Q1. ビットコインって何?
昨年(2013年)末ごろより世間を賑わしてきた「ビットコイン」ですが、ひと言で表すなら、インターネットを使った「P2P デジタル通貨」です。サトシ・ナカモトを名乗る人物が、暗号技術に興味をもつ人々が集まるメーリングリストに2008年に投稿したアイデアがきっかけとなってシステムがつくられ、2009年に実際に動きだしました。
日本では昨年末の価格の高騰や、今年に入ってからの大手取引所の経営破綻のニュースなどを通して知るようになった人が多いと思いますが、世界では日常的な買い物の支払いや、銀行預金に代わる資産の持ち方として徐々に使われてきています。
「P2P」は、インターネットを応用したシステムを作るための考え方のひとつです。ピア・ツー・ピア(Peer-to-Peer)の略で、「ピア (peer)」とは対等な相手という意味です。参加するすべてのコンピュータが対等に同じ役割を担い、「どこにも中心がない」構造を基本とします。P2Pの考え方でインターネットの応用システムをつくると、障害に強い、しなやかなシステムになります。ただし、後述するように、ビットコインの場合はP2Pの考え方が崩れた設計になっており、そこに弱点があります。
「デジタル通貨」は、インターネットに代表されるデジタル・コミュニケーション技術を使ってつくられた、私たちがふだん使っているお金のかわりになる通貨です。「仮想通貨」と呼ばれることも多いのですが、通貨はそもそもすべて、物理的な存在というより社会における取り決めであるという理由で「仮想」のものであり、正確な呼び方ではありません。
Q2. 値段の上下はどうやって決まる?
お金は、それそのものが商品として扱われることがあり、別の種類のお金で買うことができます。ビットコインも例外ではなく、お金で買えます。ただし、日本円などで固定された価格をもつものではなく、現代の各国の法定貨幣がたがいにそうであるように、交換レートが変化し、値動きがあります。レートは安定せず、当初は0円といえたものが、2013年11月末には1BTC(BTCはビットコインの単位)の価格が10万円を超えました。こうした値段の上下は、市場原理で決まります。すなわち、買いたい人が多くなると値が上がり、売りたい人が多くなると値が下がります。
買いたい人が多くなる要因には、たとえば、自国の通貨への不信があります。2013年初頭のキプロスの経済危機のとき、多くの人々がBTCを買い求めたといいます。それは、預金が封鎖されたり資金移動が制限されたりといった事態が起き、自国の通貨が信用できなくなる状況が生まれ、自分の資産をBTCに換えて持っておくという選択が、人々の「損をしたくない」という気持ちと合致したためです。
一方、売りたい人が多くなる要因には、ビットコインがシステムとして信用を失うことがあげられます。たとえば、持っていても実際には支払いに使えない、といった状況が生じると、支払いに使おうと考える人が減り、ほかの貨幣に換えておこうと考える人が多くなっていきます。たとえば、政府の信認を得られなかったり、あるいは、ソフトウェアのバグが見つかったり、サイバー攻撃を受けたり、といったことで、ビットコインのシステムは打撃を受けることになります。
欠陥通貨? それともイノベーション? 2013年後半から相場の急騰で注目を集め、大手取引所の破綻後もホットな開発の話題が続くビットコイン。その将来はどこに向かうのか。国の管理を超える大きな可能性から、その広がりが招く意外な陥穽まで、デジタル通貨の専門家が答える
Q3. 突然使えなくならない?
今年2月末にビットコインの大手取引所が経営破綻し、先日、東京地裁により破産手続きの開始が決定されました。それでもビットコインは世界で使い続けられていますし、日本でも終わってしまったわけではなく、日本初のビットコインATMの設置が話題にのぼっていたりします。そのことを、疑問に感じている人もいるでしょう。
実は、ビットコインの取引所、あるいは交換所と呼ばれるものは、通常の貨幣でいう「外貨両替所」に当たるもので、BTC自体を商品として売買するためのサービスです。そういうものがひとつ無くなっても、ビットコインの通貨としての機能に影響はありません。もちろん、通貨は「それが通貨として受け取ってもらえる」という信用があって初めて成り立つものですから、大手取引所の破産によってビットコインのシステム全体に対する信用が打撃を受けたことには間違いありません。
あの事件を受け、日本の国会では議員による質問があり、政府は 3月に「回答書」を閣議決定し、その中で、ビットコインは通貨でも証券でもないという認識を明らかにしました。銀行や証券会社による通貨・証券としての取り扱いを禁止する解釈になりますが、一般の支払いの方法として禁止されたわけではありません。もし政府が禁止すれば、もちろん、私たちは日常の支払いにビットコインを使うことはできなくなります。しかし、私は禁止は得策ではないと思います。禁止すれば、違法な、アンダーグラウンドの支払い方法として定着してしまうからです。
ビットコインはコンピュータ(スマートフォンを含む)を使った支払いの仕組みですから、むしろ、ユーザにとって問題なのは、ビットコインのアプリが使えなくなってしまうことです。2014年4月現在、iPhoneなどを開発・販売するアップル社は、ビットコインによる支払いの機能を含むアプリをAppStoreから除外しています。これは、ある意味、法律よりも厳しく、ビットコインの利用可能性を制限する措置です。
とはいえ、P2Pの考え方で作られているものを、完全に停止させることは大変、難しいと言えます。誰もが同じ役割を担うことができるP2Pの仕組みでは、終わったかのように見えるものでも、誰もが再び始め直すことができるからです。