集団的自衛権:グレーゾーン先行論浮上 公明に配慮
毎日新聞 2014年05月08日 06時15分
集団的自衛権の行使容認などを巡る「政府方針」の原案を踏まえ、自民、公明両党内で、武力攻撃には至らないものの日本の主権を侵害するおそれがある事例(グレーゾーン)に対処するため、今の憲法解釈の範囲内でできる法整備を先行させるべきだとの意見が出ている。憲法解釈変更を伴う法改正には公明党の反発が見込まれるためだ。自民党には「できるものから先にやった方が得策」(幹部)との声もあるが、安倍晋三首相は行使容認に重ねて意欲を示しており、道筋はまだ見えていない。
自民、公明両党の幹事長・国会対策委員長は7日会談し、集団的自衛権などを巡る今後の日程を協議した。自民党の石破茂幹事長は会談後、記者団に「(論点が)全部いっぺんにできないのは当たり前だ。集団的自衛権以外も詰めていかなければならない部分が多い」と指摘。公明党の漆原良夫国対委員長も「一つのアプローチとして乗れる話だ」と述べ、集団的自衛権行使や海外での武力行使を後回しにする「グレーゾーン先行論」を評価した。
首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は13日にも、行使容認を含む報告書を首相に提出。首相はその後、検討が必要な具体的事例と、見直しが少なくとも18の法律・協定にまたがることなどを指摘した政府方針を与党側に提示し、事例ごとの協議を求める方向だ。しかし米艦防護や臨検、米国に飛ぶミサイルの破壊などの事例で集団的自衛権の行使を容認するかを巡り、公明党との協議は難航必至だ。海外での国際協力のうち、これまでの憲法解釈で禁じてきた「海外での武力行使」に触れかねない法改正を巡っても、議論が紛糾する可能性がある。
一方、沖縄県・尖閣諸島などの離島や公海上での不法行為への対応は憲法解釈の変更を伴わず、緊急性も高い。このため公明党も自衛隊の対処を迅速化する法改正には理解を示しており、菅義偉官房長官も7日の記者会見で「与党のご理解が最優先だ。(グレーゾーン事例の先行協議も)ありうる」と発言。政府方針の提示後、与党が合意できた事例ごとに政府が改正法案をまとめ、個別に閣議決定することも検討している。
しかし首相が、集団的自衛権の行使を認める事例を早く協議するよう求める可能性もあり、公明党幹部は「現行の憲法解釈でできることも多いうえ事例を一つ一つ議論すると相当な時間がかかる」とけん制している。【高本耕太、高橋恵子】