広島−DeNA 8回表2死二塁、DeNA・多村から空振り三振を奪い、飛び上がって雄たけびを上げる広島・前田=マツダスタジアムで(出月俊成撮影)
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◇広島5−2DeNA
広島がリーグ20勝一番乗り。2回に松山の3号2ランで逆転。2−2の4回は木村の適時打で勝ち越し。5回にはエルドレッドの2点適時打で加点した。前田は8イニング3安打2失点で3勝目。DeNAの連勝は4で止まった。
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こん身の直球だった。広島・前田は踏み出した左足を軸に1回転し、勢いよく右手でガッツポーズ。8回2死二塁。この日最後の98球目、多村を空振り三振に仕留めた瞬間だった。
「調子は良くなかったが、何とか粘り強く投げられた。勝ち星が付いてホッとしています。投手にとって勝ち星は大きい。2人に付けてもらった」
我慢の3勝目。お立ち台で一緒になった、一時逆転の2ランを打った松山と、勝ち越し打を放った木村に感謝した。
初回、いきなり石川に先頭打者弾を許した。大入り3万1800人の観衆。大リーグ・レッドソックスの関係者も視察に訪れた。熱視線の中での失投。「だいぶこたえました。球場が盛り上がったのに、雰囲気を悪くしてしまった」。それでもエースは切り替えた。
直球は150キロを超えず、宝刀のスライダーで空振り、見逃しを簡単に奪えない。三振も4つにとどまったが、カーブ、チェンジアップを巧みに交えて連打を許さなかった。9回は登板間隔が空いていたミコライオにマウンドを譲り、8イニングを3安打2失点。山内投手コーチは「使える球種が多いから、悪いなりにも投げられる」と評価した。
野村監督は「調子の波は誰にでもある。調子が悪くても要所で抑えるのは、さすがエース」とねぎらった。そして1998年以来16年ぶりの両リーグ20勝一番乗りに「3点差までなら打線が援護してくれる。試合を壊さないよう投手も頑張っている」と手応えを口にした。
調子が悪いなりに抑え、勝利を呼び込んだ。張りを抱えた右肘も癒え、まさに大人の投球を披露した前田。こどもの日を前に「子どもたちにプロ野球に憧れを持ってもらえるようにしたい」と誓った。こいのぼりの季節。チームとともに、エースがさらなる上昇気流に乗る。 (山本鋼平)
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