お金を引きよせる人の「手みやげ」と「気づかい」は何がちがうか
『100億円を引きよせる 手みやげ』(越石一彦著、総合法令出版)の著者は、証券会社の営業担当として、おもに富裕層であるクライアントの資産運用に対する相談に乗ってきたという経歴の持ち主。仕事を進めていく中で、クライアントの心の壁を取り去るために大切なのが「気づかい」であり、それを効果的に伝える方法こそ「手みやげ」だということに気づいたのだそうです。
本書ではそんな観点から、人の心を動かす手みやげを紹介しています。しかも「忙しい人に、どうしても会いたいとき」「飲み過ぎと気にする人に会うとき」「特別な手みやげを渡したいとき」など目的に応じて分けられ、それぞれの手みやげにまつわる著者のエピソードが書かれているので、楽しく読み進められるはず。
ただし、この記事で手みやげをガイドブック的に紹介するのは困難ですし、それ以上にアピールすべき点があるとも感じています。それは、本書は単なる「手みやげ紹介本」ではなく「気づかい」をテーマにした書籍だということ。そこできょうはもうひとつの重要なトピックであるコラムに焦点を当ててみたいと思います。
気づかいの9割は相手の話を聞くこと
最適な手みやげを選ぶためにはいくつかポイントがあり、その最たるものは「相手の話を聞く」ということ。なぜなら、相手の話の中には、その人の好みや困りごとなど、なにかしらのヒントが隠れているから。それらを聞き漏らさないためにも、まずは質問をして、「聞く」ことに集中すべきだというわけです。
たとえば著者はあるとき、お得意様が「駅弁は冷たくておいしくない」と口にしたのをキャッチし、「それなら、温かくて、おいしいものを持って行ってさしあげよう」と思ったのだとか。気づかいとは、つまりこういうことです。
相手はなにを求めているのか、どんなことで困っているのか。相手の言葉の中から探り出して解決してあげる。そんな気づかいができれば、手みやげを渡す、渡さないにかかわらず、相手から信頼されるようになる。つまり気づかいの9割は、相手の話を9割聞くことから生まれるということ。(70ページより)
落ち込んだときほど感謝の気持ちを伝える
商談がうまくいかなかったり、期待する結果が出なかったときは、相手や自分に対して失望の気持ちを抱いてしまっても当然。しかし相手は、うまくいかなかったときにこそあなたの反応を見ているものだといいます。つまり、落胆する気持ちをぐっとこらえ、相手への気づかいを見せることができるかどうか。そこが本当の気づかいであり、お金を引きよせる人になれるかどうかの分かれ目。
そして商談がまとまらなかったとしても、意識すべきは「相手が貴重な時間を割いて商談に臨んでくれた」という事実に感謝すること。気づかいの積み重ねが自分自身を「心から気づかいができる人」に変えていき、それは必ず相手の印象に残る。するといつか、「次にお願いできることがあったら、あの人に頼もう」と優先的に扱ってもらえるようになるということです。(98ページより)
他部署の人ほど丁寧に接する
お客様や大切な人に対してだけでなく、手みやげは同じ職場で働いている人にとっても有効なアイテム。たとえば著者は証券会社に勤務していた時代、サポートをしてくださる事務職の人たちには特に気を遣っていたのだとか。理由は、電話の取り次ぎひとつにしても、日ごろからコミュニケーションを取れているかいないかによって、対応のスピードが違ってくるから。
仕事にはスピードが求められる場面も少なくないため、日ごろから事務職の人と密にコミュニケーションをとり、気づかいをしておくと、いざというとき力になってくれるというわけです。
もし事務職の人たちに、普段から「営業職が食わせてやっているんだ」といったぞんざいな態度を取っていたとしたら、気づかいはしてもらえなかったかもしれない。そんな著者の感じ方は、とても大切なことであるように思えます。他部署の人こそ、丁寧に接することで、仕事をスムーズにすることができるという考え方です。(121ページより)
関係づくりには手作り感満載の「手みやげ」
お金をかけなくても気持ちが伝わる手みやげとして、著者がおすすめしているのは「葉っぱ」。有名な観光地で拾った紅葉などを持ち帰り、押し花のように乾燥させ、「お忙しい社長の代わりに、がんばって登らないと手に入らないところまで行って拾ってきた葉っぱです」と言葉を添えてプレゼントするのがいいというのです。
意外な気もしますが、自分自身がリフレッシュでき、お客様からも喜んでもらえるので一石二鳥。特にお客様と親しくなってきたころ、お財布が厳しいときの方法としては最適だといいます。(154ページより)
たしかにタイトルは、少し誤解されやすいかもしれません、しかし、このコラム部分がそうであるように、内容は気づかいに満ちています。読んでいて気持ちがいいのは、きっとそのせい。なお「はじめに」に記されている、著者が意外なプレゼントによって2億円の取引をものにしたエピソードも必読です。
(印南敦史)
- 100億円を引きよせる 手みやげ
- 越石 一彦|総合法令出版