中国の電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ・ホールディング)が6日、待望の新規株式公開(IPO)計画を発表した。世界最大規模になるかもしれない注目のIPOだ。これを受けて投資家は、同社株を購入するか否かを決めなくてはならない。
アリババ株は高額になろう。アナリストたちは、アリババの時価総額が1360億ドル〜2500億ドル(13兆8000億円〜25兆4000億円)になるとみている。この予想下限の1360億ドルでも交流サイト(SNS)大手フェイスブック、上限の2500億ドルにでもなれば、小売り大手ウォルマート・ストアーズのそれに匹敵する。
それでも、アリババの規模、収益性、成長の見込みが大きいだけに、お得な買い物になるかもしれない。同社は世界で群を抜く最大のオンライン市場を運営し、年間2億3100万人のアクティブバイヤーを擁する。2013年には、およそ2480億ドル相当の商品が同社サイトを通じて取引された。フォレスター・リサーチによれば、この取扱高はアマゾン・ドット・コムとイーベイの合計をさらに3分の1上回る。
簡単に言うと、アリババへの投資は、中国に賭けること、そしてその継続的な急成長に賭けることを意味する。アリババは中国電子商取引市場を支配しており、CLSAリサーチによれば、昨年の市場シェアは約80%に達した。同社最大サイトの「淘宝網(タオバオ)」は、800万の業者から何億もの商品が集められた自由参加型の市場。「天猫(Tモ-ル)」はアップル、ナイキ、ギャップなどの商品が販売される、より高級志向のサイトだ。
アリババは販売手数料と、もっと目立ちたい業者から受け取る広告料金から収益を上げている。同社の売上高は昨年、前年比62%増の80億ドルに達した。これはフェイスブックとほぼ同等の売上高だが、アリババの伸びのペースは同社より速い。昨年のフェイスブックの伸びは55%だった。
一方、アリババの経費は比較的少ない。なぜなら、アリババはイーベイと同様、市場を他者に提供するだけで、自ら在庫を持たないからだ。結果として、アリババは売り上げ1ドルのうち50セントを営業利益として獲得する。これはフェイスブックの営業利益率37%を上回るほか、グーグルの28%の約2倍に及ぶ。フェイスブックもグーグルも米国の大手企業としては営業利益率がかなり高いと考えられているにもかかわらず、である。
その上、アリババの営業利益率は11年の20%から2倍以上に伸びている。増える売り上げからより多くの利益を出していることは、アリババが中国オンラインショッピング市場の独占的な地位からどれほどの恩恵を受けているかを浮き彫りにする。
アリババはまた、並外れた成長の見通しを持つという見方も多い。このため、現在の利益1ドルに対してそれ以上を払うことを正当化する投資家は少なくないだろう。中国経済は米国経済の3倍のペースで成長している。中国のインターネット利用率は46%と、米国の82%と比べると少ない。また中国では小売りの選択肢がかなり少ないため、多くがネット購入に走っている。
この胸躍る現状と将来性のため、潜在的な投資家たちはかなりの支払い負担を強いられるだろう。バーンスタイン・アンド・カンパニーのアナリスト、Carlos Kirjner氏は、アリババの価値が最大2500億ドルにも膨らむと述べる。これは同社の昨年の利益の約70倍にあたる。ちなみにグーグル株式は利益の約30倍で取引されている。
警戒すべき兆候もある。アリババの勢いは、猛追するライバルがシェア切り崩しに動くにつれ、衰える可能性がある。中国第2のオンラインショッピング会社で、家電専門店の京東商城(JD.com)は中国の中間層でファンを獲得している。同社は、米国でアマゾンと同様、配送サービスを提供しているからだ。アリババの収益性が京東商城を大きく上回るのは、アリババ自らが在庫を持たず、外部の配送サービスと提携しているからだ。だが京東商城の存在は、顧客サービス向上のためにもっと投資するようアリババに圧力をかける可能性がある。
より大きな脅威は、中国のソーシャルネットワーキング大手テンセント・ホールディングス(騰訊)だ。同社は人気のメッセージサービス「微信(ウイチャット)」を持つ。騰訊は微信と人気のオンライン決済プラットフォーム「財付通(テンペイ)」を通じて、電子商取引事業を拡大している。財付通は米ペイパルのようなアリババの関連サービス、「支付宝(アリペイ)」のライバルだ。
これにより、騰訊はスマートフォン上で、とりわけ脅威になっている。中国の調査会社、上海睿析科技(レッドテック・アドバイザーズ)が1月に販売業者を対象に調査したところ、アリババの販売業者の3分の1近くが微信にも店舗を設けていることが分かった。微信は業者を獲得するため、手数料を無料にしている。騰訊は今年3月、京東商城の15%の株式を取得することで合意した。アリババの淘宝アプリはスマホで人気が高いが、アリババのメッセージアプリは微信から大きく出遅れている。
レッドテックの調査からは、販売業者がアリババの広告費の高さに不満を抱いていることもうかがえた。これはアリババが広告費を上げたり、利益率を伸ばしたりするのを妨げる可能性がある。
もう1つの懸念は、アリババのコーポレートガバナンス(企業統治)だ。アリババはニューヨークで上場することを選んだが、その理由の1つは、香港の規制を受けると、同社のパートナーシップ構造の維持が困難になるからだった。創業者の馬雲(ジャック・マー)氏とその他何人かの幹部(パートナー)が取締役の半数以上を任命できるという構造だ。パートナーたちの持つ株式が全体の13%にしかならないにもかかわらず、である。
アリババは11年、アリペイの所有権を馬氏が支配する外部の企業に移した。この動きはヤフー株に衝撃を与えた。ヤフーはアリババの24%の株式を持つが、この動きを知らなかったと主張した。双方はアリペイの価値が上がった際にヤフーが得る利益を制限することで合意し、意見の相違を解消した。関係者によれば、アリババとアリペイの間で、新たな直接的な所有契約について話し合いがなされているという。
一方、これら全ての原動力は、つまるところ中国経済の奇跡なのだが、それ自体に疑念もある。専門家の中には、この成長が投資バブルによって下支えされてきたとし、このバブルは破裂する可能性があると指摘する向きもある。
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