「記者クラブ」というと、新聞社やテレビ局、通信社などがつくる組織の意味と、それらが無償で利用できるように、中央省庁や都道府県庁、都道府県警などが庁舎内部に設けている部屋の意味がある。
最近、フリーランスやネットメディアが利用権をめぐる裁判を起こしている国会記者会館(写真)など、庁舎ごと記者クラブに提供されている。
税金で建設され、管理されている庁舎を、無償で記者クラブに利用させる根拠は何なのか。1958年に大蔵省(現財務省)が出した「行政財産を使用又は収益させる場合の取扱いの基準について」という通達に、以下の文句があるからだとされる。
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次の施設は、国の事務、事業の遂行のため、国が当該施設を提供するものであるから、この基準における使用収益とはみなさないことができる。
1 日本銀行国庫金取扱規程(昭和22年大蔵省令第93号)第2条の2に規定する日本銀行代理店のための事務室(ただし、代理店業務に必要な範囲に限る。)
2 新聞記者室
3 司法官署における弁護士等の待合室又は地方警察職員の控室
(4以下、略)
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つまり、庁舎内部に「新聞記者室」を設けることは、国の事務、事業の遂行のために必要だから、商売で使用し、収益をあげているとはみなさないので、無償で提供できるというのである。
12月26日、筆者は財務省理財局国有財産調整課に対し、「新聞記者室」に関する4つの質問を文書で行った。同日中に中島康夫課長補佐から口頭で回答があったので、以下に掲載する。
【質問1】
通達「行政財産を使用又は収益させる場合の取扱いの基準について」は、「新聞記者室」という言葉を使用していますが、ここでいう「新聞記者」の定義を教えてください。特に、ここでいう「新聞記者」に、フリーランスやネットメディア記者を含むのか含まないのか、含む場合、含まない場合の理由も教えてください。
【回答1】
国の広報や情報開示の必要性から、「新聞記者室」を設けています。現在、テレビ局の記者も利用していますし、フリーランスやネットメディアの記者も利用しえます。ただし、スペースの問題もありますので、誰が利用できるのか否かを判断するのは所管庁です。
【質問2】
地上4階建てのビルの国会記者会館を「新聞記者室」とみなすのは拡大解釈ではありませんか。
【回答2】
国の広報や情報開示の必要性から、「新聞記者室」の規模が建物となる場合もありえます。
【質問3】
国会記者会館の管理を国会記者会(記者クラブ)に委託するのは違法ではありませんか。建部和仁・大蔵省理財局国有財産総括課長(当時)編の『国有財産法精解』(財団法人大蔵財務協会)には、「国有財産の管理は、本来、国自ら行うべきものであるから、管理委託は極めて例外的な管理方法であって、法律に根拠がある場合にのみ認められる」とあります。
【回答3】
国会記者会が行っている「管理」は、国有財産法でいう「管理」とは違います。国有財産である国会記者会館を好き勝手にしてもいいという「管理」ではなく、「ちゃんとカギを閉めてください」というような一般的、日常的意味の「管理」です。
【質問4】
「新聞記者室」を記者クラブが管理しているとして、「新聞記者室」を誰が利用できるのか否かを判断するのは、官公庁ですか、記者クラブですか。
【回答4】
記者クラブは、一般的、日常的意味の「管理」をしているだけですから、「新聞記者室」を誰が利用できるのか否かを判断するのは所管庁です。国会記者会館に関しても、「建物の使用目的に鑑み、国会記者会加盟社以外についても衆議院が必要と認めるものは、使用できるものとし、この場合においても国会記者会が運営管理に当るものとする」という使用条件があります。
「行政財産を使用又は収益させる場合の取扱いの基準について」という通達が出された1958年当時、フリーランスは現在ほど活動していなかったし、ネットメディアは存在すらしていなかった。
現在、記者クラブは「商売上の既得権」(佐賀年之・国会記者会事務局長=元共同通信社山形支局長)や「管理権」を主張し、税金で設けられた「新聞記者室」からフリーランスやネットメディアを排除している。
しかし、これが極めて時代遅れで身勝手な主張であり、早晩、裁判所で排斥されることは間違いない。
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