世界の産業史を振り返ると、経済の発展とともに、その国の産業構造は、第一次産業の農業、林業、漁業などから、第二次産業の鉱業、建設業、製造業、そして、第三次産業の金融や流通、飲食などサービス業へとシフトしていきます。
これは、いわば必然の流れで、欧米をはじめ先進国ではすでに、自動車や電機といった製造業より、ITや金融といったサービス業に、産業の中心が移っています。日本においても、産業別の就業者数を見ると、第三次産業に従事する人口は増え続け、すでに約70%に達しています。
日本は、自動車や電機といった製造業が、産業構造のなかで、いまだ大きな影響力をもっています。“モノづくり大国”を自負しています。断るまでもなく、トヨタはその代表選手です。今日発表された、トヨタの14年3月期の決算によると、売上高が25兆6919億円で、営業利益は2兆2921億円です。営業利益は、過去最高を更新しました。私は、トヨタは、まだまだ成長すると思います。
※会見に臨む豊田章男氏
ソフトバンクは、昨日、14年3月期の決算発表をしました。売上高が6兆6666億円で、営業利益は初めて1兆円を超えました。いまや、日本の第3次産業の成長を代表するトップランナーです。日本企業の営業利益ランキングを見ると、ソフトバンクは、1位のトヨタ、2位のNTT(持ち株会社)に次いで、3位です。3社はいずれも、営業利益が1兆円を超えています。ソフトバンク社長の孫正義氏は、会見の席上、こう豪語したのです。「いずれトヨタも抜き、圧倒的な1位になる」と。「トヨタを抜く」などと豪語する人は、日本では孫氏しかいないでしょう。
孫氏のソフトバンク成長戦略のポイントは、資金力を生かしたM&A戦略ですね。今回の業績拡大も、米スプリントの買収効果が大きかった。今後も、米TモバイルUSの買収などを検討しているとされています。
ソフトバンクは、現在のところ、資金調達手段には事欠きません。先日、ソフトバンクが34.4%を出資して筆頭株主を務める中国のアリババ集団は、米市場への上場を申請しました。孫子は、「売るつもりはない」としていますが、かりにも株を売却すれば、多額の資金を調達できることは事実です。つまり、ソフトバンクには、まだまだM&Aによる成長の余地があります。
トヨタは、堅実に「持続的成長」を目指しています。2兆円以上を稼ぐトヨタに対し、ソフトバンクは、現在、その半分の1兆円台に達したにすぎません。M&A戦略で、一気に拡大を目指す第三次産業代表のソフトバンクが、トヨタを抜き、日本一になる日は、くるのでしょうか。つまり、トヨタがソフトバンクに抜かれる日はくるのか。
近い将来、トヨタの営業利益が3兆円台に達することは、不可能ではないと、私は思います。リーマンショック後の体質改善の成果は、むしろこれから現れると思われるからです。そのとき、ソフトバンクは、どこまで躍進しているでしょうか。
営業利益のトップ争いなんていう話は、久し振りに明るい話題じゃないですか。大いに闘ってほしいですよね。
FOLLOW US