猫のしっぽ カエルの手「春を描く」 2014.05.04

いつもよりちょっと後れてやって来た今年の春。
4月も半ばを過ぎて咲いた菜の花。
京都・大原は春らんまん。
目覚めの季節古民家の庭も一斉に咲いた花たちが柔らかな日ざしを楽しんでいる。
厳しい寒さを乗り越えて色鮮やかに花開く。
そして本格的な春の到来を一番待ち望んでいたのはこの人。
ベニシアさんの庭仕事もいよいよ忙しくなる。
スイセンの枯れた花を摘み取る。
(ベニシア)今はスイセンの咲いて終わったこれを残すようにしたらまた来年いっぱい出てくる。
茎を切らないように気を付けて花を摘む。
中が空洞になっているので雨水が入って根が腐るのが心配だ。
スイセンがたくさんあるよね私の庭。
お次は畑仕事。
家から手押し車で50m。
空いているスペースで新しい野菜作りに挑戦する。
今まで何も植えてないんですけどただの草を置いただけで。
でもすごいいい土になったからゴボウ植えたいなと思って。
初めてゴボウ。
イギリスはゴボウあるんだけどお茶にして飲むのね。
ゴボウは自然の所で見つけて引っ張って干すの。
あまり食べない。
でも日本来たら食べるのねゴボウ。
すっごく体にいいから作りたいなと思って。
すごい。
種が結構大きいですね。
ベニシアさんがまくのは40cmほどに育つゴボウの種。
このゴボウ軟らかいので生でも食べられるという。
何か種まくと始まるっていう感じよね。
アスパラガスも…すごい根っこ。
すごいですね。
この根っこで栄養とってアスパラガスが高くなる。
不思議やね。
細いアスパラガスの立派な根っこにベニシアさんもびっくり。
これはかわいい。
ちっちゃい。
庭に畑に大忙しのこの季節。
でもその忙しさがとてもうれしい。
春を味わうタンポポサラダを作る。
大原は緑のものいっぱい出てる。
水菜とかからし菜とか。
でももう一つおいしいものがあるからあまり日本で食べてないのはタンポポ。
初めてタンポポ食べたのはフランスでね。
結構フランスって普通にタンポポサラダを出します。
栄養が多いから普通のサラダより4倍ぐらいの栄養があるから。
まずタンポポをちぎって入れるんですけど。
今ちょうど芽が若いからおいしい時期です。
タンポポは英語でダンデライオン。
この辺はライオンに似てますから。
ギザギザがライオンの牙に似ているからダンデライオン。
大体このサラダにゆで卵とベーコン入れるのね。
それが何か習慣みたいなもの。
何かベーコン入れたら子どもが喜ぶから結構カリカリになるように…。
カリカリに焼いたベーコンは細かく切る。
少し切ります。
…で卵も。
葉っぱのグリーンに卵の黄色が映える春らしい彩り。
これをちょっとだけお好みですけど。
お好みで赤タマネギをスライス。
次はバジリコ。
バジリコはナイフで切ったら駄目。
黒くなるよ。
だから手で。
その方がいい。
色のためにちょっとトマト。
OK。
すぐ出来ました。
そしたら次はドレッシング。
ライトフレンチサラダドレッシングというか軽い感じのドレッシングを作ろうと思ってますね。
これはフランスのシェフから特別…。
彼の秘密のレシピですから。
最初はサラダ油。
全部量は一緒ですから。
今度はオリーブオイル。
普通のオリーブオイル。
サラダオイルピュアオリーブオイルエキストラバージンオイルを同量混ぜる。
…でワインビネガー。
塩は15g。
それはまた自分の好みもあると思うんですけどコショウはまあ自分で…。
仕上げにコショウを少々。
このドレッシング結構夏になるとたくさん作って置いとくのね。
多めに作って使い回しのウイスキーボトルへ。
使う前にシェークして。
はい出来ました。
大原の自然が育んだ青々としたタンポポのサラダ。
ベニシアさんの食卓を明るく彩る。
「タンポポは見ているだけで楽しくなるの」。
ベニシアさん暖かな昼下がりにスケッチを楽しむ。
いつも見ている花でも細かく観察するとまた新鮮。
何かこういう事すると全て忘れて夢中になるからリラックスするね。
下絵が描けたら色を塗る。
ギザギザの形に添って丁寧に筆を動かす。
これすごく気に入ってる筆です。
大原に住んでる人ですけど筆を作ってそれは私の友達の友達です。
すごい…何かね水にこうやって…。
一番先はものすごく微妙に細い。
それは西洋の筆ではなかなか見つからないよね。
すごく描きやすい。
ベニシアさんが描くのは花やハーブがほとんど。
葉や花びらの繊細なタッチを表現できるからこの筆気に入っている。
ベニシアさん散歩がてら新しい筆を探しに向かう。
大原にある友人の工房は最近改装したばかり。
こんにちは。
(中津)ああこんにちは。
