原発避難 慰謝料5万円差 浪江町民上積み和解案
河北新報 5月6日(火)6時10分配信
福島県浪江町の住民1万5546人が慰謝料の増額を東京電力に求めた和解仲介手続き(ADR)で、原子力損害賠償紛争解決センターが提示した和解案をめぐり、福島第1原発事故の避難自治体に波紋が広がっている。和解案は現行の1人月10万円から5万円増額し、月15万円を支払う内容。政府の原子力損害賠償紛争審査会が定める賠償指針と異なる金額で、周辺自治体は一律賠償を求めたい考えだ。
<住民納得しない>
「浪江の5万円上乗せについて町長はどう考えるのか」
4月30日、いわき市であった同県楢葉町の町政懇談会で、町民が質問した。
同町は大半が避難指示解除準備区域に指定されている。松本幸英町長は5月下旬に帰町判断をする方針で、賠償に関しては町民も敏感だ。
松本町長は「双葉郡8町村はそれぞれ置かれている状況は違うが、共通する部分も多い。5万円の上乗せは水平展開されるはず」と答え、浪江町に示された和解案が他の避難自治体にも適用されるべきだとの考えを示した。
同県川内村も7月以降に避難指示解除を控えており、遠藤雄幸村長は村民の帰還意欲に影響を及ぼすことを懸念する。
「いつまでも賠償金を当てにするのは本意ではないが、同じ避難区域で差が出るのは住民も納得がいかないだろう」と主張。賠償指針にも触れ、「もう一度見直し、全ての避難自治体で一律にするべきだ」と注文を付けた。
<しっかり議論を>
慰謝料の格差は、避難自治体が足並みをそろえる上で障害になりかねない。双葉郡8町村でつくる双葉地方町村会の会長を務める渡辺利綱大熊町長は「双葉郡全体として、どのような形で対応していけばいいのか、しっかり議論したい」と話す。
双葉郡を除いた周辺の避難住民の心境も複雑だ。浪江町に隣接する南相馬市小高区の住民約600人は2012年7月、慰謝料を月10万円から35万円に引き上げるよう申し立てたが、増額は認められなかった。参加した行政区長の男性(66)は「隣り合う浪江と小高でどこか違うのか。差があるのはおかしい」と憤る。
<対応はそれぞれ>
浪江町は昨年5月、町が代理人となり、慰謝料を月35万円に増額するよう申し立てた。和解案で示された5万円の増額が適用されるのは12年3月から14年2月まで。75歳以上はさらに月3万円上乗せする。町は今後、住民説明会を開いた上で和解案を受け入れるかどうかを決める。
浪江町の馬場有町長は「避難生活が苦しいのは浪江町民に限ったことではない。対応はそれぞれの自治体の判断に任せたい」と話している。
[賠償指針]福島第1原発事故に伴う住民への賠償額と賠償範囲について政府の原子力損害賠償紛争審査会が策定した。2013年12月に示した第4次追補では、帰還困難区域と福島県双葉町、大熊町の住民に1人当たり700万円の慰謝料を一括払いすることや、それ以外の避難区域の住民には避難指示解除の1年後までを目安に1人月10万円を支払うことなどを明記した。
最終更新:5月6日(火)6時10分
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