南シナ海:中国艦船とベトナム海洋警察の艦船が衝突

毎日新聞 2014年05月07日 21時45分(最終更新 05月08日 01時09分)

ベトナム側艦船(右)に放水する中国側の船=南シナ海のパラセル諸島付近で2014年5月7日、AP(ベトナム海洋警察提供)
ベトナム側艦船(右)に放水する中国側の船=南シナ海のパラセル諸島付近で2014年5月7日、AP(ベトナム海洋警察提供)

 【北京・石原聖】南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島周辺で7日、掘削の準備をしていた中国の海底油田掘削装置(オイルリグ)を護衛していた中国艦船と、掘削を阻止しようとしたベトナム海洋警察の艦船が衝突した。ロイター通信などが伝えた。中国・ベトナム両政府は互いに相手側を非難、銃撃などはなかったが、ベトナム側の船員6人が負傷、数隻が損傷したとみられる。

 ベトナム政府によると、衝突した海域はベトナム本土から220キロの排他的経済水域内。AFP通信などによると、中国とベトナム側の艦船は今月3日以降、複数回にわたって衝突し、中国側が放水でベトナム艦船の接近を阻止した。AP通信などによると、現場海域にはベトナム海軍と海洋警察の計29隻が展開する一方、中国側の艦船80隻以上が警戒にあたっており、緊張が高まっている。ベトナム政府は「中国の船舶が意図的に衝突してきた。体当たりをやめなければ報復する」と強硬姿勢を示した。

 中国海事局は3日、中国海洋石油総公司(CNOOC)がパラセル諸島の付近で2日から8月15日まで海底資源探索を実施すると発表。5日には掘削装置周辺3カイリ以内への立ち入りを禁止する通告を出していた。ベトナム外務省報道官は声明で「許可のない活動は違法」と非難。米国務省報道官も「挑発的」と中国を非難していた。

 中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)副報道局長は7日の定例会見で「西沙に争いはなく、ベトナム側は中国企業の正常な作業を妨害している」と反発した。

 オイルリグは「海洋石油981」と呼ばれ、中国海洋石油が約750億円を投じて建造し、2011年に完成。海上移動が可能なことから「石油空母」と称される。

 今年は中国がパラセル諸島を実効支配するきっかけとなった西沙諸島海戦から40年、中越戦争から35年という節目のため反中感情が高まっていた。一方、中国の専門家が「ベトナムが西沙を釣魚島(尖閣諸島の中国名)のように争いのある国際問題にして突破口を開くことは可能だ」と話すなど、中国側はベトナムに対し警戒心をあらわにしていた。

 また、7日、スプラトリー(中国名・南沙)諸島で、フィリピン海洋警察が亀を密漁していた中国海南省の漁船を拿捕(だほ)した。中国・フィリピン両政府が明らかにした。

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