NHKスペシャル「宝塚トップ伝説〜熱狂の100年〜」 2014.05.04

早朝から多くの女性。
それはちょっと不思議なしかしここでは見慣れた光景だという。
待つ事2時間。
長身の女性が現れると空気が変わった。
せ〜の!せ〜の!みんなからちえちゃんと呼ばれていたこの女性…。
4時間後全くの別人のようになって舞台の上にいた。
これが宝塚歌劇団男役のトップスターだ。
常に男女の愛を演じる主役。
口元には赤い口紅青いアイシャドー。
背中に背負うのは大きな羽根。
現実の世界にはいない男性像。
しかし存在感はある。
人々を熱狂的に魅了し続けてきたのはなぜだろう。
今回初めて同時密着取材が許されたトップ5人。
明かされる事がなかった舞台裏。
そしてトップそれぞれの挑戦。
100年目を迎えたタカラヅカ。
互いに競い合うトップの姿を通して熱狂の秘密に迫る。
春宝塚大劇場に華やいだ空気があふれていた。
年間の公演回数が1,400回を超える日本有数のエンターテインメントタカラヅカ。
現役タカラジェンヌと卒業生が一堂に会した。
舞台の上に勢ぞろいしたタカラヅカの人気の原動力男役トップ。
魅力的なショーマンだった…タカラヅカの顔として広く知られる…男役としてアイドル的人気を集めた…タカラヅカの革命児といわれた…世界的にも珍しい未婚女性だけの歌劇団。
花月雪星宙の5つの組に分かれ公演を行っている。
それぞれの組の頂点に立つトップ5人が今タカラヅカを背負っている。
・「美しく」100周年の幕開け公演を任されたのは星組トップ…10年に1人の逸材といわれチケットは発売と同時に1か月先の千秋楽までほぼ完売だという。
就任5年。
その人気実力はトップの中でも随一。
大黒柱の存在だ。
今回演じる主人公はフランスの英雄ナポレオン。
波乱に満ちた人生その妻との愛を描いたミュージカルだ。
スケールの大きいトップ柚希を想定して作られた作品だった。
ふだんの公演と比べて豪華なセット。
当時を彷彿とさせる豪華な衣装。
これにも通常の倍以上の費用が充てられた。
100周年の命運を懸けた作品だった。
稽古場に柚希はいた。
2時間半の芝居。
覚えなければならない事がとにかく多い。
しかも100周年の重責が重くのしかかる。
トップとしてどう乗り越えていくのか。
(一同)はい。
トップは観客にとって常にときめく存在でなければならない。
柚希の演技には色気があり品と美しさを兼ね備えているとされてきた。
特に愛を表現するキスシーンはファンを虜にしてきた。
今回のキスシーン6歳年上のやがて妻となる女性を相手に8回予定されていた。
はい。
その女性を演じる娘役に演技のイメージを細かく伝えていた。
稽古は宝塚大劇場の舞台に場所を移した。
前半の濃密なキスシーン。
打ち合わせたとおり年上の女性は慣れたそぶりを見せ若いナポレオンをじらす。
たまらず立ち上がって女性に迫るナポレオン。
そして…。
この時柚希自ら一つの提案をした。
柚希の提案は女性からも迫った方がいいというものだった。
年上女性との恋その方が印象づく。
キスは本当にしているかのように見せなければならない。
しかもどの客席からも美しく見えなければならない。
ファンの期待に応えるための演出と計算にギリギリまでこだわっていた。
ファンの中にはお気に入りのトップを入団当時からずっと応援し続けている人が少なくない。
トップを目指す姿そしてトップとして活躍する姿。
一喜一憂しながらまるで家族のように見守り続けるのだという。
はい。
(歓声)トップは何よりファンを大事にしている。
(歓声)今回トップとして更なる挑戦をしようとしていた。
もともとバレリーナを目指していて踊りには自信があった。
それと比べれば歌には少し苦手意識があった。
公演では20曲以上も歌わなければならない。
その歌でも勝負したいと考えていたのだ。
連日の歌の稽古。
・「命を懸けて愛して」教えるのはタカラヅカ退団後海外で本格的にミュージカルを学んだ先輩だ。
せ〜の。
(柚希)・「すべて」これが今ね・「すべ」こうなってるの。
・「すべて」だけやってみて。
微に入り細に入り行われる指導。
10年以上の訓練を重ね本来女性が出す声よりもより深くより太い声を身につけてきた。
おなかからしっかり声を出して歌う発声法が徹底される。
・「夜が明ける」
(楊)それで早く続ければ大丈夫。
せ〜の。
・「夜が明けるまでにはまだ」ボールに座って体を大きく動かしながら歌う。
・「明日を紡ぎ出す」
(楊)それで・「明日を」の時にお尻回す。
喉で声を出すのではなく全身を使って出す。
延べ2か月半109回に及ぶロングラン公演。
最終日まで喉を潰す事なく舞台に立つのはトップとしての絶対条件だ。
・「青春の血を」・「いい」更に特訓は続いた。
これまで使った事がない声色を出すためだった。

