コンテンツ事業 仙台の企業公募不採用 理由知らされず

「震災・防災」のページ

河北新報オンライン コミュニティー

スクラップブック

テーマに沿ったWebページを集めました

  • 記事を印刷

コンテンツ事業 仙台の企業公募不採用 理由知らされず

 東日本大震災の復興予算を投じた「コンテンツ緊急電子化事業」が本来の事業目的と異なっている問題で、電子化作業の受注を目指していた仙台市の企業が公募で採用されず、最終的に自己破産していたことが23日、関係者への取材で分かった。不採用となった理由は不明で、経営者の男性は「被災地支援という事業目的に共感し、採用を見込んで準備を進めたが、思いがかなえられなかった」と嘆く。

◎「雇用提供したかった」
 男性は仙台市で約20年間、情報処理会社を経営。2012年4月、経済産業省と受託団体の日本出版インフラセンター(JPO、東京)が市内で開いた電子化作業の公募説明会に参加し、受注を目指すことを決めた。
 説明会では、受注すればJPOから電子化の対象書籍を提供されることや「受注者は被災地の事業所に限られる」との話があった。男性は同年5月、郡山市に校正作業の拠点となる事業所を設け、公募に手を挙げた。
 郡山を選んだ理由について、男性は「福島第1原発事故の避難者が多く、雇用の場を提供して力になりたかった」と説明する。
 福島県に雇用創出の補助金を申請したり、自己資金で地元住民30人を雇用したりして受け入れ態勢を整えた。だが同年7月、JPO側からメールで不採用になったとの通知を受けた。理由は明らかにされていない。
 男性は自前で電子化できる書籍を探したが、必要な作業量を確保できず経営に行き詰まり、昨年10月に自己破産した。
 男性は「自己破産は自分の経営ミス」と前置きした上で「最初の1年は国の援助を得て仕事をこなし、技能と人脈を築くつもりだった」と説明。「地元企業優先で採用されていれば、電子化事業が東北に定着する可能性もあった」と残念がる。

◎選定基準が不透明 疑問の声相次ぐ
 コンテンツ緊急電子化事業の作業に当たる会社の公募で、工場や事務所が被災した制作会社が応募しても採用されないケースが複数あった。東北の制作会社の関係者から「巨額の公費を投じた事業なのに選定基準が不透明だ」と疑問の声が相次いでいる。
 受注を目指した仙台市のある印刷会社は震災で本社工場が被災。応募の際、日本出版インフラセンター(JPO)側から渡された冊子を電子化して提出した。
 JPO側の審査結果は不採用。担当者は「電子化したデータはどの業者が作ってもほぼ同じ。優劣をつけられるのか疑問だ」と指摘。「採用されなかったことより、選定基準が不明確な点に憤りを覚える」と話す。
 JPOはホームページで選定基準について「東北に本社があるか、東北での作業割合が多いこと」と「過去の電子書籍制作実績、販売実績が多い」の二つを挙げる。
 石巻市の制作会社関係者は「事業は被災地での新規事業創出が目的なのに、実績が選定基準に入っていること自体おかしい」と首をかしげる。
 審査結果について、事業を管轄する経済産業省文化情報関連産業課の担当者は「作業はミリ単位の精度が求められる。東北に本社があっても技術が足りず、落とされた会社が多かったことは残念だ」と説明する。
 一方、電子書籍に詳しい首都圏の出版関係者は「作業にそこまでの正確さは必要なく、校正作業の人員が確保できている点が重要。電子書籍を理解していない人が企画した事業がうまくいくはずがない」と批判する。

[コンテンツ緊急電子化事業]出版社が書籍を電子化する際、費用の半分(東北の出版社は3分の2)を国が補助する事業。総事業費は20億円で、うち10億円は経済産業省が復興予算として計上。東北関連の書籍は全体の3.5%の2287冊にすぎず、成人向け書籍やグラビア写真集など100冊以上が補助対象に含まれていたことが明らかになっている。


2014年04月24日木曜日

Ads by Google

河北新報社震災アーカイブ

東日本大震災の新聞記事や市民の皆様が撮影した写真などを収集しています。  [WEBサイト]

先頭に戻る