(沢嶋)
明治40年日本で最初の美人コンテストが行われた。
私は鮮明な映像記録を行い印象深い取材となった。
美人コンテストから3年後今度は日本一の美男子を決めるコンテストが開催される。
一体どんな競い合いだったのか。
やはり好奇心に駆られて明治時代へタイムワープした
え〜アブソリュートポジションN106W312E387S503ポジション確認。
アブソリュートタイムB0938546年59時38分52秒。
西暦変換しますと1910年9月22日12時57分04秒。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー436547これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時代を超えて名も無き人々を記録していくタイムスクープハンターである。
世の中は熱狂的ともいえる美男子探しに沸いていた
彼もまた美男子探しのブームに飛び込んだ一人である。
以前美人コンテストの時に取材をさせて頂いたあの写真師である。
日本で最初の美男子コンテスト。
取材の手始めに私は再び小林写真館を訪れる事にした
え〜この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
すみません。
(小林)ああどうぞ。
この年の秋新聞「毎日電報」に美男子を募集する告知が掲載される
美人コンテストの時と同じく写真だけによる審査であった。
写真師カメラマンとしてはまたとない腕の見せどころとなる
でね私は…
写真師小林の目が輝く。
まずは幅広い人脈を持つ妓楼の女主人に助けを借りる事にした
そんな事言われてもね…いやいやいや美男子といっても…う〜ん…。
そうねえ…。
(とみ)ごめんくださいな。
(小林)はい。
(とみ)先生。
女主人とみが店の女性を連れてやって来た。
お薦めの美男子がいるという
(小林)それでかまいません。
是非教えて下さい。
この子その学生さんにほの字なんですよ。
やめて下さい。
分かりました。
早速小林たちはその美男子を求めて路面電車の停留所で待つ事にした。
果たしてうわさの美男子は現れるのか?
どこですか?
(桜子)学生の眼鏡かけてる方ですよ。
(小林)あの方が美男子?あんたああいうのが好みなの?
(桜子)はい。
とても優しそうじゃないですか。
ウフフ…。
(とみ)そう。
どうです?先生。
えっ?いやあのちょっとね…。
「ちょっと」とは何ですか。
せっかくご紹介しましたのに。
いやあのねあの方にはあの方の魅力があると思うんですが…それをちゃんと説明して頂かないと。
好みのタイプは人それぞれ。
なかなか難しい
そう簡単に見つかるわけ…。
だがその時だった!
え?どこですか?あの眼鏡の方の隣。
彼ですよ!ほらまさに…彼ですよ!ちょいといってきます。
まさに小林が理想とする男性だった
ごめんなさい。
はい?え?僕ですか?僕ですか?そうです。
この美男子募集の記事。
私の見るところ…いや美男子だなんてそんな事ないです。
謙遜しないで下さい。
謙遜しないで。
あのねいろんな人の写真を撮ってきた私が言うんですから間違いありません。
いや他の人にね写真を撮られる前に僕は君の写真を撮らせて頂きたいんだ。
お願いします。
ちょっとぐらいなら…ちょっとだけなら。
交渉が成立。
すぐさま撮影に入る。
柳原健太郎19歳。
細身の体で好青年だ。
小林は彼に着物を着せる事にした。
繊細で上品なイメージ。
写真のテーマは「伝統的な男性の美しさ」
(シャッターを切る音)うん!いやいい写真が撮れました。
どうもありがとうございました。
お気をつけて。
手応えは十分にある。
この写真で上位入選を狙えると小林は確信していた。
現像した写真をすぐに「毎日電報」へ送付する。
募集告知から1週間後他にはどのような写真が応募されているのだろうか。
気になった私は主催者の「毎日電報」を訪ねた
え〜ここがですね美男子コンテストを主催している「毎日電報」ですね。
今担当者の方が届いた写真を仕分けしています。
ちょっと入ってみましょう。
すみません。
ええどうぞ。
眼鏡をかけて確かに色白で品のある顔だちといったところでしょうかね。
ありがとうございます。
あこちらの方も割と細身で色白で先ほどの方と同じような印象ですね。
結構…どうですか?え?そうなんですか?こういう…
どうやら新聞社が求める美男子と応募者の間にはずれがあるようだ
