「1日1食、入浴は週2回」生活保護受給者の悲惨な生活実態
生活保護の切り下げが進められている。政府は2013年度予算で、生活保護費の中でも生活費に充てる生活扶助を670億円(前年度比7.4%)削減する。15年度には740億円の削減が予定されている。
不正受給や一般の低所得世帯を上回る年収が引き下げの理由となっているが、実際の受給者の生活実態はこれまで検証されていなかった。そこで、全日本民主医療機関連合会(民医連)が加盟施設を対象に生活保護を受給している患者の聞き取り調査を行い、1482人から回答を得た。その結果、食事は1日2食以下が約3割、入浴は週2回以下が約5割、1年間の被服・履物購入は2回以下という、厳しい生活実態が明らかになった。
この調査では、男女とも単身者が多く、60歳以上が約6割を占める。受給開始年齢は50代、60代がともに約25%、40代も1割いた。
「購入した弁当のおかずを2回に分けて食べている」「夫は高齢なので1日3食べさせているが、妻は1食のみ」「風呂は1カ月追い炊きで使っている」など、食費や水光熱費を相当節約したギリギリの生活をしている様子が伺える。
また、交際費や娯楽費もゆとりがない。地域行事には7割以上、冠婚葬祭には約5割が「全く参加していない」と回答。経済的な理由と生活保護を受給しているという肩身の狭さから、社会的な交流や付き合いが大きく制限されている実態が明らかになった。教養・娯楽費の支出は1カ月0円が3割以上、2000円以下(町内会費を含める)が5割を占めた。これでは、憲法25条が定めている「健康で文化的な最低限度の生活」とは言えないのではないか。
自治体の生活就労支援はどうか。安定収入を得るための相談相手が市の担当者との回答はわずか2.5%。受給者に対するケースワーカーの訪問は毎月が25%で、0回が16%、2年に1回が13%と、支援体制は貧弱な状況だ。こうした体制が確立できていない状況では、受給者が生活保護から抜け出すことは難しい。
受給の理由は約7割が疾病による失業。医療費の自己負担も議論されているが、その場合、受診抑制が起こり、症状が悪化してから受診すれば、結局、医療扶助が増加する可能性があるばかりか、最悪、患者が死に至るケースも増えてくるだろう。
生活保護の人口当たりの利用率はドイツが9.7%、イギリスが9.3%、フランスが5.7%、スウェーデンが4.5%だが、日本はわずか1.6%。財政の視点による生活保護費の引き下げは、セーフティーネットの機能喪失をもたらしかねない。一般の低所得者よりも生活保護受給者の方が良い暮らしをしていると批判されるが、これで良い暮らしといえるのだろうか。低所得者の賃金底上げも必要だが、生活保護費の削減は憲法違反ともいえるのではないか。
2013年5月14日 15:51 | 医療・医療政策・政治・病院・社会