地域

[現場から] 土地取得 怖い乱開発 外資の太陽光発電参入に困惑 2014年4月29日

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 中国などに拠点を置く外資系企業が、日本国内の雑種地や山林を買収して太陽光発電に参入するケースが相次いでいる。パネル設置に地元自治体との協議は義務付けられていないため、知らぬ間に発電事業計画が進み、住民とのトラブルに発展した事例もある。固定価格買取制度の期間が終わった後に「パネルが産業廃棄物になるのではないか」といった不安や、生態系への影響を懸念する声も出始めた。(尾原浩子)

・景観、環境「勝手だ」 住民関わる仕組みを

 福島県西郷村北部に広がる130ヘクタールの土地。20年以上前から、ゴルフ場開発のための工事が頓挫したままの状態で放置されている。その一部、50ヘクタールが中国系の企業に買収され、太陽光発電の計画が進められている事実を村が把握したのは昨年暮れのことだ。外資による土地の取得問題を追い続ける研究者からの通報がきっかけだった。

 「荒れたままで現場に立ち入りがしにくいような場所。水が豊富な山林でもある。まさか外資系企業に土地を所有されているとは思ってもみなかった」。村企画財政課の担当者が地図を見ながらため息をつく。調べてみると、中国に拠点を持つ企業に土地の所有権が移転されていることが分かった。

 この中国系企業は、国土利用計画法に義務付けられている一定規模の土地取得の際に、必要な県への届け出を怠っていた。ただ、無届けだったからといって、土地取得が無効になるわ けではない。県は2月に同社を指導し、事務的な手続きはすでに完了したという。

 同村は「事態について、住民はほとんど知らないのではないか。もう手続きは済んでいるだけに規制は難しい」(企画財政課)と、地元と十分な協議がないまま計画が進行することに困惑する。

 大分県由布市湯布院町では、メガソーラーの建設を理由に中国系企業が取得した90ヘクタールの土地に対し、住民の反対運動が起きた。これを受けて同市はメガソーラーの建設に対し、地元住民との協議を義務付ける条例を採択している。

 市に陳情書を出した藤澤桂子さん(61)は、周辺の土地を見に来た外国語を話す会社員に「由布院の景観を壊さないでほしい」と訴えたところ、通訳を通じ「金を出して買ったら、土地を何に使おうが勝手だ」と冷たく返答され、相手にもされなかったという。

 「エネルギー自給や地域貢献の観点は一切ない。利益だけを求める企業参入に歯止めをかけるルールが国レベルで必要だ」と藤澤さんは実感する。

 政府が2012年に始めた太陽光などの再生可能エネルギーの固定価格買取制度。買い取り価格は、世界トップ級だ。外資系企業が、この制度の高額な売電利益を狙って日本の太陽光市場に進出する例は各地であり、トラブルが生じているケースもある。

 360ヘクタールの森林を太陽光発電を目的に中国系企業が買収する計画が浮上していた北海道広尾町。同町森林組合は急きょ、土地ではなく、木の所有者に掛け合い、木を伐採させない法手続きを取り、結果的に土地買収を阻止した。

 同組合の久保善久組合長は「仮に木を伐採しパネルを設置していたら、シマフクロウもいる豊かな生態系が破壊され、地域の農林水産業に大きな影響が出る。メガソーラーの建設には地元住民がもっと関わる仕組みが重要ではないか」と指摘する。

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