え〜本部本部こちら沢嶋応答願います。
(古橋ミナミ)はいタイムナビゲーターの古橋です。
今美男子コンテストの取材中なんですが明治時代の美男子のイメージがどうやらこれまでとは大きく変わっているようなんです。
はい。
それで江戸時代の美男子とはどういう人の事を言ってたのかちょっと知りたいんですけど。
江戸時代の美男子ですね。
ちょっとこちらの浮世絵を見て下さい。
う〜ん…。
女性が2人描かれてますね。
沢嶋さん右の方は男性なんです。
え?そうなんですか?はい。
これは八百屋お七とその恋人の吉三を描いたものです。
男性である吉三の顔はお七と変わらない女性的な顔をしていますよね。
江戸時代には色白で切れ長の目に面長が美男子の条件とされていました。
いわゆる瓜実顔の中性的な顔が好まれていたんです。
その傾向は読本の主人公や歌舞伎役者にも表われています。
ふ〜んなるほど。
こういった中性的な顔は戦国時代などにも好まれ江戸時代を通し明治期になっても美男子のイメージとして浸透していました。
幕末の会津藩主松平容保も絶世の美男子として有名でした。
こういった特徴の方がもてていたんですね。
それはどうでしょうか。
え?どういう事ですか?江戸時代の町娘たちには腕っぷしがよく威勢のよい火消しなどが人気の職業だったと言われています。
ですから必ずしも美男子というイメージの方が現実生活でもてていたわけではなく江戸期においてはアイドルのような憧れの顔だったのかもしれません。
そうなんですか…。
ちなみに古橋さんはどんな男性がタイプなんでしょう?そういうプライベートな質問にはお答えできません。
すみません。
ありがとうございました。
ここです。
どういう事ですか?つまり…
「毎日電報」が美男子コンテストを開いた明治43年明治政府による富国強兵の推進で国の力が大きくなり欧米に負けないと日本人が自信を持ち始めたころ。
そんな時代が求める男性像。
だが世間の美男子に対するイメージは昔と同じ優男のままであった。
そこで「毎日電報」は理想的な男性像とはどういうものか改めて紙面で説明する。
江戸時代から続く美男子像が徹底的に否定される事になる
新たな男らしい美男子を探さなくては…。
美男子探しは振り出しに戻った
写真館のあるじ小林はとみと桜子を呼び出した
理想的な美男子像について識者の間で議論が繰り返され紙面には具体的な意見が次々と掲載される。
ヒゲのある男性を推奨する者やたくましい体格が重要とする人ついには裸の写真が望ましいと唱える者も現れた
それでどうですかね。
書かれているような男性に心当たりは?そんな人いたかしらね。
いや〜。
ああ…。
そうそう。
桐原さんところの息子さん。
桐原さんは難しいと思います。
無口だし愛想がないし。
ちょっと近寄り難いかしら。
そうですね。
う〜ん…。
あっ!
早速その男性がいるという洋反物屋に向かった
(小林)お〜っ確かにいい男ですね。
う〜ん…。
行ってみましょう。
あの〜すみません。
何でしょう?
確かに理想的な男性だった。
何としても口説き落としたい
あの…実はあの…写真?ええ写真です。
お願いします。
手ごわい
あの…ぶどう酒お好きでしたよね。
あの〜とってもいいぶどう酒がうちにあるんですが…
作戦成功
(小林)桐原さんほんとにお好きなんですね。
うわさどおりのかなりのワイン好きだ。
用意したボトルを次から次へと空けていく。
酔って気分が良くなる頃合いを待つ。
写真の話を切り出すタイミングを見計らっていた。
しかし…
(小林)とみさんちょっと。
(とみ)失礼します。
あんな強いと思わなかったわ。
買ってきましょうか。
ぶどう酒買うお金なんてうちにはありませんよ。
(いびき)
(桜子)寝てしまわれたみたいですね。
その時だった!
更に…
(桜子)これ何でしょう?
(桜子)上げ底?
桐原英治31歳なんとも切ない美男子だった
どうします?先生。
元どおりに戻すべく決死の行動が開始される
(時計の鐘の音)
(いびき)しまった…。
いやちょっと酔っ払ったみたいだな。
ごちそうさま。
あの…。
お願いします。
そしてついに…
熱意が通じた
ほんとですか?いや〜よかった!いやありがとうございます。
では上着を脱いで頂いてどうぞお二階の方に。
あの〜あなたの…裸になって頂いてですね肉体をお撮りしたいんです。
どうぞどうぞ。
お写真を今承諾して頂いたので。
ふざけるな!裸なんかになれるわけないだろ。
いやあなたしかいないんです!
