在日韓国人の故・崔倍達(チェ・ペダル、本名:チェ・ヨンイ)氏が立ち上げた極真空手が、空手の五輪正式種目採択に向け本格的に動き出した。崔倍達氏はかつて映画化もされた韓国の漫画『風のファイター』(パン・ハクキ氏作)や『大野望』(コ・ウヨン氏作)で韓国でも非常に有名だ。日本では大山倍達という名前で「伝説の武道家」として知られている。
極真空手は世界120カ国で競技人口が1200万人に達するなど、すでに世界的にも広く知られている。ただしこれまでは「スポーツ」というよりも「実戦空手」という側面を打ち出してきたため、五輪への進出には消極的だった。また崔倍達氏が1994年に死去すると、弟子たちがそれぞれ独自の流派を立ち上げ分裂してしまったことも大きな問題だった。ところが2020年に五輪の東京開催が決まると、日本国内に230以上あるといわれる極真系の団体が今月17、18日に全国規模の大会を開催し、五輪種目への採用を目指すことを決めた。
崔倍達氏の極真空手は最近の世界的な格闘技ブームに乗って「異種格闘技戦の元祖」としてあらためて注目を集め、人気が急上昇している。格闘技大会「K1」のスターであるグラウベ・フェイトーザやニコラス・ペタスも極真空手出身だ。
1947年に日本の全国空手道大会で優勝した崔倍達氏は、空手を実戦的な武術に発展させた。これがすなわち極真空手だ。崔倍達氏は全国の有名な空手道場を回り、いわゆる「道場破り」でも有名になった。また素手で47頭の牛と戦い、そのうち4頭を即死させたという伝説もある。
崔倍達氏は米国やブラジルなど世界を回りながら、カンフー、ボクシング、プロレス、ムエタイなどの選手と何度も戦ったが、敗れたことは1回もなかったという。体格の大きい西洋人を一撃で倒す姿に、敗戦で自信を失っていた当時の日本人は熱狂した。崔倍達氏が1964年に極真空手を設立した際、その協会長となったのは後に首相となる佐藤栄作議員だった。崔倍達氏は日本の偉大な英雄10人に選ばれたこともある。
朝日新聞は4月、極真空手がアジア大会の正式種目である空手と協力し、共同で五輪への進出を目指す方向で検討を進めていると報じた。レスリングにフリースタイルとグレコローマン・スタイルがあるように、空手と極真空手が共に五輪種目への採用を目指すというのだ。国際五輪委員会(IOC)はテレビ放映による巨額の収入を意識し、大衆に人気のある競技を五輪の種目として採択する傾向がある。実際に格闘技ブームで人気の高い極真空手が五輪種目となれば、同時に空手が五輪に進出する可能性も高まるだろう。空手はこれまで3回五輪への進出を試みたが、いずれも失敗に終わった。極真空手と空手の双方が五輪の正式種目として採択された場合、テレビの視聴率がふるわないテコンドーが五輪種目から脱落することも考えられる。
新極真会代表の緑健児氏は「東京五輪に日本が創始国である空手が含まれていないことを疑問視する声は海外でも高まっている」「極真空手と空手が力を合わせ、まずは東京五輪で最低でも公開競技となり、存在感を見せつけなければならない」と抱負を語った。