明石歩道橋事故:元副署長2審も免訴 大阪高裁、控訴棄却

毎日新聞 2014年04月23日 13時45分(最終更新 04月23日 13時55分)

大阪高裁に入る榊和晄被告=大阪市北区で2014年4月23日午後0時55分、望月亮一撮影
大阪高裁に入る榊和晄被告=大阪市北区で2014年4月23日午後0時55分、望月亮一撮影

 兵庫県明石市の歩道橋で2001年、花火大会の見物客11人が死亡した事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された県警明石署の元副署長、榊和晄(さかき・かずあき)被告(67)の控訴審判決が23日、大阪高裁であった。米山正明裁判長は、公訴時効の成立を認めて裁判を打ち切る免訴(求刑・禁錮3年6月)とした1審・神戸地裁判決を支持、検察官役の指定弁護士の控訴を棄却した。

 この裁判では、(1)元副署長が署内にいながら事故の危険性を認識できたか(2)時効(当時5年)が成立しているか−−が主な争点だった。

 指定弁護士は控訴審で、元副署長が署内のモニターなどを通じて歩道橋の混雑状況を知っていたのに、人の流入規制強化などの指示を怠ったと主張した。

 さらに、有罪が確定した現場責任者の署元地域官(64)と元副署長は共犯関係にあると指摘。10年4月の起訴時点で元地域官の裁判は続いており、「共犯者の裁判中は時効が停止する」とした刑事訴訟法の規定から、時効は成立していないと訴えた。

 弁護側は「署内で事故は予見できなかった。業務上過失致死傷罪の共犯関係はそもそも存在せず、時効も成立している」として、控訴棄却を求めていた。

 1審判決は元副署長の過失責任を否定したうえで、時効の成立を認め、有罪か無罪かを判断せずに裁判を打ち切る免訴とした。

 この事故で神戸地検は当時の署長(病死)と元副署長を繰り返し不起訴(容疑不十分)にした。しかし、09年の改正検察審査会法施行により、市民で構成する検察審査会の議決で強制的に起訴される制度ができた。遺族が検審に申し立てし、元副署長は全国で初めて強制起訴された。【服部陽】

 【ことば】

 ◇明石歩道橋事故

 2001年7月21日、明石市のJR朝霧駅と海岸をつなぐ歩道橋に花火大会の見物客が殺到し、子ども9人を含む11人が死亡、183人が負傷した。当時の明石署地域官や警備会社支社長ら5人が業務上過失致死傷罪で有罪が確定。元副署長は10年4月に強制起訴され、神戸地裁は昨年2月、免訴判決とした。

 ◇免訴

 刑事訴訟法337条の規定で有罪か無罪かを判断せず裁判手続きを打ち切る判決。(1)公訴時効が成立している(2)同じ罪で確定判決を受けていた(3)犯罪後に刑が廃止された(4)大赦があった−−場合が対象だ。

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