作戦は失敗に終わった。
唯一の頼みの綱が切れてしまう
写真館の応接間には小林の姿があった
あなたですか。
久しぶりですね。
表情は暗い
どうですか?そうですか…。
ええ。
きっと私には縁のない事だったんでしょう。
その時だった
ごめんください。
はい何でしょう。
あ…はい写真ですね。
店に現れた一人の若者。
その正体は…
あの〜どこかでお会いし…。
あれ?あのあなた…
停留所にいたあの眼鏡の青年である
別人じゃないですかね。
いやあまあ…。
完璧ですよ!よく来て下さいました。
どうぞお二階の方に。
よろしくお願いします。
赤堀正太19歳。
肉体をつくり上げたその姿はまるで別人。
まさに時代が求める理想の男子に変貌している
お動きなさいませんよう…。
(シャッターを切る音)
夢中でシャッターを切る小林
う〜ん男らしい!
(シャッターを切る音)
手応えを感じている
どうもありがとう!いえ…。
こちらこそありがとうございます。
今度こそ。
あとは審査結果を待つだけだ
いよいよですね美男子コンテスト審査当日を迎えました。
ここは美男子コンテストの審査会が行われる…ここで審査員の方々によって日本一の美男子が選考されます。
その前にこれまで応募された写真をご紹介しましょう。
全国から寄せられた美男子の写真はさまざまだった。
和服で臨む日本的な男性。
洋服で決めたハイカラさん。
ヒゲが自慢の男。
裸で肉体を誇示する者。
更には小道具で自らを演出する男もいた。
日本初の美男子コンテストその応募数は一千通を超えた
はいついにですね美男子コンテストの審査が始まっております。
審査員の皆さん非常に真剣な表情で写真を選んでおります。
果たして小林さんの写真は当選するんでしょうか。
審査には文士や写真家俳優医学博士など各界の名だたる人物があたる
あっ。
結果は新聞に掲載される。
その到着を今か今かと待つ小林
ああおはようございます。
ごくろうさまでした。
新聞一面に当選した美男子の写真が掲載される
どうですか?
この他当選者はご覧のとおり。
そこに小林の撮った写真はなかった
駄目でしたね。
こうして小林の長い戦いは幕を閉じた
しかたありませんね。
写真家として実力も目もまだまだという事です。
いやあいい勉強になりました。
彼の姿を見送り今回の取材を終える事にした。
だが…
小林さん!お久しぶりです。
小林のもとに一人の男性が現れる
君…。
はい。
赤堀です。
それは変わり果てた姿の赤堀正太であった
あの時は本当にお世話になりました。
ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
一体何があったのか?
そうだったんですか…。
はい。
そして…はい。
あそこは…私は自分が恥ずかしい。
小林さん…
明治維新から始まった富国強兵政策の下国が力をつけ人々も自信を持つ。
相次ぐ戦争での勝利それに呼応するように明治時代は強くてたくましい男性が理想の男性像として掲げられた
では撮ります。
赤堀正太は時代が求める強い男になろうと体を鍛え写真を撮ってもらった。
そして戦争で変わり果てた自分の姿もまた事実として写真に記録したのである
え〜以上コードナンバー436547アウトします。
2014/05/03(土) 23:30〜00:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター「追跡!美男子コンテスト」[字]
シーズン6の第5回。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は興味津々で日本初の美男子コンテストを取材する。明治時代の「イケメン」とは、どんな男なのか?
詳細情報
番組内容
今回の取材対象は日本で初めて男の容姿を競いあう美男子コンテスト。新聞社が紙面で明治の時代にふさわしい理想の男子像を募集し、写真審査のみで当選が決まった。明治43年、写真館を営む小林太一は女性のようにきれいな顔立ちの美しい男子を探す。数日後、小林は良い男を発見、写真館で撮影を行い、自信満々で写真を送付する。しかし、新聞社は筋骨たくましく、男らしい男を求めているという。美男子探しはやり直し…。
出演者
【出演】要潤,杏
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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