和や大鳳に匹敵する割りには、性能自体は特化していないという所もある。
あくまで日本艦に比べて性能的な優位性を覆すには至っていない。
現状の艦これは徹底的に「日本」の話である。だからこそ分かりやすくもあり、日本嫌いな人によっては許せないものなのかもしれない。
・まとめ
大まかな流れ
・スト魔女
扶桑(日本)出身のウィッチは印象強いが、日本の存在感は薄い。
戦時パラレルで現代性はほぼない。
パイロットの美少女化。
・ガルパン
変な常識があるものの現代日本パラレル。
戦車はほぼ玩具扱い。
キャラは完全にオリジナル。軍属ではない。
・艦これ
現代か過去かは曖昧。しかし、徹底的に「日本の連合艦隊」を中心としている。
現状、海外艦は日本出身の賠償艦とドイツ艦のみ。
兵器の擬人化。
というもの。
「日本」の扱いが後発になるほど大きくなっているのは間違いないだろう。
これは思想的な話になるが、ガルパンや艦これで右傾化ガーと言い出している人が偏見を持っているのは「戦争嫌悪」ではなく「自衛隊嫌悪」ではないのだろうかと勝手に思っているのだろうかいかがだろうか。
個人的にはスラバヤ沖海戦で美談とされている「電・雷による敵重巡エクセターの乗員救出」などを推すためにも、エクセターを出してほしい気がするんですけどね。
足柄や妙高と好敵手としてお互いに認め合ってる節もありますし、しがらみ自体は一番少ないでしょう。
そんな事を電メインの「艦これなのです」や「水雷戦隊クロニクル」を見て思ったりするのです。これら自体は連載追ってますけど、普通に可愛くて戦闘シーン良いのでいい漫画ですよ。
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