コンテンツ事業 JPOの第三者検証委は今も未設置
東日本大震災の復興予算を投じた「コンテンツ緊急電子化事業」が本来の事業目的と異なっている問題で、受託団体の日本出版インフラセンター(JPO、東京)が事業内容を検証する第三者委員会を2013年秋ごろに設けると発表したのに、現在も委員の人選が固まらず、設置のめどが立っていないことが10日、JPOへの取材で分かった。
JPOによると、電子化対象書籍の基準を定めた審査委員会(6人)などから「事業内容と復興支援に関連があるのか」と疑問の声が出たことを踏まえ、13年6月に第三者委の設置方針を発表した。同年秋ごろの初会合を予定していたという。
関係者の話では、同年7月にあった審査委の第3回会合で、JPO側は審査委員に対し、第三者委の検証委員に就くよう打診したという。
出席者によると、会場の机に「第3回審査委員会」「第1回検証委員会」と併記された書類が置かれた。JPOの責任者が「審査委員に検証委員を務めてもらい、きょうを検証委の初会合としたい」と説明した。
複数の審査委員が「われわれは第三者の立場ではなく事業の当事者の一員だ」と反対意見が相次ぎ、会合は終了。その後も検証委員の人選は進まず、現在も検証できる態勢にないという。
審査委員長のフリーライターの永江朗氏は「事業の検証には協力したいが、審査委員は本来、事情を聴かれる立場。検証委員になるのは筋違いだ」と強調する。
JPOの責任者は「人選が難しく、第三者委はまだ開かれていない」と説明。検証作業の一環として、事業に携わった出版社や制作会社に、事業の問題点を尋ねるアンケートを実施したという。
[コンテンツ緊急電子化事業] 出版社が書籍を電子化する際、費用の半分(東北の出版社は3分の2)を国が補助する事業。総事業費は20億円で、うち10億円は経済産業省が復興予算として計上。東北関連の書籍は全体の3.5%の2287冊にすぎず、成人向け書籍やグラビア写真集など100冊以上が補助対象に含まれていたことが明らかになっている。
2014年04月11日金曜日