(歌声)
(楊)もう一回ね。
公演最後のクライマックス。
主人公ナポレオンが栄光から転落した時その心の変化を表現するため絶対必要だと考えたのだ。
・「何が待つのか」できたできたできたできた!これこれこれ!迎えた初日。
舞台の見せ場ファンが期待するキスシーン。
状況に応じて演じ分けた。
時に強引に。
時に情熱的に。
そして稽古で練習を重ねた濃密なシーン。
濃厚。
それでいて美しさと品を失わないように計算された愛の表現。
それぞれのシーンを見事に演じ分け観客をくぎづけにした。
クライマックス。
挑んできた新たな歌声を披露し満員の観客を魅了した。

(歌声)
(拍手)この春100周年に合わせうら若き乙女たちが初舞台に立ちました。
宝塚音楽学校の卒業生39人です。
礼儀作法から芸事に至るまで全員2年間音楽学校で学ばなければなりません。
(拍手)宝塚歌劇団を支えるその音楽学校。
卒業後歌劇団に所属してからも全員生徒と呼ばれ入団年次成績による厳しい序列が維持されています。
その序列とは別にもう一つ存在するのがトップスターを頂点とするピラミッド型のシステムです。
5つの組に分かれそれぞれ実力や人気歌劇団からの期待の高さに応じて序列がつけられます。
各組70人の頂点にトップが置かれトップは組の顔として常に主役を務めるのです。
3月タカラヅカは100周年を迎えこれまでにない興奮に包まれていた。
白一色。
整然と並ぶ人々。
こちらは楽屋口に並ぶタカラヅカの生徒たち。
(拍手と歓声)そこに現れたやはり全身真っ白ないでたちの女性。
仮装した後輩たちが担ぐおみこしの上…
(拍手と歓声)この日は蘭寿が長年活躍した宝塚大劇場を卒業する日だった。
花組トップ蘭寿とむ。
就任3年。
20年前音楽学校の倍率が過去最高の48倍を超えた年に首席で入学。
卒業まで首席を通した優等生である。
キレのいいダンス。
男らしい正統派の男役を貫く姿勢がファンを魅了してきた。
トップ3年。
何を背負ってきたのだろうか。
稽古場の蘭寿。
そこには孤高の姿があった。
最も出番が多いトップ。
歌や踊りなどが誰よりも多く稽古の間休む暇はない。
常に完璧を目指したい。
歌の練習では自分の声を必ず携帯電話で録音。
すぐにその場で確認する。
振付の指導。
ここでもすぐに台本や譜面に細かくメモする。
(取材者)振りを書くんですか?
(蘭寿)すごい走り書きだからホント恥ずかしいです。
トップは常に組の中心。
稽古場で踊る時常にセンターに立つ。
稽古中下級生がトップのために椅子を運ぶ。
着替えは先輩と後輩が手伝う。
組の生徒の視線の先にはいつも蘭寿がいる。
絶対的な存在。
だからこそ組全体の士気をどう高めていくかは自分に課せられた責任だ。
蘭寿が卒業を決意して2か月後花組全員が招集された。
次のトップ人事がプロデューサーから明らかにされた。
(拍手)次のトップへの継承。
自分の卒業を待つ事なくその準備は進められる。
タカラヅカの不思議の一つ。
それは誰がトップになるか。
トップまでの道のりは決して決まったルールがある訳ではありません。
最もシンプルなのは入団以来同じ組で出世しトップに駆け上がるケース。
これをいわゆる生え抜きと呼びます。
一方タカラヅカにはほかの組への移動組替えという制度があります。
生徒の能力を生かし組の活性化を図るためとされています。
組替えを経て上り詰めるトップもいます。
お願いします。
3度の組替え17年かけてトップに立った人物がいる。
雪組トップ壮一帆。
トップまでの道のりは決して順調とは言えなかった。
長年2番手としてほかのトップを支え努力もしてきた。
しかしトップの夢を諦めた事もあった。
努力が報われ一つの覚悟を持ってトップに就任した。
遅咲きのトップ。
どこで勝負しようとしているのか。
