消費増税による自治体の税収格差を是正する税制改正で、東海地方の豊かな14市町村で年計約90億円の収入が国に「召し上げられる」ことが総務省の試算でわかった。市町村に代わり国が「地方法人税」の徴収に乗り出すためで、うち愛知県豊田市など4市町村は消費増税のプラス分でも減収を補えそうにない。住民サービスの削減などの検討を迫られそうだ。

 14市町村は、トヨタ自動車の企業城下町の豊田市、トヨタ系の部品メーカーが集積する愛知県刈谷市、世界最大級の火力発電所(中部電力)がある三重県川越町など。いずれも、国からの仕送りにあたる地方交付税をもらわない豊かな「不交付団体」だ。

■税収再分配が目的

 消費税は、税収の一部が人口などに応じて市町村にも配られる。今年4月の消費増税で年約8兆円税収が増えるが、このうち約1兆円を市町村がもらえる見通しだ。ただ、消費増税で税収が増えると豊かな自治体では余分に使えるお金が増え、自治体間で財政の格差が増す可能性がある。

 これを防ぐため、国は昨年末の税制改正で、豊かな自治体の税収をいったん国が取り上げ、豊かでない自治体に配る制度を今年10月から始めることにした。

 具体的には、自治体が企業のもうけにかける法人住民税の一部を国が集める「地方法人税」をつくり、この税収を、地方交付税に充てる制度だ。総務省は、この地方法人税と消費増税の影響がフルに出てくる2016年度の市町村の収入の変化を試算した。

 交付税に頼る市町村は、地方法人税を国に取り上げられても、その分は交付税が増額され、自由に使えるお金は減らない。自由に使えるお金が減るのは、14市町村のような豊かで交付税をもらわない自治体だ。

■豊田市は6億円も

 地方法人税で減収が最も多いのは豊田市で40億7千万円、刈谷市の8億円が続く。ともに今年度に見込む市税収入の4~5%にあたる金額だ。三重県川越町も4千万円税収が減る。

 法人税収が減っても、消費増税による収入増があるため、14市町村の多くは収入全体では増える。だが豊田市、みよし市、大口町、飛島村の4市町村は、地方法人税による減収分が消費増税による収入増より多く、かえって全体の収入が減る。減収額は4市町村合計で約9億円に達する。

 豊田市では差し引きで年6億6600万円の収入減になる見込みで、「一生懸命企業誘致を進めて法人税を増やしてきた自治体が損をするのは残念だ」(財政課)と肩を落とす。道路の建設のペースを落としたり、合併で重複している箱ものを統廃合したりするなど、今後収入減をカバーする方法を検討するという。

■東京都は増収に

 そもそも地方法人税は、消費増税で更に豊かになる東京都から税収を取り上げるために、財務、総務両省がタッグを組んで設けた。ところが、狙い撃ちした東京都(23区含む)は、差し引きで1千億円を超えるプラス。大企業からの税収に頼る愛知県の4市町村は、東京以上に重い負担を背負うことになった。

 総務省によると、差し引きでマイナスになるのは、全国でも20市町村に満たない「少数派」という。(大日向寛文)