■旧警戒区域の自宅に戻った坪井哲蔵さん(65)

 今年4月1日に避難指示が解除された福島県田村市都路地区で、原木シイタケの栽培を40年近く続けていました。傘が大きな贈答用のシイタケは山のアワビと言われ、九州や北海道からも注文がありました。

 ところが東京電力福島第一原発の事故で一帯は立ち入り禁止の警戒区域に。隣の郡山市へ避難しました。今は自宅に戻っていますが、収穫時期を迎えるはずの裏山は雑草で荒れ果てたまま。屋外栽培の原木シイタケの出荷制限の解除の見通しは立っていません。

 政府は避難指示を解除するときに、22条にある居住の自由をとりわけ強調しました。でも人の営みは仕事があって初めて成り立つものです。仕事の再開には、国が「効果が薄い」と手をつけない山林の除染が欠かせない。同じ22条に書かれた職業選択の自由に目をつぶったまま居住権を叫ばれても、むなしいだけです。

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 《22条》 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。