いや〜何か全然変わった。
前は作ってる時見えなかったけど。
こっちに来ると全部見てもらえるし。
今日もスケッチしてたけど新しい筆が欲しいなと思って。
どうぞ。
中津さんが一本一本手作りする筆は毛の種類や太さ長さの違いで数十種類に分けられている。
やっぱり日本のものもここのものもちょっと違うのね。
だからこの辺はどことどこが違うのかな?それぞれ同じ長さでも微妙に太さが変わるんです。
だから使う画材…絵の具によっても筆が…使い入れが変わる。
これよりもうちょっと太いのあります?これはやっぱり太いですね。
これでもう大やし大きい方ですこちらが。
太いの欲しいね1つ。
弾力があって。
これを1つ作るのにどのぐらい時間かかる?あのね一本一本作らなきゃならないし1週間単位で100とか150とか。
100ぐらい作れる。
一番最初この仕事やりたいと思ったのは?筆作る人少ないでしょ?おやじがしてたしね。
父親がやってた仕事やし。
おじいちゃんもやってた?そうですおじいちゃんも。
じゃあだから。
大昔からやってる?3代目です。
おじいちゃんから。
中津家は祖父の代から続く筆職人の家系。
名人とうたわれた父巌さんの下で修業した中津さん。
大学で陶芸などを学びその後23歳で筆作りの世界へ。
代々作ってきたのは…日本人形の顔や能面を描くために使われたもの。
細い筆先が特徴。
(めぐみ)お久しぶり。
お久しぶり。
お茶どうぞ。
めぐみさんは販売を担当し夫を支えている。
ちょっと試してみやへん?これねきれいでしょ?
(めぐみ)友禅の下描きとかの人に好まれてるみたいね。
だから絵を描くのにこれもすごい面白い。
これは吟面相。
これは書にも…。
すごく書きやすい。
(中津)筆ってスッと先だけで細い線書けるしちょっと潰して太い線も書ける。
太い筆ほど太い線が書けますね。
だから1本で細いのも太いのも書く人は太めを選ぶしそれぞれ分けて書きたい人は分けて買うし。
だから使い方。
私ほとんど花を描いてるのが多いからコントロールしやすいのね。
京都にも数えるほどしか残っていないという筆職人。
その仕事は筆の命ともいえる毛を準備する事から始まる。
使うのはイタチやタヌキの毛。
(中津)これ櫛入れる事で短い毛のも抜けたり。
悪い毛も落ちるし。
毛をそろえては金櫛や小刀で不ぞろいな毛を取り除く。
40年近く繰り返してきた地道な作業はよい筆を作るのに欠かせない。
そしてこの仕事に汗は禁物と言う。
(中津)手が枯れるっていうんです。
ホンマに手のひらに汗をかかんようになる。
真夏でも35℃ぐらいいってても大丈夫なんです。
毛をそろえてても全然ひっつかないし。
まあ不思議なもんですね人間の体っちゅうのは。
それに順応していくっていうか。
毛の準備に丸2日かけたら何種類もの長さに切り分ける。
ほんの少し長さの違う毛を組み合わせる事で徐々に先が細る美しい筆先が出来る。
使う毛の長さや混ぜる割合は中津家に代々伝わる秘密だ。
お盆の上に毛を並べてその上にまた長さの違う毛を重ねまとめる。
トランプを切るようにこれを7回繰り返す事で均等に毛が混ざるという。
ここまでで良質な毛が出来ればほとんど筆は完成したようなもの。
あとは筆の形に組み立てていく。
駒で毛の太さを測って麻ひもで縛る。
すだれの材料と同じヨシを使って手作りした軸に縛った毛を通せば筆先の完成。
祖父の代から受け継いできた昔と何一つ変わらないやり方で今も筆を作り続ける中津さん。
手作りでなければ出せない書き味。
見た目では分からない。
けれど使ってみれば分かるもの。
筆作りには昔ながらの道具が欠かせない。
中津さんの心配はそんな道具を作る職人がいなくなる事。
毛をそろえるための金櫛もその一つ。
もはや手持ちのものを大切にするしかない。
櫛をはじめいろんなもんが失われつつある。
櫛がこの一本ともう一本さらがあってこの方は…もう廃業されて。
だからもう手に入らないんですよねこの櫛は。
そういった面では先行きはすごく心配ですよね。
これからどういうふうになっていくか。
僕も筆屋さん2軒知ってるけどその2軒の方も後継者ないんです。
だからどんどん減っていく…。
減っていく中でひょっとしたら生き残れたら…ええもんさえ作ってたらやっぱり使う人は絶対減らへんし無くなる事はないやろし。
だから思い切って息子にやらして絶やす事なくつないでいきたい。
この技術。
休日京都市内で働く息子の重吉さんがやって来た。
半年後には実家に戻り筆職人を継ぐ決意をしている。
今はまだ見て覚える段階。
これが手に汗をかくとコロコロと回らない。
(重吉)手にくっつくって事?
