復興予算で成人本電子化 被災地の情報発信促進事業

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復興予算で成人本電子化 被災地の情報発信促進事業

 東日本大震災の復興関連事業として、出版社が電子書籍として発売する印刷物のデジタルデータ化を国が補助する「コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)」で、成人向け書籍やグラビア写真集など100冊以上が補助対象に含まれていることが30日、分かった。事業費の半分に当たる10億円は復興予算で賄われ、出版関係者から「公金の使い道としてふさわしくない」と批判の声が出ている。

 緊デジは、東北でのデジタルデータ化作業による雇用創出や、被災地からの情報発信の促進を想定した事業。出版社などが出資する社団法人「日本出版インフラセンター」(JPO、東京)が受託し、2012年度に実施された。
 出版社がJPOに電子化したい書籍を申請し、国が原則として費用の半額を補助する。460社が申請し、印刷、IT関連など30社がデジタル化作業に当たった。
 JPOは対象となった6万4833冊のタイトルの一覧表をホームページ(HP)で公開している。この中には「極上の快感エロス&H」「強精捜査!」「軽井沢絶頂夫人」など過激な性表現の入った本や、女優らの写真集とみられる書名が計100冊以上ある。HPには著者名と出版社名は掲載されていない。
 JPOは対象とする書籍について「図書寄贈にふさわしい書籍」などと定めている。申請受け付け直前の12年4〜5月に開いた2回の審査会では、委員から「公費の補助があることを忘れてはいけない」「東北関連や復興に役立つ本を優先して」などの意見が出ていたという。
 JPOの責任者は「題名だけで本の価値は評価できず、どの本を電子化するかは出版社の判断に任せた」と説明する。
 事業を管轄する経済産業省文化情報関連産業課の担当者は「成人向けの本が電子化されているかどうかは把握していない。公序良俗に反するものは対象にしていないはずだ」と話す。
 電子書籍に詳しい首都圏の出版関係者は「経産省と出版業界が電子化事業に復興予算を利用しただけ。事業目的と懸け離れた結果になるのは当然だ」と批判。仙台市で出版社を経営する男性は「成人向け書籍自体に罪はないが、そんな本の電子化に復興予算を使う必要は全くない。被災地をばかにしている」と憤っている。

◎「当初の目的と異なる」/基準定めた委員ら怒り

 復興予算を使った国の書籍電子化事業の対象に成人向けの本などが入っていた。事後報告を受けたという関係者は、落胆と憤りの声を上げた。
 「被災地支援という当初の目的と大きく異なっている。大変ショックだ」と語るのは、日本出版インフラセンター(JPO)の依頼で審査会の委員長を務めた元早稲田大教授でフリーライターの永江朗氏。「東北に関する内容や災害、復興関連の本を電子化し、アーカイブのような役割を果たすことをイメージしていた」と言う。
 審査委員は6人で、対象となる書籍のおおまかな基準を定めるのが役割だった。書籍の選定が適切か否かを審査する権限はないという。
 永江氏は「結果論かもしれないが、緊デジに10億円の税金を投じるなら被災地で現金を配った方が被災者のためになったように感じる。大変残念だ」と漏らす。
 審査委員の一人でフリーの編集者の仲俣暁生氏は「6万冊という目標数を達成するため、本をかき集めたとしか思えない」と批判。「審査委は事業対象をチェックしているというアリバイづくりに利用されたにすぎない」と憤る。
 JPOのHPには書籍のタイトルだけが掲載され、著者名と出版社名は公開されていない。中俣氏は「税金を投入しながら書籍を紹介する際に必要な情報が抜け落ちている欠陥リストだ」と嘆いている。

[コンテンツ緊急電子化事業]出版社が書籍を電子化する際、費用の半分(東北の出版社は3分の2)を国が補助する事業。総事業費は20億円で、うち10億円は経済産業省が2011年度第3次補正予算に計上した補助金。日本出版インフラセンターによると、電子化した6万4833冊のうち半分近い2万9861冊は漫画。東北関連としている書籍は全体の3.5%の2287冊だった。


2014年03月31日月曜日

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