男の拳銃 殺傷能力は基準の5倍5月8日 17時52分
3Dプリンターで作ったとみられる殺傷能力のある拳銃を所持していたとして、川崎市の大学職員の27歳の男が逮捕された事件で、男が所持していた拳銃は殺傷能力を判断する基準の5倍の威力があることが分かり、警察は銃の詳しい構造を調べています。
この事件で逮捕された川崎市高津区に住む湘南工科大学の職員、居村佳知容疑者(27)は、先月、自宅の部屋に樹脂でできた拳銃2丁を隠し持っていたとして銃刀法違反の疑いが持たれています。
居村容疑者はインターネットの動画投稿サイトに、3Dプリンターを使って製造したとみられる拳銃を撮影した動画を投稿していたということです。
このため警察が先月自宅を捜索した結果、樹脂でできた拳銃のようなもの5丁を押収し、このうち2丁は鑑定の結果、殺傷能力があることが確認されたということです。
実弾は見つかっていないということです。
調べに対し居村容疑者は容疑を認め、「拳銃は自宅の3Dプリンターを使って自分で作った。違法とは思わなかった」と供述しているということです。
警察のその後の調べで、2丁の拳銃は厚さ2.5ミリのベニヤ板をそれぞれ11枚と15枚重ねても実弾を貫通させることができ、殺傷能力があると判断する基準の5倍の威力があることが分かりました。
また居村容疑者の自宅から押収された3Dプリンターは価格が10万円以下の外国製の組み立て式のものとみられ、容疑者のパソコンにインターネットを通じて入手したとみられる拳銃の設計図のデータが保存されていました。
警察はこのデータを基に3Dプリンターを使って拳銃を製造したとみて銃の詳しい構造を調べています。
3Dプリンターを使って製造したとみられる拳銃が押収されたのは全国でも初めてだということです。
ツイッターで銃の製造正当化する主張
警察によりますと、居村容疑者がインターネットに投稿したとみられる動画には、容疑者が屋外で拳銃のようなものを撃っている様子が写っています。
この拳銃のようなものは今回、殺傷能力があると鑑定された2丁とは別の回転式のもので、撃っているのは弾丸のない空砲とみられます。
また警察によりますと、居村容疑者はことし1月から2月にかけてインターネットの短文投稿サイトの「ツイッター」に、銃の製造や所持を正当化する書き込みをたびたび行っていたとみられるということです。
その中で居村容疑者は、「私は日本で初めて3Dプリンター製のけん銃を作った張本人。このことを誇りに思う。銃規制は人権の侵害、それに立ち向かい銃刀法を無効化する手段を真っ先に行い、誰でも銃を手に出来る事を社会へ証明した」などと主張していたということです。
データを基に立体物を作り出す
3Dプリンターは、コンピューターの3次元のデータを基に高温で溶かした樹脂や金属の粉を積み重ねて立体的に物を作り出す装置で、印刷するような感覚で複雑な形の部品などを作ることができます。
金型などの型枠を使わずに短い時間で試作品を作ったり部品の数を大幅に減らしたりできることから、企業のものづくりの現場で導入され始めていて、今後もさまざまな分野での活用が期待されています。
また低価格のものでは数万円から家電量販店やインターネットなどで購入できるため、今後の家庭への普及も見込まれています。
海外では問題指摘も
3Dプリンターによる銃の製造を巡ってはこれまでに海外で問題が指摘されていました。
去年、アメリカの団体がプラスチック製の銃を製造できる設計データや画像をインターネットで無料で公開し、3Dプリンターとパソコンを持っていれば製造が可能な状態となっていました。
その後、設計データはサイトから削除されましたが、日本からも含めて多数のアクセスがあったとされています。
このほか、アメリカの企業が3Dプリンターを使って金属製の拳銃を制作し実弾を発射する動画をインターネットで公開した例もあり、アメリカ国内では「3Dプリンターがあれば凶悪犯やテロリストでも銃を作ることが可能になる」という懸念が広がっていました。
専門家「銃製造の規制強化が必要」
拳銃が使われた事件の刑事裁判を手がけるなど銃犯罪に詳しい服部梢弁護士は「今までは銃を所持するということを規制すれば良かったが、3Dプリンターで銃を作れるようになったことで所持の前段階の製造について規制を強めていく必要がある」と指摘しています。
また3Dプリンターについては「銃をも作ることができる機械なので、今後届け出や許可制など3Dプリンターについての規制も検討していく必要があるのではないか」と話しています。
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