就任して以来壮は次々と日本物と呼ばれる作品で結果を出してきた。
日本の伝統芸能を守っていくためタカラヅカが大切にしてきた分野。
近年上演される機会が減っていた。
日本物を担えるトップ。
今回挑むのは江戸時代の作家近松門左衛門の原作によるミュージカル。
日本舞踊や着物の所作を取り入れなければならないなど独特の難しさがある。
手が高すぎ。
もうちょっと手下。
そう。
(振付師)だからトットッて行かないの。
あの衣装着てるのよ。
分かるね。
はい。
主人公の男性が愛する女性。
演じるのは相手役を務める娘役だ。
息はぴったり。
だがふだんの洋風作品を演じる時とは勝手が違う。
演出家からの厳しい指摘。
しかしこれまでも努力で乗り越えてきた。
そうして迎えた本番。
しなやかな所作。
伝統的な日本物の男役の演技に仕上がっていた。
・「お前のぬくもりが生きる証」・「見つめていよう」・「見つめています」トップまでの経験。
どんな役にも順応できる実力を養った。
16年ぶりに上演されたこの作品。
壮の演技が評判となり連日満席となった。
生え抜きとして月組トップに上り詰めたのが…月組一筋11年という早さで抜てきされた。
トップになって2年。
周りもほぼ全て2000年以降に初舞台を踏んだ生徒たちだ。
組全体が若いエネルギーに満ちていた。
その中で現代のアイドル的な魅力を持つといわれる龍。
どう持ち味を出そうとしているのか。
4月に披露する歌と踊りで構成されるレビュー。
その振付が行われていた。
今回挑戦するのは80年以上前に上演された伝統的なレビュー。
これを現代によみがえらせようというのだ。
振付を担当するのは昔踊りの名手として活躍した男役の先輩。
伝統的な男役が演じたキレのある踊りが求められた。
現代的センスを持ち味とする龍に厳しい指導の声が飛ぶ。
全力で激しく体を動かさなければ伝統的な踊りは踊れない。
若いトップの龍。
経験不足を指摘される事もある。
しかし観客に喜んでもらうため何か新しい事ができないかと常に考えていた。
迎えた本番。
龍の持ち味を生かす現代的な踊り。
個性的な衣装と共にその存在感が前面に押し出された。
続いて練習を重ねた伝統的な踊り。
若々しく華やかに演じた。
客席は沸いた。
100年の歴史の中で総勢4,400人のタカラジェンヌのうちトップとされる存在は100人にも届きません。
その中でごく選ばれた人にしか演じられてこなかった特別な役がありました。
タカラヅカ最大のヒット作「ベルサイユのばら」の主人公…初演でタカラヅカのオスカルを世に出した…「ベルサイユのばら」のブームを支えた…平成に入って劇画の生き写しと称された…選ばれしトップによって伝統は受け継がれタカラヅカのオスカル像が築かれてきました。
歴代のトップが演じてきた名作「ベルサイユのばら」が100周年でも上演される事になった。
宙組トップ凰稀かなめ。
就任2年。
長身とクールなルックス。
繊細な役作りとその演技力が評価されてきた。
自由と平等と友愛のために。
「ベルサイユのばら」はタカラヅカが築き上げてきた演技の型が最も要求される作品だ。
舞台映えする大きい演技。
優雅で上品な踊り。
美しく見せる所作。
どれ一つ欠かす事はできないとされる。
歴代トップの伝統。
そこにどう挑戦するのか。
厳しい目を向ける一人の先輩がいた。
40年前初演でオスカルを演じた…稽古の合間凰稀は伝統の型を知る本人に指導を願い出た。
パパンパララ。
チャチャタララン。
ここ窮屈。
冒頭から初演時の振りを細かく指導され演技の型を徹底的にたたき込まれる。
(手拍子)もう行ってしまったらチャ〜ンってこう行ったらもうさっさと。
足の動きも決められたとおりになっているかチェックされる。
40年前の振付が忠実に再現されていく。

