■過労死問題に取り組む寺西笑子さん(65)

 夫が18年前、飛び降り自殺しました。チェーン展開する飲食店に勤め、長時間労働と営業ノルマに悩んでいました。労災認定に5年かかり、会社の謝罪は10年後でした。人が人らしく働ける環境をつくりたいと思い、「過労死防止基本法」の制定をめざしています。

 憲法は、つらいことを我慢し続け、体や心が壊れるほどの労働を求めているわけではありません。「人は自分自身、家族、社会のために働く」という意味を持つのではないでしょうか。家族にも苦しみを明かさず、一人で死に追い込まれた夫の心に一瞬でも「団結」という言葉が浮かんでいたら……。28条を読むと悔しくてなりません。

 いまも過労死は後を絶ちません。労働者を使い捨てる「ブラック企業」の問題も深刻化しています。声を上げ、力を合わせれば、憲法が描く社会がきっと実現するはずです。

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 《27条》 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。

 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 児童は、これを酷使してはならない。

 《28条》 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。