■社会学者・古市憲寿さん(29)

 いま、世界で起きている戦争や紛争の多くは国境や資源、宗教をめぐるものです。一方、日本で戦争が語られるとき、第2次世界大戦がイメージされがち。あのような「総力戦」は70年近く起きていません。

 これが9条についての議論の「ずれ」を生んでいるのではないでしょうか。9条を死守することが平和を守ることと思い込むのも、変えることに大きなメリットが得られると期待することにも違和感があります。

 社会学者として若者をテーマに研究するかたわら、世界の戦争博物館を巡っています。

 議論の「ずれ」のせいで、約70年にわたって日本で戦争がなかった理由と意味は何かが若者に伝わっていない。他国で当然の軍縮論議が、日本では盛り上がらない。9条を変える、変えないの議論を意味あるものにするために、ずれを埋めることが必要です。

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 《9条》 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又(また)は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。