10月に開業50年を迎える東海道新幹線では、老朽化による事故を防ぐため10年間の予定で、トンネルや鋼橋(鉄橋)、コンクリート高架橋などの大規模改修工事が進められている。1975~81年度の若返り工事では半日程度の運休を44回実施したが、JR東海によると、新しい工法や部材の開発で新幹線を止めずに工事できるようになったという。

■JR東海、工期は10年

 今回の大規模改修の工期は2013~23年3月の予定だ。対象は東京―新大阪の全線にある66トンネル(総延長68・6キロ)、233鋼橋(同22・1キロ)、コンクリート高架橋(同148キロ)。JR東海はほぼ連日、各トンネルや橋梁(きょうりょう)の工事現場に1日あたり計1千~2千人を投入。一部の橋梁ではゴールデンウイーク期間中も工事が進められているという。

 4月15日未明、終電後の星越(ほしこし)トンネル(愛知県蒲郡〈がまごおり〉市大塚町、約400メートル)。トンネルの天井部や側壁には、等間隔に直径5センチの穴があけられた。長年の雨水などの影響で内壁と地山のすき間が広がっている箇所へ、セメントを主成分としたモルタルを注入し、補強するためだ。

 モルタルをすき間にくまなく充塡(じゅうてん)できる施工方法はJR東海が新たに開発。わずか1センチのすき間でも埋めることができるという。

 20人の作業員は穴を開ける班と、モルタルを注入する班とに分かれる。高さ約8メートルの天井付近まで組まれた足場での作業。「足場、動きます」「はい、ストップ」。投光器に照らされた作業員の影が内壁にゆらゆらと揺らめく。作業の基本は安全第一。点呼と指さし確認をしながら、工程通り淡々と工事が進む。