憲法の本:新刊倍増 集団的自衛権の議論で関心

毎日新聞 2014年05月05日 10時30分(最終更新 05月05日 12時49分)

多様な憲法の関連本が並べられた書店の本棚=大阪市北区のジュンク堂書店大阪本店で2014年5月4日、加古信志撮影
多様な憲法の関連本が並べられた書店の本棚=大阪市北区のジュンク堂書店大阪本店で2014年5月4日、加古信志撮影

 安倍晋三首相が主導する集団的自衛権の議論をきっかけに憲法への関心が高まっていることを背景に、国内の出版社が2013年に新刊発行した「日本国憲法」に関する書籍数は前年の70点から倍増したことが、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所(東京都新宿区)の調査でわかった。専門書だけでなく、漫画による解説書も登場し、読者のすそ野を広げている。店頭に憲法コーナーを設ける書店もあり、憲法論議がじわりと盛り上がりをみせている。

 同研究所によると、「憲法関連」と分類した書籍の新刊発行は13年は156点に達した。軟らかい内容の本が多く、発行数も過去5年(08〜12年)の年間70〜90点から急増した。一般向けの代表的な本は、話し言葉で憲法条文を訳した「日本国憲法を口語訳してみたら」(幻冬舎)▽漫画家の赤塚不二夫さんのキャラクター「バカボンのパパ」らが登場する「『日本国憲法』なのだ!」(草土文化)−−など。

 研究所は「安倍首相が12年12月に就任し、憲法改正の発議要件を定めた96条の改正など、改憲を訴えた影響が大きい」と分析。今年も3月末までに既に36点が発行されており、「憲法関連の出版が盛んな傾向は続いている」とみる。

 大手書店のジュンク堂書店三宮店(神戸市)では、5月いっぱいの予定で「憲法」の特設コーナーをつくった。安倍首相が参院選で96条改正を訴えた昨年7月ごろにもブームがあり、売り上げの週間ベスト5に憲法関連本が入ったことがあるほか、憲法の権威・故芦部信喜氏による「憲法第五版」(岩波書店)も例年の倍ほどの売れ行きだったという。

 一方、今回はまだ本格的なブームには至っていないとの見方も。京都市中央図書館や奈良市立中央図書館は「貸し出しの増加といった変化は感じない」。兵庫県西宮市の大手書店も「昨年は確かに売れたが、今年はそこまでの雰囲気ではない。今後の憲法論議の盛り上がり次第ではないか」と予想する。【小山由宇】

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