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下北の核燃基地 原発政策の矛盾背負う


 青森県下北半島には核燃料サイクル施設が集中する。原子力を効率的に生かす「夢のエネルギー」開発のための基地。しかし、サイクル計画は事実上破綻した。

 政府が閣議決定したエネルギー基本計画には、現実離れした内容が見られた。それが核燃サイクルだ。使用済み燃料再利用の道筋は見えない。しかも、兵器転用が絡む核管理の問題でも国際的な疑念が強まっている。将来へのツケを積み増す計画は見直すべきだろう。

 基本計画は核燃サイクルについて「再処理やプルサーマルを推進」と明記。下北の六ケ所村では、その要となる再処理工場が今年10月の完成、来年3月までの開始を目指している。

 再処理して取り出すプルトニウムは、サイクルのもう一方の要である高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)で使うはずだった。しかし、重大事故で運転再開がストップ。基本計画は「もんじゅ」の主な役割を「核のごみ減容化の研究拠点」に転換した。

 原爆転用が可能なプルトニウム。日本は既に数千発分の量を保有し、国際社会から厳しい目を向けられている。そんな中で再処理を進めればさらに増える。

 何とか減らさなくてはならない。そこで期待されるのが、プルトニウムを加工し、一般の原発で再利用するプルサーマル。しかし、全てのプルサーマル再稼働は非現実的だ。このため、再処理の縮小稼働論も出ているという。

 状況を考えれば、核燃サイクルは縮小、撤退すべきだろう。ただ、事情は簡単ではない。青森県と六ケ所村、日本原燃が交わす覚書では、サイクル継続が困難になった場合、使用済み燃料を搬出するという対応が記されている。引くのも進むのも難しい状況に置かれている。

 そんな中で、中部電力浜岡原発のプルサーマル「白紙」を表明した川勝平太静岡県知事の発言が注目される。六ケ所村の再処理工場の保管場所が飽和状態になっていることを指摘。「核のごみは出た場所で貯蔵するのが筋」として、各原発での乾式貯蔵による保管を説く。一考に値する提言だ。

 六ケ所村では再処理工場に使用済み燃料が大量にあるほか、貯蔵施設には英仏で処理した高レベル放射性廃棄物も運び込まれている。プルサーマルで使うMOX燃料工場も建設中。むつ市では中間貯蔵施設が来年操業開始予定だ。

 下北半島には原発も立地。核燃施設を含め、活断層や火山の影響を不安視する声もある。原発の課題が集積し、矛盾も背負う地域に対して、国民は一層の関心を高める必要があるだろう。

(2014.5.6)

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