このコーナーでは、「Pen +的チュートリアル」と題して、Creative Cloud の最新ツールの使い方を、誰もがやってみたくなるようにわかりやすく解説します。第2回は、第1回の「スペシウム光線の作り方」に引き続き、レタッチャーの畠山祐二さんによる、Photoshop CC を使った、バルタン星人の「分身の術」です。
今回は、前回のウルトラマンとゴモラのような素材写真はないので、背景用の写真を撮り下ろすことに。畠山さんは東京の高層ビル群をバックにバルタン星人を分身させるつもりで湾岸エリアを中心にロケハン。しかしバルタン星人の身長はミクロから最大50メートルで、100メートル超のものが珍しくない現代の高層ビルを後ろにするといまいち大きさが引き立たないことがわかり、開発中の有明近辺で場所を決定。
バルタン星人の足元を隠すことで遠近感を演出できるように、手前に盛り土がある場所をチョイス。ショベルカーがバルタン星人の巨大さを実感させるちょうどよい小道具となっている。ドラマチックな画にしたいということで背景は夕方に撮影したそうだが、バルタン星人のフィギュアをスタジオで撮影する際にも、合成した際に違和感がないように、右横から光が当たるようにライティングしている。
使用したバルタン星人のフィギュアは、実像用と分身の残像用にひとつずつ。分身は6体だが、ひとつのフィギュアのポーズを変えて撮影し、後で重ねている。当然、重ねてみた段階で「もうちょっとこのバルタンのハサミを上にしたい」などということになるが、いちいち撮り直すのは手間がかかる。
そこで役立つのツールが、「パペットワープ」。これは人物でも動物でも、人形のように自由にポーズを変えることができる機能だ。このバルタン星人のフィギュアはリアルに動かせるアクションフィギュアなのでポーズの微調整に使用しているが、たとえ不可動フィギュアの写真でも、パペットワープを使えば可動フィギュアのように動かすことができる。
なお、Photoshop CS5から実装された「パペットワープ」だが、Photoshop CCでは、さらなる高速パフォーマンスを可能にし、作業時間の短縮を実現している。「パペットワープ」だけでなく「スマートシャープ」や「ゆがみツール」やなど、主要ツールを使ったときのレスポンスも大幅に向上。作業時間の短縮に加え、サイズの大きなデータでも結果が瞬時に反映される。「レタッチャーにとっては、本当に助かりますね」と畠山さん。
分身用のフィギュアのキリヌキ写真レイヤーは、「イメージ」メニュー→「色調補正」→「色相・彩度」を選択し、目以外の部分の青みを強調して単色に近いブルーに変換。
分身用に撮影したフィギュアは夜間の登場シーンをイメージしたカラーリングのもので、実像用のフィギュアより青みを帯びている。しかし写真上では両者の違いがわかりにくかったため、より青みを強調。さらに分身用のバルタン星人は不透明度を調節して背景が透けるように半透明にする。そのほうが次の工程のぼかしを行った際、背景によくなじむからだ。
「フィルタ」メニュー→「ぼかし」→「ぼかし(放射状)」をクリック。方法で回転を選ぶと、レイヤー上の任意の位置を中心に回転する ようなぼかし効果が得られる。まずはぼかし量を5にしたレイヤーを保存。
ぼかし量を上げていくとどんどんブレた感じになっていく。ぼかし量10 のレイヤーを保存。
ぼかしなし(ぼかし量0)、ぼかし量5、ぼかし量10 の各レイヤーについて、ブラシを用いて効果を出したくない部分を消す。3つのレイヤーを重ねると、動きにリアリティのある画になった。これを他のポーズも同様に行っていく。
「ぼかし(放射状)」は、カメラをズームしたり、回転させたりしたような効果を出せるフィルター。これを使ってブラすことで、バルタン星人の分身体が弧を描くように動くさまを演出できる。畠山さんは6体の分身体について、それぞれぼかしなし、ぼかし量5、ぼかし量10の3パターンを作って重ねている。ここでポイントなのは、各パターンのレイヤーにブラシをかけて部分的に消していること。こうすることで、ブレの大きいところと小さいところの差をつけている。
「均一にブレているのではリアリティがありません。上の写真の場合は、動きの中心に近い左肩はあまりブラさず、中心から遠いハサミの部分はしっかりブラしたい。そこでこのような手法を使いました」。ちなみに、ぼかしなしのレイヤーの不透明度は70%だが、ぼかし5と10 のレイヤーの不透明度は50%と、不透明度も変えている。リアリティのある表現を追求するプロならではのこだわりだ。
覚えておきたいのは、「パペットワープ」や「ぼかし(放射状)」の機能を使うときに、元画像を「スマートオブジェクト」に変換しておくこと。元画像のデータを保持したまま、反映結果を参照できるので、納得いくまで何度もやり直しができるのだ。もちろん作業効率も、大幅アップ。
すべてのレイヤーを重ねる。最後にトーンカーブを用いて実像バルタンの目の部分を光らせ、ノスタルジックな雰囲気が出るように全体の色調を調整して完成。
制作時間は、背景やフィギュアの撮影も含めて約2日とのこと。
レタッチ自体の作業時間は10時間ほどですが、実像と分身の残像合わせて7体のバルタン星人を切り抜かなければならなかったので、半分近くはその地味な作業に費やしています。内容的には、それぞれの不透明度とぼかし量の最適な値をつかむまでが一番苦心したところですね」。
完成した作品はさすがのクオリティ。「分身の術」を使い、1人でエグザイル的な動きを披露してウルトラマンを幻惑するバルタン星人からは、「フォーッフォッフォッフォッ……」という、挑発的な声までが聞こえてくるようだ!
スマートオブジェクトなど、Photoshop CCの使い方を見る
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『ウルトラマン』第2 話「侵略者を撃て」
核兵器実験によって母星が滅びてしまったバルタン星人が地球に来訪し、科学センターを占拠。科学特捜隊の交渉も虚しく、地球侵略を宣言するバルタン星人だったが、ウルトラマンのスペシウム光線によって撃退される。のちのウルトラシリーズに何度も登場し、ウルトラ怪獣を代表するキャラクターが初登場する記念すべきエピソードだ。気になる方は、新規リマスター高画質HD のブルーレイで、『ウルトラマン』の「侵略者を撃て」をチェック。 詳しくはこちら
レタッチャー
● 1981 年秋田県生まれ。2004 年博報堂フォトクリエイティブ(現:博報堂プロダクツ)入社。アートディレクター、フォトグラファーと組み、クオリティの高い広告写真を数多く手がける。主な受賞歴:交通広告グランプリ、広告電通賞最優秀賞、日経産業新聞広告賞3回、ADC賞3回、その他。
フィギュア協力/メディコム・トイ
文/和田 達彦
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