任天堂:今期純利益見通しが予想上回る、WiiU回復見込む
5月7日(ブルームバーグ):ゲーム機世界最大手、任天堂 が7日発表した今期(2015年3月期)の連結純利益見通しは200億円となり、市場予想を上回った。人気キャラクターの登場するゲームソフト投入により据え置き型ゲーム機「Wii(ウィー)U」の販売回復を見込む。
ブルームバーグ・データによるアナリスト15人の純利益予想は160億円だった。会社側は営業利益400億円(市場予想235億円)、売上高5900億円(同6013億円)と見込む。前期は純損益が232億円の赤字、営業損益は464億円の赤字で3期連続の赤字だった。
スマートフォン向けゲームの影響で業界構造が変化し、競合他社も新ゲーム機を投入する中、任天堂は12年に投入したUの不振に苦しんでいる。今期は「マリオカート8」など新作ソフトに反転を期待している。市場にはスマホ向けゲーム投入により収益改善を求める声もあるが、任天堂はソフト供給は自社のゲーム機に限る姿勢を崩していない。
岩田聡社長はこの日の記者会見で、スマホなどスマートデバイスの普及と任天堂の不調は単純には結び付けられないとした上で、そうした論調には違和感があると述べた。また、Uについては強力なゲームソフトが投入されるため販売台数が前期を下回ることはないとの見通しを示した。6月に開かれる米ゲーム見本市「E3」でUの機能を活かしたゲームの事例を見せるとしたが、新型ゲーム機を出すことはないとした。
「責任を痛感」さらに岩田社長は、前期の業績につてい結果が出せず「責任を痛感している」と述べた。ただ、責任を果たすのは辞めることではなくビジネスの勢いを回復させて安定的に利益を出すことだとし、続投意向を示した。
1-3月期は純損失334億円(市場予想279億円)、営業損失448億円(同342億円)、売上高726億円(同861億円)だった。
任天堂の発表資料によると、15年3月期のゲーム機とソフトの販売はUハード360万台(前期272万台)、Uソフト2000万本(前期1886万本)、3DSハード1200万台(同1224万台)、3DSソフト6700万本(同6789万本)の見込みだ。
エース経済研究所の安田秀樹アナリストは電話取材に「コスト削減を進めるため利益が出る。3DSが主に利益をけん引する」と述べるとともに、Uは失敗に終わったが3DSで稼いで新規事業が始まるのを待つことになるだろうと語った。
楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストは、オープン化の時代にあって任天堂という閉ざされた世界のビジネス基盤が崩れているとし、「短期的なリバウンドはあり得るが、長期的に厳しいという見方を変える必要はない」と語った。
新ウェブサービススマホ向けのゲーム配信について、任天堂は一貫して否定的な姿勢を崩していない。岩田社長は1月の経営方針説明会で、ゲーム専用機事業を「経営の中核」として維持すると明言。顧客との関係強化を目的にするアプリにゲームを利用する可能性は認めたものの、本格的なゲーム配信は否定した。
一方、投資家やアナリストの一部はスマホやタブレット向けのゲーム提供を求めており、任天堂の一部株主のアドバイザーを務めるオアシス・マネジメントのセス・フィッシャー最高投資責任者(CIO)は2月、岩田社長に書簡を送った。
岩田社長は7日の会見で、人気ゲーム「マリオカート」の順位や友達の状態が分かるようなウェブサービスを用意していることを明らかにしたが、スマートデバイス向けのアプリではないと話した。
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更新日時: 2014/05/07 18:58 JST