歌物語『花は桜 君は美し』(いきものがかり)
これは、歌の歌詞を題材にした物語。
『花は桜 君は美し』
花は桜。僕はやっぱり桜の咲く季節が一番好きだ。そして、桜を見るといつも思うんだ。やっぱり君は美しい。春の木漏れ日に重なるのは、いつだって君のほほえみだった。
僕との恋は君にとっては、寒々しい冬のようだったのだろうか。冬が終わって僕との思い出も忘れたころ、君の心には春が舞い込むのだろう。
初春の雨は、桜の蕾に試練を与えるがごとく、強く降っている。窓をたたく強い雨は、まだ続くとラジオから流れる陽気な女性の声が伝えている。雨音に混じりかけた電話のベル。
「もしもし?」
僕が電話に出ると、電話口では相手が息を飲んだ気配がして、それから
「……今から会いたい」
震える声でそう伝えた。泣いているようだ。
忘れたはずの懐かしく心地よい声だった。
君はまたもう一度、あの頃に戻りたいのだろうか?
新しい恋を待っていた僕は、暖かな日差しを待っているあの蕾たちのように迷っているんだ。
花は桜。思い出す君はいつも美しい。春が好きなはずなのに、春の木漏れ日のように笑う君のほほえみが苦く、苦しい。僕との縁を戻すことで、君の心に春が舞い込むのだろうか?
君と別れてからでも、この町の景色は変わらない。でも僕にとって一つだけ足りないものがあるんだ。
「いつもの場所で待ってる」
と告げて、一方的に電話は切れた。
いつもの場所……。君との約束の場所は人通りの少ない駅前。
僕はまたもう一度、君の手を握りたいのだろうか?
春を抱く霞のように、僕の心はふわふわと頼りなく揺らいでいる。……そんな僕自身に嫌気がさすんだ。
春になるとむせ返るような花の香りに溺れる。君は花も、僕も潤してくれた。風がざわめいて、いつもと変わらなかった町が色付き始める。君の言葉に、もう一度訪れようとしちる春に、僕の心は戸惑う。
春はまたもう一度、この花を咲かせたいのだろうか?
雨の中、僕を待っているはずの君の傘が、あの駅に開いているんだろう。
時が経つにつれて、春の息吹はどんどん強く感じられる。まるで僕らの関係が修復されていくみたいだ。
さっきまで傘を強くたたいていた雨の音が、いつの間にかやんだ。ほら、ラジオの言葉なんて嘘っぱちだったのだ。
雨に濡れて艶やかに光る桜。春の木漏れ日に立っている君が優しく僕にほほえみかけている。
あぁ、やっと僕らの冬は終わったんだ。
僕の心には、春が舞い込んだ。
はじめまして、こんにちは。無月 華旅です。今回は『花は桜 君は美し』です。みごとハッピーエンドに導けました! よかった。
楽しんで頂けたなら幸いです。読んでくださって、ありがとうございます。
願わくばまた次の作品で会えますことを。
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