(拍手)もともと器用な人間ではないが自分の直感を大事にし納得するまで粘る。
凰稀は築き上げられてきたオスカルの演技の型をなぞるだけではなく自分の感情を重ねて演じなければならないと考えていた。
この日通し稽古が行われた。
(銃声)アンドレ〜!主人公オスカル。
その愛する男性が銃弾に倒れる場面。
命だけは…!
(銃声)アンドレ〜!離せ!アンドレ!凰稀の目からは大粒の涙がこぼれ出た。
オスカル…。
アンドレ〜!もちろん台本にはない。
自らの感情をありのまま押し出すように演じた結果の涙だった。
おととい幕が開いた「ベルサイユのばら」。
演じ続けられてきた伝統的な踊り。
オスカルの愛する人が銃弾に倒れる場面。
凰稀は稽古同様に演じた。
トップとしてどう心の籠もった演技を続けられるか。
そこにこだわり続けていた。
この春タカラヅカを卒業する花組トップ蘭寿とむ。
人気絶頂の中トップに立って僅か3年での決断だった。
おはようございます。
(一同)おはようございます。
卒業というトップとしての最後の大役。
蘭寿はそれにどう臨むのか。
卒業公演に向けた稽古初日。
トップと共に5人の下級生も卒業する事が初めて発表された。
(拍手)卒業する下級生のために特別な演出が用意されていた。
選ばれたのは入団13年目の男役。
初めて舞台のセンターで蘭寿と2人ダンスを披露する事になった。
下級生にとって最初で最後の大舞台。
安心させるよう丁寧に振付を確認する。
合間にはそっと言葉をかける。
男の子だから…。
卒業の日が近づいていた。
卒業公演が始まった。
客席は連日大入りを記録。
立ち見が出る日も少なくない。
卒業公演は歌劇団にとって大事なビッグイベントである。
ファンにとって長年応援してきたトップの卒業は最後に目に焼き付けておきたい晴れ姿だ。
19年間演じてきた男役としての貫禄。
得意のダンスで舞台狭しと飛び回る。
トップを支えてきた下級生も晴れ舞台を演じきった。
・「涙はみせずに」・「この愛だけを捧げる」花組トップ蘭寿の幕が閉じた。
(観客)まゆさ〜ん!
(拍手)最後の瞬間に浮かんだ言葉はこのひと言でした。
夢のために命を懸けられるこの場所で男役蘭寿とむを磨き上げられた事幸せな時間でした。
こんなにも魅力的でこんなにも苦しくこんなにも幸せな場所はないと思います。
6,000人のファンに見送られるトップ。
トップはその絶頂の時間が限りあるからこそ一層光り輝く。
その輝きを最後までファンと共有する事がトップの使命そして願いなのだ。
せ〜の。
(一同)とむさんサンキュー!サンキュー!
(拍手と歓声)100年目を迎えたタカラヅカ。
その先頭に立つトップは背負ったものと真摯に向き合い乗り越えようとしていた。
熱狂するファンはトップに理想の愛を求めているのではない。
その生き方に熱狂しているのだ。
トップという生き方。
それこそがタカラヅカ100年の原動力だった。
2014/05/04(日) 21:00〜21:50
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「宝塚トップ伝説〜熱狂の100年〜」[字]

100周年を迎えた宝塚歌劇団。熱狂的なファン獲得の原動力となってきたのが独特の男役トップスター制度である。5人のトップスターに密着取材、その知られざる世界へ誘う

詳細情報
番組内容
この4月に100周年を迎えた宝塚歌劇団。世界的に珍しい未婚女性だけの劇団、その中で中心的役割を果たし、熱狂的ファン獲得の原動力となってきたのが男役トップスター制度である。女性が男性を演じる独特のスタイル、その中で一握りの者しかなれない絶対的存在。常に主役を務め、頂点に君臨しながら必ず卒業しなければならない…。花月雪星宙の5組5人のトップスターの半年にわたる密着取材で、この知られざる世界へいざなう。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
劇場/公演 – その他
ニュース/報道 – 報道特番

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