(中津)微妙な力加減でやらへんと。
力入れたらボソッと抜けるやろ?ええ毛まで抜けるから。
指先にちょっと当たる感触でスッスッとこの上をなでていってるん。
悪い毛が筆の先が割れたり描く時にこれが邪魔をするん。
線を邪魔したり。
それいつまでやんの?悪い毛が出んようになるまで。
この作業が一番時間かかるんや。
毛組みにする前の段階のな。
(重吉)まあよう見るしな。
大事なんは自分にとってはな一気に100本作ったら100本のうちの1本やんか。
1本ぐらいちょっとおかしくなっても入れたりするけどそれしたら買う人間としてみたら1本なんや。
1本買うたらその1本だけなんや。
難があるけどええやろと思って入れた筆が当たった人はかわいそうやろ。
それはものすごく大事な事やからなこれからやっていくのに。
一人前になるまで最低でも10年。
一本一本の筆を真剣勝負で作る。
その心構えから教える。
京都市の南東…新作の筆を持ってお得意さんを訪ねる中津さん。
(中津)こんにちは。
こんにちはどうも。
ちょっと新しい筆作ったんで柴田さんに試してもらおう思て。
タヌキの毛なんですけど。
(柴田)そうですか。
どうぞこちらに。
お邪魔します。
伝統的な技法を用いたものから斬新な成形や染め付けを行ったものまで幅広い作風の柴田さん。
細かい部分の絵付けに細く腰の利いた中津さんの筆を愛用しているという。
でも土を乾燥させただけのこの壺は絵を描いているうちに土ぼこりがイタチの毛の筆先にたまってしまう。
ここ。
今これダマになってるんです。
そうすると…。
(中津)太ってきてますね先が。
(柴田)ほら。
描いても描けへんでしょ?
(中津)ホンマにのってへん。
その先ピッと取ってしまわないと。
あとで今日持ってきた筆試してもらえんやろか。
(柴田)タヌキの方がええのかな〜。
ほらこれやっぱり引っ掛かるな〜。
(中津)また爪でちょっと取らなアカンね。
ちょっと試してみますか?
(柴田)これがタヌキ?タヌキ。
結構腰は…粘りいうか弾力はあると思うよね。
どやろ…。
あっこっちがええわ。
これや。
(中津)描けますか?描ける。
よかった。
全然違うもん。
一瞬汗かいた。
(柴田)これやわ。
いけそうですか。
(柴田)こっちやわ。
もう描き味が全く違いますわ。
面白いもんやね。
全然違うもん。
(中津)ちょっとの材質でね。
これや。
これがタヌキやね。
タヌキです。
タヌキでないとアカンちゅうこっちゃ。
学生時代は自らも絵画や陶芸を学んでいたと言う中津さん。
使う人の気持ちを理解しよりよいものを作っていきたいという思いで新しい筆の開発にも取り組んでいる。
(中津)しばらくそれで試してもろうたらよう分かるな。
できるかどうかそれで。
職人の技がつながり伝統の技術を生かした新しい作品が生まれていく。
古民家の土間。
掃除用具が詰まった棚がある。
最近これ見つけたんですけど江戸時代の水屋。
今は掃除する道具全部ここに集めて入れてるのね。
これは毎週作らないといけないけど皿洗うせっけん。
今まであちこち置いてあったから「えっどこだったかな?」と思ってたけど今全部1つの場所になって私にとってこれ便利なものと思って。
今からちょっとこれを使って窓掃除しようと思って。
これラベンダーグラスクレンザー。
う〜ん匂いがいい。
何をするにも心地よい季節。
家の掃除もはかどる。
イギリスは春に掃除するからね。
スプリングクリーニングっていうんですけど。
ピカピカのガラス窓に映る庭もまたベニシアさんの作品だ。
2014/05/04(日) 18:00〜18:30
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「春を描く」[字]

春の暖かさに包まれる京都・大原。ベニシアさん、咲き終わったスイセンを手入れ。タンポポサラダとドレッシングを作る。愛用の絵筆を作る友人の工房を訪ね、筆作りを見学。

詳細情報
番組内容
一斉に咲き始めた花々が春の訪れを告げる京都・大原。ベニシアさんは、春の庭仕事。咲き終わったスイセンの手入れ。春の陽気に誘われ、散歩に出かける。タンポポを見つけ、スケッチ。3代続く筆職人の工房を訪ね、筆が作られる様子を見学。家に帰って、タンポポサラダを作る。掃除道具をどこかに置き忘れてしまうというベニシアさん、最近購入したという水屋を掃除道具入れにする。春の日差しのなか、ガラス窓の掃除がはかどる。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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